2021年3月11日木曜日

SNSに言論の自由はあるか

 インターネットは自由と平等とイノベーション(変革)のためのツールであり、これによって、一般の個人が、国、大企業と平等に発言出来る時代が来たと言われました。

しかし、それは幻想だったかもしれません。


◆主要メディアは今も強大

民主主義国家では、誰にでも言論の自由が保障され、また、報道機関はジャーナリズム精神に則り、公正に真実を伝える努力をする義務と責任があります。

しかし、個人に発言の自由があるといったところで、昔は個人には発言の拡散手段がほとんどありませんでした。

確かに、近年、インターネットが発達し、誰でも情報発信者になれるようになりました。

とはいえ、結局のところ、よほど集団化しない限り、インターネットでの発言には、ほとんど影響力はありません。

インターネットの中には、普通の人でありながら影響力を持つインフルエンサーと呼ばれる人がいますが、その影響力は主要メディアとは比較にならない小さなものです。


◆メディアを制する者が世界を制す

最近、インターネット上で「陰謀論」というものが人気があります。

「陰謀論」とは、表に現れない巨悪が世界を征服しつつあるという都市伝説みたいなものですが、政府や大企業の秘密の暴露のような面もあり、あまり信じない程度に見れば面白いと思います。

「陰謀論」では、世界を侵略しようとする悪者は、DS(ディープ・ステート。闇の勢力)と呼ばれ、DSは既にアメリカや日本等の民主主義国家を侵略しつつあるとされています。

では、DSはどうやって世界征服を進めるのでしょうか?

まず、DSは、主要メディア(テレビ局や新聞)を操り、その影響力を利用して大衆の思想を支配します。

どうやって主要メディアを操るのかと言いますと、まず、主要メディアに多額の広告を出す顧客になりますが、これが今の時代にマッチしています。

と言いますのは、ずっと前から、新聞、テレビは、インターネット広告の台頭で広告収益が激減し、大口の広告客やスポンサーは喉から手が出るほど欲しいからです。

そこで、主要メディアの大得意客になり、さらには、主要メディアに多額の投資も行うDSは、広告による巧妙な思想操作と共に、新聞やテレビの報道内容にまで介入出来ます。戦後の混乱期からの利権の獲得競争に勝ち残ったDSは資金力が豊富です。

次に、DSは、共産主義国家で行われているように、インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の言論も検閲しようとします。

SNSでDSの陰謀が漏洩すると、民衆が目覚めて抵抗勢力を起こす恐れがありますので、DSはSNSを監視し、都合の悪い情報は徹底弾圧します。

では、SNSを支配する方法ですが、こちらはDSにとっては比較的簡単なようです。

SNSでは、「ビッグテック」と呼ばれる巨大IT企業が運営する、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブが圧倒的シェアを持ちます。

そして、まだ歴史の浅いビッグテックは、CEO等トップに権力が集中しています。

そこで、ビッグテックのトップの弱みを握ったり、様々な脅しで圧力をかけるなど、あらゆる手段を使ってビッグテックを操り、ビッグテックが運営するSNSから、DSの世界侵略の計画の妨害になる言論を弾圧させます。

確かに、「陰謀論」はかなり空想的なものでしょうが、次項のお話のように、思わぬ現実である部分もあります。


◆主要メディアの危機

たとえば、こんなことに思い当たらないでしょうか?

アメリカでも同様ですが、日本人の多くは、アメリカ合衆国前大統領ドナルド・トランプ氏について、「パワフルであるが人格的には大きな欠陥がある人物」というイメージを持っています。

なぜ、そうなったのかと言いますと、単に、アメリカの主要メディアの全てがそう報道し、日本のテレビや新聞は、提携しているアメリカの主要メディアの報道をそのまま翻訳して報道するからです。

その中で、2020年の12月頃、主要メディアが決して報道しない面白い事件がありました。

アメリカの非営利の調査報道NPOであるプロジェクトベリタスの代表者ジェームズ・オキーフ氏は、最大級のニュース放送局であるX社の朝のテレビ会議の録音をSNS上に公開しました。

※X社の実名は後で述べる理由で隠します。

X社の内部の人間が録音したものを、オキーフ氏が手に入れたもので、それはX社の内部告発と言えるかもしれません。

その中には、X社の社長始め、幹部達の電話会議での肉声が録音されています。

X社社長が、「ドナルド・トランプがまともな人間でないことを民衆に印象付ける」よう、また、トランプ氏が新型コロナウイルスに感染した際には、トランプ氏は治療で使用した特別な薬の影響で精神異常を生じていると信じさせる報道をするよう、幹部達に指示していました(いずれも全く根拠はありません)。

