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2020年4月5日日曜日

『楽しいAI体験から始める機械学習』トピック(3)

私は、『楽しいAI体験から始める機械学習』で、AIや機械学習に関する、高度な技術や理論を提示する意図はありませんでした。
教科書を教えるように書くことではなく、Excelが使える(あるいはこれから使えるようになる)普通の人が、どうすれば、自分でAIを作れるようになるかを考えました。

AIは、思考するのではなく、推測する道具と言って良いのではないかと思います(よって、AI自身が地球を征服しようとはしません)。
だから、それぞれの人が、身近な問題をAIに解かせるには、その問題をいかに推測問題に捉え直せば良いかが自然に身に付くよう、普通に考えられる、そして、面白いテーマを考えました。

機械学習の実習の定番に、手書きの数字(0~9)をAIに読ませるというものがあります。
つまり、フリーハンドで書いた数字が、0から9のどの数字であるかをAIに推測させるというものです。
これは、沢山のサンプルを学習することで、AIは正解率を高めていきます。
ただ、そんな問題、面白いでしょうか?
それをやって、すぐに何かに応用出来るでしょうか?
確かに、理論を勉強するには適した題材だと思います。
しかし、私は、理論よりも、自分でAIに推測させることを楽しむことで、自分の問題をAIに推測させるコツを掴んで欲しいと思います。
そのために、厳密には正しくないやり方もあったかもしれませんが、試行錯誤してAIの使い方が身に付くよう、ちょっと乱暴なこともやらせています。
ロジスティック回帰、サポートベクタマシンといった難しい言葉は一切使いません。

とはいえ、この本で使ったソニーNNCによって、有名なデータサイエンス企業Kaggleが提供する、タイタニック号の乗客名簿から生存者を予測するコンテストにも参加し、ある技術系有名雑誌の専門家が複数で競って出したよりも高い成績を出し、Kaggle参加者の中でも、割合に上位にランキングされました(しかも1発で)。
これも、この書籍に収めようとして、一度書いたのですが、Kaggleにデータの掲載許可を求めたところ、一応、契約を結んで欲しいという返事があり、時間がかかりそうなこともあり、また、これに関しては、既に、上に述べた雑誌や書籍、あるいは、数多くのブログで取り上げられていましたので、本には載せないことにしました。
(書籍出版後、このブログに掲載することも検討します)

『楽しいAI体験から始める機械学習』

出版社:技術評論社
著 者:Kay、Mr.Φ
出版日:2020年5月11日

AIは誰でも作れる時代。
まず、あなたから。

第3回終了

2020年4月1日水曜日

『楽しいAI体験から始める機械学習』トピック(2)

モンティホール問題をご存じでしょうか?
1990年頃と思いますが、アメリカの、モンティホール氏が司会を務めたテレビ番組で行われたゲームから起こった問題です。
そのゲームは、こんなものです。

3つのドアがあり、そのどれかに豪華景品が隠れています。
例えば、Bに豪華景品があるとします。

A(ハズレ)
B★アタリ★
C(ハズレ)

プレーヤーはAを選んだとします。
すると、モンティホール氏は、Cを開けます。Cはハズレです。

A(ハズレ):プレーヤーの選択
B★アタリ★
C(ハズレ):モンティホール氏が開放

ここで、モンティホール氏は、プレーヤーに最後の選択を迫ります。
「AのままでもOK。でも、Bに変えてもいいですよ」

アタリは、AかBですので、五分五分です。
プレーヤーは悩みます。
プレーヤーはどうする・・・って、どうしようもありません。ヤマカンで選択するしかありません。

ところが、驚異的に頭が良い女性(IQ228という説がある)がいて、「Bに変えるのが正しい」、つまり、いかなる時も最後で選択を変えるべきと断言しました。
それで、豪華景品を得る可能性は2倍になります。

「そんなアホな!」と思ったあなたはアホではありません(彼女ほどの天才ではないかもしれませんが)。
だって、この天才女性が、その発表をした後、10000人もの人が彼女を「アホだ」と批判し、その中には、プロの数学者、博士も沢山いたのです。
彼女が正しいことが解るのに、かなりの時間がかかりました(今でも解ってない人が大半ですが)。
でも、彼女は正しかったのです。

