日本では、2016年にマイナンバー(正式名称は「個人番号」)制度が始まりましたが、現状、マイナンバーカードの申請数は少なく、まだまだ十分には普及・活用されていません。
一方、中国では、日本のマイナンバーに相当する公民身分番号制度が定着し、行政サービスはこれを基に行われています。
中国では、デジタル通貨の一般化で紙のお金が使えない場合が多く、事実上、スマートフォンなしでは生活出来ません。そのため誰でもスマートフォンを持っていることが、デジタルでの活用を前提とした公民身分番号制度の普及を促したのだと思います。
日本でも、今後、マイナンバーカードが行き渡り、それがスマートフォンで活用出来るようになると、行政サービスは合理化して簡易化・高速化し、行政側も国民側もとても便利になりますが、一方で、政府による国民の監視で社会主義化につながるのではないか、あるいは、政府のITリテラシーが低いことで何か問題が起こるのではないかという懸念が言われています。
また、中国では、他人の公民身分番号を盗み、その番号の人間になりすます違法事件が多発しており、日本でも同じようなことが起こるのではないかという疑問もあります。
◆進歩しない一般のITスキル
中国がデジタル大国といったところで、国民のITスキルが高いわけではなく、上でも述べましたが、個人番号の漏洩・悪用などは、日常茶飯事と言われています。
世界で、インターネットが急速に普及していった21世紀初頭前後から20年以上、ネットでの、セキュリティー、プライバシー対策が重要であると言われ続けていますが、はっきり言って、日本でも、国民、さらに政府のITリテラシーは、それほど進歩したようには思えません。
一党独裁の社会主義国家である中国では、事実上の国家である中国共産党が決定したことが、誰にも反対されずに実施されますが、日本では、民意を無視出来ません。ですから、現状では懸念や疑問も多いマイナンバー制度は、政府の思惑通りには進まず、それは必ずしも悪いことではないと思われます。
しかし、政府に対し、必要な確認や反対はしつつも、良い部分は実行することが必要で、そのためには、政府も国民もITリテラシーを高めなければなりません。
◆個人情報海外流出事件
マイナンバー制度を始めるためには、コンピューターへの大量のデータ入力が必要です。
ところが、これに関し、日本で、こんな事件が起きています。
マイナンバーを活用する予定の日本の政府機関が、国民の個人情報データの入力を国内の業者に委託したのですが、その業者は、いつものことでしょうが、コストが安い中国の業者に業務を再委託しました。
すると、その中国の業者から、日本人の個人情報が漏洩した疑いがあり、詳細は不明ながら、おそらく、それが起こったことは確かなのですが、その政府機関は、それを否認し、そのままうやむやになってしまいました。
もうずっと前から、企業においては、機密情報や個人情報を扱う業務の再委託の取り決めなどは厳格に行う習慣が定着していますが、政府機関では、必ずしもそうではないことが今回の騒動の原因であると考えられます。
このように、政府やその配下の機関自体のITリテラシーが不十分では、マイナンバーカードの普及が遅れるのは、やむを得ないかもしれません。
◆スマートフォンによるデータ流出
中国に限りませんが、いろいろな国の様々な機関が、日本、アメリカ等の国民の個人情報を収集しようとしていることは十分に考えられます。
その目的は、様々ですが、例えば、日本人の個人情報を盗めば、その日本人になりますことも可能になり、そうすれば、スパイ活動がし易くなります。
もし、日本人の個人情報の収集が、外国の工作員により、組織的・広範囲に行われているなら大きな問題で、それが既に実際に行われている可能性すらありますが、日本の警察や公安は、そのあたりの対策が十分ではなく、そもそも対応能力に疑問があります。
しかし、もし、マイナンバーと紐づいた個人情報が海外に流出したら、非常に拙いことになりかねません。
マイナンバーに関連する個人情報の漏洩で我々に被害が発生した場合に、国がどこまで守ってくれるかは、甚だ疑問です。
そして、我々のプライバシー情報の海外流出の危険に関する、こんな話があります。
日本でも、中国製スマートフォンが広く普及しています。
それなりの性能を持ちながら、日本製、アメリカ製、韓国製に比べ、非常に安価なので大人気です。
特に、現在は、スマートフォンのSIMフリー化が進んだことにより、中国製スマートフォンを使う際にも、通信回線に関しては日本の通信会社を自由に選んで使えるからです。中国製スマートフォンは、日本の代理店を通じ、Amazon等のネットショップで手軽に購入出来ます。
ところが、そんな中国製スマートフォンに初期インストールされているアプリを通して、個人情報が漏洩する可能性が指摘されています。