オキーフ氏は、何日分もの会議の録音を公開し、その内容は、上記のようにジャーナリズム精神に反するでした。

しかし、多くの人が、権威あるX社の報道内容を真に受けたはずです。

都市伝説であるはずの陰謀論のようなことが、実際に、しかも、アメリカ最大級のメディアで行われていた訳です。


◆SNSの危機

今はSNSがありますので、上記のオキーフ氏のような人の活躍で、主要メディアの隠された真実を普通の人が知ることが出来ます。

このように、SNSは、主要メディアがおかしくなった時の正義の騎士の役割を果たすはずでした。

ところが、オキーフ氏のSNS上の投稿は強制削除され、さらに、オキーフ氏のSNSアカウントまで抹消されて、彼はSNSが使えなくなりました。

さらに、このことについて語るSNS記事が削除され、投稿者のアカウントが抹消されるかもしれません。そうであれば事実上の言論検閲です。

ご存じかもしれませんが、トランプ前大統領もあらゆるSNSのアカウントを抹消され、SNSでの情報発信が出来なくなっています。

なぜトランプ氏のSNSアカウントが抹消されたのかと言いますと、SNS運営会社の説明では、トランプ氏が民衆を扇動する誤った内容の投稿を行ったからで、主要メディアもそう報じましたので、やはり多くの人々はそれを信じました。

それが事実かどうかはここでは問題にしませんが、発言の内容の是非を決定する権限があるのは裁判所(つまり法律)であり、SNS運営会社ではないはずで、この観点から、ドイツ・フランス政府、メキシコのオブラドール大統領、オーストラリアのマコーマック副首相、そして、多くの米国民が、トランプ氏の言論封殺に対し、SNSを運営するビッグテックに抗議を行いました。

しかし、今や、強大な力を持つビッグテックは、自国政府や国民、また、いかなる国の抗議にもビクともしない権力を持っていることを思い知らされる結果になりました。

今や、世界最大の権力者であるアメリカ大統領の言論すら1企業のCEOの意思で封殺出来るというのが事実だと気付かされたのです。

大統領ですらそうなのですから、その気になれば、あらゆる言論の封殺は容易いことだというのが現実です。

かつては自由な発言のプラットフォーム(環境)であったSNSは、公開する発言を運営者が決める場所になっているのかもしれません。

陰謀論によれば、主要メディアとSNSを操るDSの世界征服はかなりのところまで来ているという訳です。

以上です。

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2021年1月27日水曜日

AIが最優秀な人間の頭に優ったこと

 我々は、地球が丸いことや、地球が自転しつつ太陽の周りを公転していることを知っています。

しかし、ほとんどの人は、そういったことを、本当に明白に理解している訳でも、また、自分で確かめた訳でもなく、単に、教科書に書かれていて、先生からもそう教わったので「解っている気になっている」だけと思います。

日本のように、全員が地球球体説や地動説を信じている国はむしろ珍しく、地球が平たいとか天動説を信じている人は、世界には珍しくありません。

スティーヴン・ホーキングの世界的ベストセラー『ホーキング宇宙を語る』の序章に、イギリスの偉大な数学者・哲学者・論理学者であるバートラント・ラッセルが、イギリスの地方の人々に地動説の講演を行った時の話があります。

講演後、ラッセルは、世界は亀の背中の上だと主張するお婆さんに言い負かされてしまいます。

そして、ホーキングは、未来の人から見れば、我々と、このお婆さんに差はないと言います。

「そんな馬鹿な」と思うかもしれませんが、そうかもしれないと思わせることが起こっています。


◆最低の馬鹿と言われた世界一IQ(知能指数)が高い女性

1990年の話です。

アメリカで、モンティ・ホール氏が司会を務めるテレビの娯楽番組で、こんなゲームが行われていました。

今日では、このゲームは「モンティ・ホール問題」という重要な数学問題になっています。


このゲームは、モンティ・ホール氏と1人の挑戦者との、2人の勝負として行います。

挑戦者の前には、A、B、Cの3つのドアがあり、そのどれか1つに景品の新車が入っていて、挑戦者が、新車が入っているドアを当てると、それを貰えます。

例えば、挑戦者がAのドアを選んだとします。

この時点では、まだAのドアを開けません。

そして、モンティ・ホール氏は、残りのBとCのドアのうち、新車が入っていない方のドアを開けます。

例えば、Bのドアを開き、その中には新車が入っていないことを示します。

そこで、モンティ・ホール氏は挑戦者に、

「このままAを選んでもいいですし、Cに変えても結構です」

と言います。

新車は、AかCのいずれかのドアの中に入っていますが、どちらに入っているかを挑戦者は知りようがなく、挑戦者が新車を得る可能性は50%です。


このゲームに対し、世界一IQが高いと言われる女性マリリン・ボス・サバント氏が、雑誌に「挑戦者は、選択するドアを変えるべき。それで正解率は2倍になる」と発表しました。