さて、私の本で、このモンティホール問題を扱いました。
ただし、難しい数学でどうこうするのではなく、AIに解かせてみた訳です。
AIは、足し算を学習した時と全く同じようにモンティホール問題を学習し、足し算の原理を自分で理解したように、モンティホール問題の原理を自分で理解したのです。
それも、割とあっけなく。
AIにとっては、足し算もモンティホール問題も同じであるかのように。
そして、AIは、「選択を変えなさい」と、ちゃんと教えてくれました。

それを、あなたも、無料WindowsアプリであるソニーNNC(高性能な機械学習用アプリ)で出来るよう、丁寧に解説しました。
共著者のMr.φさんは数学講師らしく、数学で解説するというオマケ付ですが、そちらは納得出来るかどうかは分かりません。
そして、このモンティホール問題をシミュレートするExcel  VBAプログラムを組み込んだExcelファイルを、出版社サイトからダウンロード出来るようにしました。
このプログラムで、AI(ここではNNC)に与えるデータを柔軟に作ることが出来ます。

2回目終了。

2020年3月30日月曜日

『楽しいAI体験から始める機械学習』トピック(1)

来月(2020年4月)、私と数学講師Mr.φさんとの共著のAI(機械学習・ディープラーニング)書籍、

『楽しいAI体験から始める機械学習』

が、技術評論社から出版される予定です。
この本のトピックを、少しずつ語っていこうと思います。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

今のAIは凄いと言われます。
その通りです。

スマートフォンをお持ちなら、Googleアシスタントという素晴らしいAIを誰でも無料で使えます。
「17条憲法って何?」
「2048年9月2日は何曜日?」
「4068かける992は?」
「モーリタニアの首都は?」
などと声で質問したら、即座に答を言ってくれます。

ところが・・・
「11って、素数?」
「5は奇数?」
って聞くと、アシスタントは答えをはぐらかします。
なぜ、こんな簡単なことを・・・と思うかもしれません。
私の本では、そんな例をもとに、AIの得意不得意も説明しようと思います。

私の本では、誰でも自分で、無料でAIが作れるようになることを目指しています(実際に作るにはExcel程度は必要になります)。
機械学習ソフトは、ソニーの無料のWindowsアプリNNC(Neural Network Console)を使います。私なら1憶円と言われても驚かない凄いソフトだと思います。

最初は、拍子抜けするほど易しいことをAIにやらせるのですが、易しいと言っても、苦労して子供に教えるような内容です。
それを確かに、AIは自分で学ぶのです。
例えば、算数の足し算です。
ところが、足し算の仕方を直接AIに教えなくても、問題と答を与えていけば、AIは自力で学び、足し算が出来るようになります。
そして、天才や博士でも分からない問題のデータ(問題とその答)を与えたら、AIは算数と同じように、それを学び、答を出せるようになるところもお見せします。
足し算も、難問も、同じように学ばせることが出来る訳です。
つまり、AIに足し算を学ばせる方法が分かれば、少しの応用で、あなたは、あなたが抱える難しい問題もAIに学ばせ、答を出させることが出来るかもしれないのです。

1回目終了。

2020年3月25日水曜日

AIを自分の手で作ろう

少し前から、極めて高度なレベルの討議において、
「そう遠くなく、AIは人類の知性をはるかに超え、そんなAIがもし人類を不都合な存在として排除しようとしたら、能力の差から、人類に対抗手段がない」
と警告が発せられることがありますが、そんな警告を表明する者の中には、オックスフォード大学の、あらゆる学問に通じた天才哲学者ニック・ボストロム、時代を超えた事業家イーロン・マスク、マイクロソフト創業者で世界一の大富豪ビル・ゲイツ、さらには、神に最も近い知性を持つとまで言われた物理学者スティーブン・ホーキングら、人類トップクラスの頭脳の持ち主達も含まれます。
一方、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグや、元MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏など、「そんなことはあり得ない」と断言する人達もいます。

◆AI自体が脅威なのか?
ただ、最近はTEDでのスピーチを聞いても、この問題に対し、当を得た見解を述べる人が多くなったと感じます。
これらの人々の趣意は、一致する方向にあるように思います。
それらのスピーチの主旨を簡単に言うと、こんな感じと思います。

現在のAIは確かに驚異的なテクノロジーですが、本当の問題は、例えば原子力のように、権力者達が、それを使って間違いを犯すことです。
既に、AIを使って、権力を独占したり、人々を監視し、自由を奪うようなことが行われつつあるように思われます。AIには、それを可能にする力があります。