実際、初期インストールされたアプリには、合理的理由がないのにユーザーにはアンインストール出来ないものもあり、非常に疑問を感じます。
◆ビッグテック(巨大IT企業)のプライバシー情報収集
今日、電子メールやSNSにお金を払う人はいません。現在では、電子メールがかつて有料であるのが普通だったと聞くと驚く人の方が多いかもしれません。
代表的なSNSであるFacebookやTwitterは、無料サービスでありながら、今や、世界中の政治家やビジネスマン、ジャーナリストらが、仕事にもフル活用し、万一、これらの利用が出来なくなると、活動に支障が出るほどです。
また、GoogleのGmailがないと仕事にならないと言う人も沢山います。
これは、既にかなりの個人情報が、ビッグテックに渡っているということです。
それだけではありません。
Gmailの中は、重要情報のやり取りにも普通に使われ、個人情報や機密情報もいっぱいで、、万一、他人に不正利用されると大変なことになりかねません。
よって、電子メールでもSNSでも、特にビッグテックのものは、単にパスワードで接続出来るのではなく、例えば、これまでと違う端末でアクセスする際には、強制的に確認が行われる等の安全機能が付けられ、よりセキュリティを高めています。
しかし、これらの運営会社(つまりビッグテック)自体が、機密情報やプライバシーを侵害してはいないのかが話題になることがあります。
これに対し、Googleは、従業員がユーザーのGmailの中身を見ることは決してないが、AIが見ていることは認めています。だから、ホテルや鉄道等の予約の受付メールが送られてくると、AIにより、自動的にスマートフォンのカレンダーに、それらのスケジュールが追加されることがあります。これは確かに便利ですが、勝手にそのようなことが行われることを、恐ろしいと思う感覚は忘れてはならないような気がします。
また、Googleマップの初期設定では、ユーザーがいつ、どこに行ったかの詳細がGoogleのクラウドサーバー上に記録されるようになっています。それこそ、何日の何時何分にどの電車に乗り、どのホテルに泊まり、どのイベント会場に行ったかなど、自分で解除しない限り、細大漏らさず記録されています。
そんな情報が漏れると困る場合もありますし、警察が捜査のために、そのような個人情報をGoogleに請求する可能性もありますが、それはやはりプライバシー侵害と言うべきでしょう。
そして、日本で多くのユーザーを持つSNSであるLINEで、個人情報が韓国や中国に筒抜けであったという報道がありました。
LINEを運営するLINE株式会社は、韓国最大のインターネットサービス会社NAVERの完全子会社です。
LINEは、この事件を否定、あるいは、些細な部分のみの漏洩であるとしていますが、様々な専門家から深刻性も指摘されています。
◆セキュリティ認証
では、スマートフォンの顔認証と指紋認証に関するセキュリティはどうでしょう?
顔認証に関しては、AIが学習するため、顔の画像データが、運営会社のクラウドサーバーに送られます。それによって、AIが認証の学習を行い、認証精度が上がるのです。
しかし、顔と違い、指紋は、様々な重要な用途で利用される生体認証情報です。
一応、指紋データは、運営会社のクラウドサーバーに送られることはないはずです。
指紋データが漏洩した場合、本人になりすます不正行為が行われる可能性があります。
例えば、アメリカ映画『バッドマン・ダークナイト・ライジング』(2012)で、バッドマンの正体である大富豪ブルース・ウェインは、ある日、突然に破産し、70億ドル(約7000億円)と言われる資産の全てを失います。
その経緯はこうでした。ブルースの家で行われたパーティーの客になりますました敵が、ブルースの指紋を家具から採取し、その指紋を使って、ブルースになりすまし、ブルースを破産させるようなオンライン投資を行ったのでした。
実際に、指紋だけでそこまで出来るとは思えませんが、生体認証の重要性を実感させるお話でした。
そして、スマートフォンで指紋認証を行っている者は、既に、スマートフォンを通じて、指紋データが海外に流失しているという噂もあります。単なる噂かもしれませんが、技術的にはやろうと思えば出来ると思います。
セキュリティで問題が起こった場合、自己の責任に帰することになると考えておくべきです。
そのために、「ITに弱くて」という言い訳は通用しないと認識すべきですし、「僕は怠惰で細かい管理は駄目なんだ」という人間は、悪人にとって、とても美味しいカモなのです。
以上です。
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