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2020年10月29日木曜日

バーチャル・ヒューマン

 先日、あるワイドショー番組で、海外でも活躍する日本人モデル、imma(いま)が紹介され、海外のトップモデルに優るとも劣らない美貌とスタイルが称賛されましたが、情報通であると思われる番組出演者達ですら、ほとんどが知らなかったのは、immaが人間ではなく、3次元CGであるバーチャル・ヒューマン(仮想人間)だということです。

今回のテーマは、今後、モデルだけでなく、あらゆる分野に進出するバーチャル・ヒューマンについてです。


◆AIで進化するバーチャル・ヒューマン

バーチャル・ヒューマン・モデル、immaは海外のファッションショーにも登場しています。

今は、海外のファッションショーでは、舞台に3次元映像を投影することが行われています。

技術の進歩により、3次元映像投影設備が小型化され、設定も簡単になってきています。

それで、immaも人間のモデルのように、最新ファッションに身を包み、ステージを歩きます。

つまり、世界のファッション業界では、バーチャル・ヒューマン・モデルが進出する準備が整っているということです。

バーチャル・ヒューマン・モデルは、完璧な容姿と共に、AIの活用により、自然で洗練された動作や表情が可能で、今や、人間の一流モデルのレベルと思いますが、AIがさらに進歩すれば、人間をはるかに超えると考えられます。


◆不気味の谷

ところで、これまで、immaのようなバーチャル・ヒューマン・モデルが登場しなかった理由が面白いので取り上げます。

人間以外の動物に関しましては、既に、映像だけのバーチャル・アニマルを超え、実体のあるロボットが活用されています。

映画では、サメ、トラといった危険な動物が必要な場合、ロボットが使われることが多くなりましたが、ロボット動物が使われている映画を見ても、観客は、それがロボットであることに気付きません。そのくらいリアルです。

保険会社のアフラックのCMに登場するアヒルを見て、「随分よく仕込まれたアヒルだ」と思ったかもしれませんが、あれもロボットアヒルです。

このようにロボットを使って撮影する技法を「アニマトロにクス」と言います。

では、人間のアニマトロにクス用ロボットはないのかと言いますと、既に、かなりのものが作られてはいます。

しかし、今のところ、もし使われても、ゾンビ役など、極めて特殊な場合だけです。

その理由は「不気味だから」です。

人間の感覚には「不気味の谷」と呼ばれる境界があり、(人間に関しては)中途半端にリアルだと、不気味に感じてしまうからです。

例えば、蝋人形は、かなりリアルに作っても、どこか本物と異なるので不気味なのです。


いまはまだ、ロボット人間は、完璧にリアルではなく、「かなりリアル」という段階なので、不気味さがあるのです。

しかし、CGで作られるバーチャル・ヒューマンは、完全な人間のレベルに達しています。

immaも完璧にリアルであるからこそ、不気味さがなく、自然に美しいと感じるのです。

バーチャル・アイドル・シンガーなら、初音ミクやIA(イア)、あるいは、中国の洛天依(ルォ・テンイ)らが国際的に人気がありますが、これらは、本物の人間と見間違えようがないアニメの顔をしています。だから、可愛いとは思っても、不気味とは思わないのです(ただし、年齢が高い人は不気味に感じる傾向があるという報告もあります)。

実際、バーチャル・アイドル・シンガーの製作会社では、あまり本物の人間に似せ過ぎて「不気味の谷」に引っかからないよう配慮しているという話もあります。

しかし、今後は、人間と見分けがつかないバーチャル・アイドル・シンガーも登場することが予想されます。

このように、immaのような、完璧なバーチャル・ヒューマンを作る技術がもっと普及していき、「不気味の谷」を超えることが容易になれば、バーチャル・ヒューマンは、様々な分野に進出すると思われます。

例えば、バーチャル・ヒューマンの教師やカウンセラーが注目されています。

見かけは人間と同じ(しかも美男・美女)でありながら、時に醜い心を持たない存在に教わる、あるいは、相談するという安心感が大きなメリットになる可能性があると考えられています。

ルドルフ・シュタイナーが「理想的な教師は空気のようなもの」と言ったことが本当の意味で実現されるのかもしれません。



◆バーチャル・ヒューマンの悪用

いずれは、誰でもimmaのレベルのバーチャル・ヒューマンを作れるようになると考えられます。

いまや、かなり高度なCG技術が、普通のPCで、誰でも安価に使えるようになってきました。

けれども、今は、ほとんどの人は、immaほどのレベルのCG技術を使ったり、immaを作るために必要なAIを作ることが出来ないので、ごく一部の者しか高級なバーチャル・ヒューマンを持てません。