そこで、ブロックチェーンのように、強大なテクノロジーは、特定の権力者ではなく、全ての人が管理するようにしなくてはならないのだと思います。

◆AIは本当に人間を超えるか
現在のコンピューターを構成しているシリコンチップは原子の大きさに近付き、原子より小さくは出来ませんので、やがて性能の限界が訪れます。
しかし、これに関しては、シンギュラリティの提唱者であるレイ・カーツワイルは、「昔、真空管がトランジスタに変わったように、現在のLSIに代わる新しいテクノロジが出来るはず」と述べ、その「新しいもの」の候補の1つが、三次元分子コンピューターだと言います。
しかしこれはまだまだ、研究段階のテクノロジーです。
量子コンピューターは、今は適用範囲はそれほど広くありませんし、安価になったとはいえ億円単位で、大がかりな設備も必要です。
とはいえ、いつかは、現在のコンピューターとは根本的に構造が異なる、比較にならないほど高性能のコンピューターが登場することは間違いありません。
しかし、それでAIが人間を超えると考えるのは早計と思います。

◆優秀な人がなぜ間違う
なぜ、ビル・ゲイツやイーロン・マスクのような極めて優秀な人達が、AI自体が人類の脅威になるなどと考えるのでしょう?
AIが人間の知性を超えると言う人達は、自分の手でAIを作ったことがないのだと思います。
確かに、人間の脳の推測性能を超えるコンピューターは今でも作れるかもしれませんが、AIを自分で作ってみれば、AI自体が人類を征服しようなどとは決して思わないシロモノであることが分かります。
実際、AIの能力は、ある面では恐るべきものです。
しかし、AIは小学生でも出来る素数の判定すら出来ないのです。
つまり、AIは非常に優秀な面がある反面、子供にも(ひょっとしたらチンパンジーにも)及ばない部分も少なくないのです。
本当に危険なのは、上でも述べた通り、AIを自分の利益のために使おうとする権力者なのです。

◆AIは誰でも作れる
今や、AIを自分で作ることは難しいことではありません。
しかし、イーロン・マスクのような、極端に時間単価の高い人がやるには向いてないことでもあります。
その理由は、まず、AIを作るには、試行錯誤が必要で時間がかかることがあります。
ビル・ゲイツやイーロン・マスクらが、そんな作業をする場面は想像が出来ません。
しかし、AIを本当に理解し、権力者によるAIの悪用を阻止するためにも、多くの人々に自分でAIを作っていただきたいのですが、ほとんどのAIの本は難しく、普通の人には歯が立ちません。
そこで、筆者が、誰でもAIを作る方法を教える本を書きましたので、それを活用願えればと思います(※)。

◆自分でやってみることの大切さ
DIY(Do It Yourself)という世界的に有名なスローガンがあります。
「何でも自分でやろう」という意味です。
第二次世界大戦でナチス・ドイツに破壊された街を、ロンドン市民が自分達の手で復興させようとした時に、このポリシーを掲げました。
これが大きなムーブメントを起こして、やがて全ヨーロッパに、そして、アメリカに、さらに世界中に広がりました。
そして現在、専門家に金を払ってやらせていたこと(製作や修理等)を、「自分でやる」心構えを持つことの価値が見直されています。
それは、単にコスト削減のためだけでなく、新しい創造性を発揮することにつながったり、プロにとっても、これまで見落としてきた重要なものを発見する機会になります。
そもそも、ビル・ゲイツがパソコンを世界的に普及させた時のポリシーがまさに、「大学や大企業の専門家だけが使えるコンピューターを誰もが使えるようにしよう」だったはずです。
イーロン・マスクも、ビル・ゲイツも、若い頃は自分で熱心にプログラミングをしましたが、巨大な事業を営む彼らには、そんな時間がなくなってしまい、少し大切なことを忘れてしまったのではないかと思います。

以上です。

※『楽しいAI体験から始める機械学習』(技術評論社)2020年4月出版予定

2020年3月5日木曜日

新しい時代の業務システムとは

今の時代、コンピューター業務システムを持たない会社は少ないと思います。
しかし、社会とテクノロジーが急速に進歩し変化する時代には、新しいタイプの業務システムが必要です。

◆事業を発展させるシステムとは
コンピューターシステムは今や、単に業務効率を上げたり人員削減を目指すためのものではなく、事業の発展を推進する役割を担うべきものです。
しかし、実際には、システムが事業の発展の足枷になっていることがよくあります。
事業の発展に貢献するシステムは、事業の成長や変化に対応して柔軟・迅速に変化する必要があります。
多くの会社では、システムを一旦完成させれば、それで安心しているようですが、そのままでいては、事業を硬直化させ、将来の発展を阻害し始めます。
本当は、システムは作ってからが重要なのです。
システムが変化していないなら、ライバルも社会のニーズもどんどん先に進む時代の中、その会社は化石化します。
システムと一体化しながら進歩する事業でなければ、今後は、特に海外との競争に勝てそうにありません。