これに対し、「そんなはずがない」という、1万通もの批判の投書が殺到します。その投書の送り主には、百人の博士号保持者もいたと言われます。

その中の、大学教授を務める数学博士は、サバント氏を「大馬鹿者」と、公然と侮辱しました。

この数学博士を含め、ほぼ全ての人が、「ドアを変えようが変えまいが正解の確率は1/2に決まっている」と断言し、サバント氏がいくら説明しても無駄でした。

ところが、高名な数学者ポール・エルデシュ氏の弟子が、自分のパソコンでシミュレーションを行ったところ、なんと、サバント氏が正しいことが分かりました。

この記事の筆者である私は、昨年、出版した著書『楽しいAI体験から始める機械学習』(技術評論社)に、私が作った、モンティ・ホール問題のシミュレーションプログラムを載せました(VBA言語で書かれ、マイクロソフトExcel上で動きます)。

別に難しいプログラムではなく、当時のパソコンに無料で付いていたBASIC言語でも、十分、作ることが出来ます。

そんなプログラムで、サバント氏が正しいことがはっきり分かります。


◆理屈では決して理解出来ない

このモンティ・ホール問題を、理論的に説明する人が世界中に沢山います。

それは書籍や雑誌にも掲載され、子供でも解るように、図を駆使して懇切丁寧に説明したものもあります。

しかし、どんなに丁寧に、工夫し、上手く説明しても、「腑に落ちる」、つまり、直観的に、「なるほど!!」と思うことは絶対にないと思います。

それは、上に書いたように、並外れて頭の良い科学者でも解らなかったことや、このモンティ・ホール問題を、1冊の分厚い本で解説した著名な数学者がいることなどからも解ると思います。

実際、いまでも、モンティ・ホール問題を理屈で分かる人は、ほぼいないと思います。

まあ、サバント氏のように、IQが228もあるような人は別かもしれませんが・・・


◆AI(人工知能)は「モンティ・ホール問題」を簡単に理解出来た

ところで、筆者は、上記の『楽しいAI体験から始める機械学習』で書きましたが、モンティ・ホール問題のシミュレーションプログラムの実行結果をAIに学習(機械学習)させたところ、AIはあっさりと、モンティ・ホール問題を解いてしまいました。

ある著名な宗教人類学者が著書の中で、「誰かと2人で、モンティ・ホール問題のゲームを1万回やれば解る」と書かれていましたが、実際には、そんなことは不可能ですし、仮に、本当に1万回やっても、結果の記録(ドアを変えた場合、正解率が2倍になる)を見て「不思議だなあ」と思うだけでしょう。

しかし、AIは100回やれば大体見抜き、1000回で、ほぼ完全に理解しました。

AIは、「思考するマシン」ではなく、「推測するマシン」です。

つまり、AIは、モンティ・ホール問題を、論理的に解けるのではなく、結果を高い確率で推測出来るのです。

モンティ・ホール問題は、数学的には、挑戦者がドアを変えなかった場合に正解する確率は33.33%で、ドアを変えたら、正解する確率は66.67%です。

コンピューターで十分な数のシミュレーションを行うと、ほぼ、これとぴったりの数値が出ます。

AIの場合、AIの「モデル」の作り方で精度は変わるのですが、モンティ・ホール問題に関しては、簡単なモデルでも、ほぼ理論値通りの推測が出来ました。

つまり、今のAIにとって、モンティ・ホール問題は、簡単な問題なのです。

けれども、人間は、相当に頭が良い人でも、どれほど論理的思考や推測をしても、モンティ・ホール問題を解けないのです。

人間には解けない難しい問題を解く場合、

(1)コンピュータープログラム(シミュレーション等)で解く

(2)ビッグデータで解く

(3)AIで解く(現代ではディープラーニングが主流)

が考えられ、適切なものを選ばなければなりません。

AIで出来ることとビッグデータで出来ることは似ていて、根本的には同じであることも多く、同じ問題を両方でやってみることも多いと思います。

ただし、AIは、ビッグデータに比べれば簡単に使うことが出来るというメリットがあります。

AIで解くべき問題にAIを上手く適用することで、比較的手軽に、経済、政治、軍事、スポーツ等でライバルに勝てる可能性が高まり、医療、教育等でも飛躍的に効果を上げることが出来る可能性があります。

そして、AIは、実に多くのことに適用出来るのです。

目の前の問題にAIを適用出来るか?

そのためには、問題をどう捉え直せば良いのか?

それが解る優秀な人材が数多く必要になるはずです。


以上です。

記事中で取り上げました、当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

数学やプログラミングでAIを語るのではなく、AIを使って問題を解決するための考え方を、楽しい実習を通して理解出来るようになることを目指しました。
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