しかし、immaレベルのバーチャル・ヒューマンを作るために必要な技術が、AIも含めて一般的になれば、写真1枚から、容易にバーチャル・ヒューマンを作ることが出来るようになります。

そうなれば、例えば、死者の写真から、その死者の生前の姿を簡単に再現することも可能です。

現在でも、技術力がある者による、著名人とそっくりなバーチャル・ヒューマン映像を作るといういたずらがSNSで行われ、話題・・・というよりは事件になることもあります。


◆バーチャル・シンガーが人間を超える

バーチャル・ヒューマンが既に進出している分野に歌手があります。

ヤマハが開発した歌声合成技術「VOCALOID(ボーカロイド)」を利用した、歌声合成ソフトがいろいろな会社で開発されています。

ただ、これらのソフトの基本的な操作自体は簡単なのですが、耳が肥えた人の鑑賞に堪えるほどの素晴らしい歌声で歌わせるには、かなり熟練と作業が必要です。

歌声合成ソフトの声を人間の歌手に近付けるために、ソフト開発者側、ユーザー側双方の多大な努力が行われている訳です。

しかし、これも、AIを使うことで状況が変わり、簡単に行えるようになります。

例えば、テクノピーチ社では、人間の歌手のわずか2時間の歌をAIに学習させれば、あらゆる歌を、その歌手そっくりに歌わせることが出来ます。

マイケル・ジャクソンの歌のCDを何枚かAIに聞かせれば、バーチャル・マイケル・ジャクソンが出来上がり、生前、彼が歌ったことのない歌でも、彼そっくりに歌えるのです。


◆バーチャル・ダンサー

また、ダンスに関しても、バーチャル・ヒューマンが躍る映像をAIが作成出来るようになるのも時間の問題です。

現在でも、人間のダンサーの身体にデバイスを付けて動きをトレースすることで、バーチャル・ヒューマンが踊る映像を作ることは可能ですが、人間のダンサーが躍る姿をカメラで撮影した映像だけで、AIの力でバーチャル・ダンサーを作る研究も進歩してきています。

やがては、天女のような素晴らしい、バーチャル・ヒューマン・ダンサーも登場するでしょう。

そうなった時、人間のダンサーが必要でないとまでは言えなくても、バーチャル・ダンサーで済んでしまうこと、あるいは、バーチャル・ダンサーでしか出来ないことも多くなると思われます。


以上です。


当ブログオーナー、KayのAI書籍。

AIもそうなのですが、本を一般の人に解り易く書くと、教科書的な正確さを欠くことが多く、そこに難癖を付けたり、見下したリする「寂しい」専門家が沢山います。
しかし、教科書的な書き方をすると、普通の人が絶対に使わない文言や言い回しになって、さっぱり解らなくなり、結局、人々に受け入れらてもらえず、その分野の発展を遅らせてしまうのです。
この本は、「すごく簡単」とは言いませんが、普通の人のために、普通の言葉を使って書きました。

本書のほぼ全ての実習が出来るデータを作ることが出来るExcelマクロを出版社サイトから無料でダウンロード出来ます。

2020年1月24日金曜日

バーチャル店員の流行

AIが、知らない間に私達の社会の隅々に入り込んでいたように、世界そのものをデジタル化する技術が社会の有り様を変えていきつつあります。
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、それに、MR(複合現実)と呼ばれるものがそれです。
これらにより、いつか、映画『マトリックス』のように、この世界は、実は既に、コンピューターが作った仮想世界にすり替わっている・・・といったことが起こるかもしれません(既にそうなっているという説もありますが)。
そこで、実際に仮想世界を作り、活用している事例として、現在、注目を集めている「バーチャル店員」を取り上げてみようと思います。
しかし、お話は、もっと簡単な「バーチャル受付」からにします。

