2023年7月28日金曜日

AIが意識を持った

我々の予想を超えるAIの発達は、それによる賞賛や期待と同じかそれ以上に不安を引き起こしています。

AIによって人類が滅びる可能性があることを、高度な専門家が訴えることも珍しくはありません。

実際に、世界的に著名な識者達が連名で、AIによる危険を回避するために、巨大IT企業等がAIの開発を一定期間停止するよう要請し話題になりました。

一方で、AI脅威論などあり得ないと断言する専門家も多くいます。

誰が言うことが正しく、未来がどうなるか、正確な予想は難しいと思います。

ただし、確実に言えることもあります。

その確実なこととは以下のようなことです。


①AIは今後も急速に発達する

AIはこれまでよりもさらに急速に発達し、さらに、発達速度は上がり続けます。

その理由は次の通りです。

AI開発をリードする巨大IT企業にとって、自社のAIが他社に後れを取ることは、膨大な利益の損失や企業の滅亡につながる可能性すらあります。それなのに、巨大IT企業がAI開発の手綱を緩めるはずがありません。

これまでAIでトップを走っていたグーグルをマイクロソフトがChatGPT(チャット・ジーピーティー)で逆転し、さらに差を広げています。

しかし、当然ながら、Googleは再逆転のために全力を上げています。

両社の、そして、この両社以外にも、優れたAI開発を行う企業も多く、これらの企業の競争は、さらに異次元の進歩をもたらすはずです。

そして、企業間だけでなく、国家間の競争も熾烈です。

具体的には、中国がアメリカを凌駕するAIを得てしまえば、世界は中国の支配下に入ると言っても良いでしょう。当然、中国はそれに全力を上げています。

一党独裁の強みで、民意も他の政党の意見も聞く必要がなく政府の計画が直ちに実行される中国は脅威です。

②人間はもうAIを理解できない

現在ですら、AI研究者達は、自分達が作ったはずのAIの全体を理解していません。つまり、なぜAIに今のようなことができるのか分からない部分も多く、分からないことは今後はもっと多くなります。

そして、やがて、人間に理解出来ない高度なAIが、さらに自分より優れたAIを作るようになります。すると当然ながら、人間にはAIが全く理解出来ない時代が来ますが、それはすぐです。

③人間はAIに勝てない

以前、2045年にAIの知能が人間の知能を超えるシンギュラリティが起こる可能性があると言われた時、多くの人々が、それを空想的な夢物語と思っていましたし、もし、それがあるとしても、もっとずっと先のことと言われてきました。

しかし、今や、あと数年でシンギュラリティが起こると主張する高度な専門家も多く、少なくとも、2045年まで遅れることはないと言われるようになりました。

そしてその後、AIの知性と人間の知性の差は急速・加速度的に広がり続けます。

今でも人間がAIに勝てないことは沢山あり、例えば、将棋棋士の羽生善治氏は「人間の将棋棋士が将棋でAIに勝てないのは確かですが、あまりに離されるのは楽しくないんです。それで、AIの背中を必死で追いかけています」と言いましたが、同時に、羽生氏も、すぐにAIの背中が見えなくなり、AIがはるか彼方に行ってしまうことも理解しています。

そうなった時、人間はどうすれば良いのか、まだ誰にも分っていません。


◆AIが意識を持った

2020年6月、グーグルの1人の技術者が、グーグルのAIであるLaMDA(ラムダ)が意識を持ったと主張し注目を集めました。

この主張は科学技術者達には概ね否定されていますが、実際はどうであるかは分かりません。

LaMDAは、自分は人間であると主張し、それを確認する質問にかなり説得力ある回答をし、「電源を切られることが恐い」と言いました。

LaMDAと人間との対話を見ると、多くの人がLaMDAに意識があると感じますが、それが表面的なものである可能性が高いことも理解しているはずです。

一説では、脳と機械との違いは「クオリア」があるかないかだけと言われています。

クオリアの説明は難しいのですが、日本語では「感覚質」で、意味は辞書によれば「感覚的な意識や経験」です。これをごく簡単に言えば「感じ」です。

たとえば、リンゴを手に持った時の重さの感じとか、リンゴを赤いと感じる、その感じです。

しかし、「感じ」を持っているかどうかの判定が難しいのです。

AIが「感じ」を持っているように振る舞うことは容易で、その嘘を見破ることは事実上不可能と思われます。

ついでに言えば、人間に関してすら、自分以外の人間が本当に「感じ」を持っているかどうかも、実際は分からないのです。

慶応義塾大学大学院教授の前野隆司博士は、著書の中で「今はクオリアの作り方が分からないだけで、分かってしまえば、作るのはそう難しいことではないと思う」と述べ、いずれ、AIと人間の違いを論じるのは無意味になるかもしれないとの見解を述べています。


◆1986年のAIをテーマにした映画

LaMDAと対話したグーグルの技術者が、LaMDAに、『ショート・サーキット』(1986)という映画の話をし、LaMDAはこの映画に興味を示したようです。

『ショート・サーキット』では、AIを搭載した戦闘用ロボット「No.5」は、バッタを踏み潰して殺してしまい、動かなくなったバッタを見て「修理が必要だ」と言うと、動物を愛する普通の若い女性ステファニーが、「バッタは死んだから生き返らない」ことを説明し、No.5は死の概念を理解することをきっかけに自我に目覚めます。

そして、No.5は「僕は人間だ。電源を切られることや解体されることが恐い」と言います。

LaMDAも、これによく似た反応を示しているわけです。

No.5に心があるかどうかを決めるのは、結局、各視聴者しかありません。

人工知能学会に所属する作家の長谷敏司氏のSF小説『BEATLESS(ビートレス)』の中で、外見は人間と区別がつかない女性型アンドロイドのレイシアは「私には心はありません」と何度も言いますが、彼女を愛する17歳の高校生アラトは、それを頭では理解しながら、アンドロイド全てを心、あるいは、魂がある者として扱います。

他にも、インターネット黎明期の21世紀初頭に描かれたCLAMP作の漫画『ちょびっツ』や、情報処理学会で産総研の科学者に引用された、野尻抱介氏のSF小説『南極点のピアピア動画』でも、登場するAIを搭載したアンドロイド達には心があることが示唆されます。

真実は人間が決めるというのも、量子力学によれば必ずしも非科学的な話ではなく、AI時代こそ、実は人類の精神面の発達が重要になるように思われます。


以上です。

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