◆変化に強いシステムとは
ところが、「システムは無闇に変えてはいけない」と考えている人が沢山あります。
そう考えるようになった原因は、古いタイプのシステムは、改善・拡張が難しいと共に、無理にそれを行うと、システム全体に渡って予期せぬトラブルが起こるからです。
しかし、今は、完成後、変化し続けることを前提にシステムを開発しなければならず、そんなシステムが作られるよう、初めから計画しておく必要があります。
そして、もう1つの大きな問題は、企業で権限を持つ人が、システムを変えようとする気はあっても、その方針が不合理なことです。これは、権限を持つ者が新しいITに無知なことから起こります。

◆変化に対応するツールを
システム開発に当たっては、修正や拡張が容易に出来る開発ツールを採用することが重要です。
現在は、JavaやPHPといった普通のプログラミング言語でも、開発や改造の効率が上がるような工夫が取り入れられていますが、まだ十分とは言えないと思います。
もっともっと、簡単に修正や拡張を行えるツールが望まれます。
ただし、そのツールが、将来、長く存続することが必要です。
つまり、そのツールを開発・販売する企業が今後も発展し続け、そして、そのツールが将来に渡って人気があり、開発・販売会社によるバージョンアップとサポートが続けられるという確証が得られないなら、採用すべきではありません。
プログラマー向けのオープンソースの優れた開発ツールは存在しますが、もっと簡単に業務システムを開発出来るオープンソースが登場すれば良いと思います。

◆社内開発を
開発を委託した開発会社の担当者が退職した、あるいは、会社そのものが存続していないなど、もはや珍しくはありません。
かといって、長く安定して存続することが期待出来る大手開発会社の開発費用は高いですし、大手だから安心という訳でもありません。
また、大手は、開発に失敗はしないとしても、保守的な手法を使いたがり、結果、60点のシステムに落ち着き、しかも、それは変化に弱い場合が多いものです。
また、開発会社の担当者が、ユーザーの業務の中身を理解するにも限度があり、まして、未来の計画を共有するのは現実的に無理があります。
アメリカでは、日本と比べ、コンピューターシステムを社内で開発する比率がかなり高いのは、理想的なシステムを開発するためには、社内製作が有利であるからだと思います。

◆ドワンゴの凋落
ドワンゴは、動画投稿システム「ニコニコ動画」で一世を風靡しましたが、ある時期から急激に衰退しました。
その理由は、ニコニコ動画のシステムが、根本的には初期の頃から変化せず、時代に取り残されたからです。
なぜ、あれほどの企業が、主事業のニコニコ動画のシステムを発展させなかったかはここでは置いておきますが、いずれにせよ、社会の変化についていけなかったコンテンツの末路を如実に現わしています。

◆IT教育
日本のIT教育はとても遅れていて、いまだ、プログラミングを子供にどう教えようかと議論しています。
しかし、他の多くの国では、上記に挙げたことを含め、テクノロジーと社会の関りを理解出来る教員を養成するための予算が取られています。
日本は、政治家や官僚のITリテラシーが低いと思われ、このままでは、日本の将来は危ういかもしれません。

以上です。

2020年1月24日金曜日

バーチャル店員の流行

AIが、知らない間に私達の社会の隅々に入り込んでいたように、世界そのものをデジタル化する技術が社会の有り様を変えていきつつあります。
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、それに、MR(複合現実)と呼ばれるものがそれです。
これらにより、いつか、映画『マトリックス』のように、この世界は、実は既に、コンピューターが作った仮想世界にすり替わっている・・・といったことが起こるかもしれません(既にそうなっているという説もありますが)。
そこで、実際に仮想世界を作り、活用している事例として、現在、注目を集めている「バーチャル店員」を取り上げてみようと思います。
しかし、お話は、もっと簡単な「バーチャル受付」からにします。