◆バーチャル受付
企業や役所、空港等には受付があり、相談担当者が客に対応しています。
しかし、多くの場合、テレビ電話を使えば、人間が受付にいなくても、人々の相談に対応出来ます。
テレビ電話の画面に映る相談担当者の姿は、アニメの動物か何かだと楽しいかもしれません。しかし、ただのアニメでは、単調な反応しか出来ません。
そこで、相談担当者をアバター化することが考えられます。
アバターとは、人間の分身のキャラクターで、元の人間とは姿形は違っていても、テクノロジーの力で、アバターを元の人間と同じように動かすことが出来ます。
バーチャル受付では、アバターは、相談担当者の分身です。
相談担当者は、客が見ている画面内では、ひょうきんなライオンのアバターに変換され、相談担当者が顔を動かすと、同じようにライオンが顔を動かすようなことが出来ますし、ウインクや笑顔も、アバターで再現することが可能です。
姿だけでなく声も、リアルタイムで、男性の声を女性の声に、あるいは、大人の声を子供の声に変換出来ます。
このようにして、好感を与える姿や声のアバターで相談者に対応すれば、好ましい効果が現れると思います。
例えば、臆病な子供が相手の場合は、可愛らしいアニメキャラクターのアバターと声で対応するといったようにです。
この技術は、教育用途、医療相談、介護用途等にも活用出来そうだと分かると思います。

◆バーチャル店員
上の、バーチャル受付より高度な技術が活用されているのが、現在、流行の兆しのあるバーチャル店員です。
これは、ただのテレビ電話での対応を、はるかに超えます。
それは、例えば、こんなものです。
お店の中に大き目のスクリーンを設置し、その中にバーチャル店員が現れます。
バーチャル店員は、可愛い猫人間のようなアバターとして登場すると、客を喜ばせるでしょう。
そして、そのバーチャル店員は、まるで本当にお店の中にいるかのように振る舞うことが出来ます。
なぜ、そんなことが出来るのでしょう?
実は、どこか遠くに居るバーチャル店員役の人間には、お店の中の様子が3次元的に見えているからです。
その仕組みはこうです。
お店の中では、複数台のビデオカメラで店内や商品、客を撮影し、その複数のカメラが捉えた映像データをコンピューターで合成して3次元化し、その3次元映像を遠くにいるバーチャル店員のパソコンにネットで送信します。
その3次元映像を、バーチャル店員役の人は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ。頭に装着し、視界を覆うディスプレイ)で見ます。すると、その店員には、店内にいるのと同じように、店内の様子が360度の立体で見えるのです。
その店員が顔を動かすと、HMDのセンサーと連動し、顔を向けた先にある店内の映像が見えるのです。
これによって、バーチャル店員は、ごく自然にお店の中にいる感覚で話し、振る舞うことが出来ます。

◆さらにMR(複合現実)へ
バーチャル店員が見ている世界は、お店の中をデジタルコピーしたVR(仮想現実)です。
そして、客にとっては、猫人間のようなバーチャル店員は、現実世界(実際のお店の中)に追加された仮想の存在で、これはAR(拡張現実)です。
そして、さらに、こんな良いことがあります。
バーチャル店員は、3次元ソフトを操作し、仮想のお店の中で移動出来るのです。
バーチャル店員が客の後ろに回り込むと、バーチャル店員には、客の後ろ姿が見えるのです。そんな時、客の後ろにスクリーンがあれば、バーチャル店員はそこに映っています。
これは、バーチャル店員が見ている「仮想空間=VR」と客が見ている「拡張された現実空間=AR」が融合したことになります。このようなものをMR(複合現実)と言います。

この技術には、広く無限の活用方法があります。
例えば、学校等の授業で、遠隔地にいる教師がバーチャル教師になることが考えられます。
教師が、生徒にとって、感じの良いアバターになっても良いでしょう(年配の教師が青年教師の姿や声のアバターになる等)。
教師は、必要なら、生徒の様子を横や後ろに回り込んで見ることも出来ます。
さらには、教師も生徒もHMDを装着すれば、全くのバーチャル空間で教師と生徒が一緒に授業を行うことが出来ます。そこでは、これまでに考えられなかった授業が可能になるでしょう。
これは、医療用途や、カウンセリング用途にも有望です。
また、エンターテインメント分野では、ライブコンサートを、遠隔地に居る観客にはVRで、会場に居る観客には、MRで提供出来ます。
すると、どうなるでしょうか?
歌手が、初音ミクやVR美空ひばりなどのバーチャル歌手なら、VRで遠隔地でもライブを楽しめますし、会場にいる、HMDを装着した観客は、MR技術により、バーチャル歌手に近づいたり、後ろに回り込むようなことも、既に実際に行われているのです。

以上です。