「シンギュラリティ」の正しい意味を、分かり易く説明しょうと思います。
「シンギュラリティ」の概念を提唱したレイ・カーツワイルの著書『シンギュラリティは近い』や、彼のTEDでの数回の講演を参考にしています。
※レイ・カーツワイル
アメリカの著名な発明家、AI研究者。Googleの開発責任者。
◆世間で言われているシンギュラリティ
多くの人はシンギュラリティという意味を、「AI(人工知能)の知性が人間の知性を超えること」であると考えていると思われます。
そして、その時期は、専門家の予想の平均では、だいたい2045年です。
しかし、これは、あくまでシンギュラリティの結果の1つと考えるべきと思います。
他の、シンギュラリティの結果としては、例えば、地球人類の銀河系外進出があります。こちらは、時期は全く不明であるばかりか、「絶対に不可能」と言う専門家が圧倒的なはずです。
ところが、シンギュラリティの概念を提唱した張本人であるレイ・カーツワイルは、これも可能であると述べます。そもそも、大昔の人にとっては、飛行機すら可能と思えなかったはずです。
シンギュラリティにおいては、空想でしかなかったことが現実になります。
では、シンギュラリティとは、本当は何なのでしょう?
◆カーツワイルの当面の計画
現在(2021年5月)、73歳のカーツワイルは、いずれ、人類は機械の身体を持ち、死はなくなると言います。
そして、それは、遠い未来の話ではなく、カーツワイル自身も、そうなると言っています。
しかし、テクノロジーに詳しい人も含め、大半の人が、そのようなことは、仮に出来るとしても、まだまだ相当先のことと思っているでしょう。
なるほど、確かに、現在のヒューマノイド(人間型ロボット)の技術は驚くべき進歩を遂げていますが、人間とはまだ大きな差があるからです。
しかし、そんな考え方をするのは、シンギュラリティの意味を分かっていないからだと思われます。
逆に言えば、シンギュラリティが分かれば、それは可能であると考えられるのです。
◆指数関数的な進歩
時間と共に、量が極端に増加することを、我々はよく「指数関数的」という数学の言葉で表現します。
これは、指数関数の、
y=a^x(aのx乗)
において、aが1より大きく、xが正の整数(0,1,2,3,...)の場合を言います。
ここで、a=2とすれば、yは、
1,2,4,8,16,32,64,128,256,512,1024,2048,...
と、なり、x=20(2の20乗)になれば、1,048,576というとても大きな数字になります。
これをX-Yグラフにすれば、xの値が大きくなる(X軸を右に移動する)ほど、yの値の増加度合いはぐんぐん大きくなり、やがて、yの値が大き過ぎてグラフはほとんど縦の垂直になります。
そして、テクノロジーの進化は、指数関数的であることを、レイ・カーツワイルは詳細な検証により、提示しています。
つまり、xを時間、yをテクノロジーの達成度合とすれば、時間が経てば経つほど、テクノロジーは急激に進歩するのです。
簡単に言えば、これまで100年かかっていたような進歩が、いずれ、1日とか一瞬で達成されるということです。
◆乗客輸送手段のテクノロジーの進歩
テクノロジーの進歩が指数関数的であることは、コンピューター関係の進歩で説明する人が多いですが、ここは渋く、乗客輸送手段で見てみましょう。
人類が馬に乗ることを始めたのは紀元前4500年頃と推測されており、そこから2000年近くかかって、馬車という原始的テクノロジーが、紀元前2800年頃の古代メソポタミアで使われていたと言われています。
ジェームズ・ワットが実用的な蒸気機関を発明したのは1776年で、1802年にリチャード・トレビシックが蒸気機関車を開発しました。
つまり、馬車から蒸気機関車まで5000年近くかかっています。
しかし、その後、僅か80年で、1879年には、ベルリン工業博覧会で電機会社シーメンスが電車の試験運行を実施するという歴史的な出来事が起こりました。
そして、その後の電車の進歩はどんどん加速します。
1964年には、世界初の高速鉄道である東海道新幹線は最高時速が210km、その50年後の現在、時速300km超が可能であり、今後は、数年から10年で、時速500km超のリニアモーターカー、時速1200kmのハイパーループや、それに匹敵する(あるいはそれ以上)ものが登場する可能性があります。
もちろん、陸上だけでなく、乗客輸送手段は、飛行機やジェット機が一般化し、イーロン・マスクのスペースX社では、ロケットによる一般輸送や、2030年代の一般の火星移住をも目標にしています。
これらから見て、乗客輸送のテクノロジーは、一定速度で進歩するのではなく、時と共に、指数関数的に進歩していることが分かるのではないかと思います。
◆そしてシンギュラリティ
テクノロジーの進歩が指数関数的とすれば、例えば、ある時期まで3000年かかったようなことが、次の100年で達成され、次は10年、その次は1年とどんどん速くなり、やがて1日を切ることも考えられます。
レイ・カーツワイルは、21世紀までの人類の2万年の進歩は、21世紀の100年で軽く上回ると言います。
そして、いずれ起こる、テクノロジーの進歩が無限大の速さになることを、シンギュラリティ(技術的特異点)と言います。
ところで、一般には、AIが人間の知性を追い越す2045年がシンギュラリティであると言います。
これを、シンギュラリティの広い意味で捉え直すと、次のようになります。
AIが人間の知性を追い越せば、そのAIが自分より優れたAIを作り、さらに、そのAIがまた自分より優れたAIを作る・・・そんなループが始まり、その進化速度は全く想像が出来ないほど速くはるはずです。
例えば、初めて人間の知性を超えたAIが人間の10倍賢いAIを作るのに1年かかったとして、その人間より10倍賢いAIは、人間より100倍賢いAIを数日で作るかもしれません。
さらに、いつか、人間の1万倍賢いAIは、人間の1憶倍賢いAIを1秒以下で作るといった具合です。
そうなると、進歩の速さは無限大とも考えられ、人類に不可能はなくなり、人類は銀河系を飛び出し、宇宙全体を征服するとカーツワイルは予想します。
ただし、いかにAIが賢くなっても、AIが主になるのではなく、AIはあくまで人間の能力を拡張するものであり、何を目的に銀河系外に行くかは人間が決めないと、それは起こりません。
AIが自発的に「銀河系外に進出をしよう」とは言わないのです。
ただ、人間に対しAIが「銀河系の外に行けば、こんなメリットがある」と提案することがあるだけです。
決意、決心は人間の特権なのです。
ところで、テクノロジーの進歩は、あくまで理屈の上でのことという面もあり、別の理由により、テクノロジーの進化が止まることが予想され、おかしな話かもしれませんが、宇宙人が侵略してこない理由もちゃんと説明出来ます。それは次回の話題とします。
以上です。
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