◆バーチャル受付
企業や役所、空港等には受付があり、相談担当者が客に対応しています。
しかし、多くの場合、テレビ電話を使えば、人間が受付にいなくても、人々の相談に対応出来ます。
テレビ電話の画面に映る相談担当者の姿は、アニメの動物か何かだと楽しいかもしれません。しかし、ただのアニメでは、単調な反応しか出来ません。
そこで、相談担当者をアバター化することが考えられます。
アバターとは、人間の分身のキャラクターで、元の人間とは姿形は違っていても、テクノロジーの力で、アバターを元の人間と同じように動かすことが出来ます。
バーチャル受付では、アバターは、相談担当者の分身です。
相談担当者は、客が見ている画面内では、ひょうきんなライオンのアバターに変換され、相談担当者が顔を動かすと、同じようにライオンが顔を動かすようなことが出来ますし、ウインクや笑顔も、アバターで再現することが可能です。
姿だけでなく声も、リアルタイムで、男性の声を女性の声に、あるいは、大人の声を子供の声に変換出来ます。
このようにして、好感を与える姿や声のアバターで相談者に対応すれば、好ましい効果が現れると思います。
例えば、臆病な子供が相手の場合は、可愛らしいアニメキャラクターのアバターと声で対応するといったようにです。
この技術は、教育用途、医療相談、介護用途等にも活用出来そうだと分かると思います。

◆バーチャル店員
上の、バーチャル受付より高度な技術が活用されているのが、現在、流行の兆しのあるバーチャル店員です。
これは、ただのテレビ電話での対応を、はるかに超えます。
それは、例えば、こんなものです。
お店の中に大き目のスクリーンを設置し、その中にバーチャル店員が現れます。
バーチャル店員は、可愛い猫人間のようなアバターとして登場すると、客を喜ばせるでしょう。
そして、そのバーチャル店員は、まるで本当にお店の中にいるかのように振る舞うことが出来ます。
なぜ、そんなことが出来るのでしょう?
実は、どこか遠くに居るバーチャル店員役の人間には、お店の中の様子が3次元的に見えているからです。
その仕組みはこうです。
お店の中では、複数台のビデオカメラで店内や商品、客を撮影し、その複数のカメラが捉えた映像データをコンピューターで合成して3次元化し、その3次元映像を遠くにいるバーチャル店員のパソコンにネットで送信します。
その3次元映像を、バーチャル店員役の人は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ。頭に装着し、視界を覆うディスプレイ)で見ます。すると、その店員には、店内にいるのと同じように、店内の様子が360度の立体で見えるのです。
その店員が顔を動かすと、HMDのセンサーと連動し、顔を向けた先にある店内の映像が見えるのです。
これによって、バーチャル店員は、ごく自然にお店の中にいる感覚で話し、振る舞うことが出来ます。

◆さらにMR(複合現実)へ
バーチャル店員が見ている世界は、お店の中をデジタルコピーしたVR(仮想現実)です。
そして、客にとっては、猫人間のようなバーチャル店員は、現実世界(実際のお店の中)に追加された仮想の存在で、これはAR(拡張現実)です。
そして、さらに、こんな良いことがあります。
バーチャル店員は、3次元ソフトを操作し、仮想のお店の中で移動出来るのです。
バーチャル店員が客の後ろに回り込むと、バーチャル店員には、客の後ろ姿が見えるのです。そんな時、客の後ろにスクリーンがあれば、バーチャル店員はそこに映っています。
これは、バーチャル店員が見ている「仮想空間=VR」と客が見ている「拡張された現実空間=AR」が融合したことになります。このようなものをMR(複合現実)と言います。

この技術には、広く無限の活用方法があります。
例えば、学校等の授業で、遠隔地にいる教師がバーチャル教師になることが考えられます。
教師が、生徒にとって、感じの良いアバターになっても良いでしょう(年配の教師が青年教師の姿や声のアバターになる等)。
教師は、必要なら、生徒の様子を横や後ろに回り込んで見ることも出来ます。
さらには、教師も生徒もHMDを装着すれば、全くのバーチャル空間で教師と生徒が一緒に授業を行うことが出来ます。そこでは、これまでに考えられなかった授業が可能になるでしょう。
これは、医療用途や、カウンセリング用途にも有望です。
また、エンターテインメント分野では、ライブコンサートを、遠隔地に居る観客にはVRで、会場に居る観客には、MRで提供出来ます。
すると、どうなるでしょうか?
歌手が、初音ミクやVR美空ひばりなどのバーチャル歌手なら、VRで遠隔地でもライブを楽しめますし、会場にいる、HMDを装着した観客は、MR技術により、バーチャル歌手に近づいたり、後ろに回り込むようなことも、既に実際に行われているのです。

以上です。