2022年6月16日木曜日

AIを信頼する最後のテスト

 AI(人工知能)が社会に完全に受け入れられるためには、これまで保留されていた大問題を、いよいよ解決する必要があります。

その大問題は、「トロッコ問題」に集約されるのではないかと思います。

イギリスの哲学者フィリッパ・フットが1967年にこの問題を提起して以来、世界中で数多くの考察・論争が行われながらも、これまでは、「難しい問題ですね」「答なんてないんじゃないですか?」と、気楽に言われてきました。しかし、人間とAIが真に共存するためには、その解答が必要になるのではないかと思います。


◆トロッコ問題

今の時代、トロッコを知らない人も多いでしょう。トロッコとは、鉄道の線路の上を走る小型貨車で、トロッコに動力機関はなく、単に低い方向に走ったり、ペダルを漕いで動かす単純なものです。

トロッコは、鉱山やダムといった大規模な工事現場などで、数人の人間の移動や、荷物の運搬に利用されます。

そして、「トロッコ問題」とは、こんなものです。

勢い良く走っているトロッコの先に5人の人がいて、そのままいくと、トロッコはその5人に激突し、5人が死亡します。

ところが、あなたが線路切り替え機を使い、線路の切り替えを行えば、トロッコは進路を変えますが、変えた進路の先には、1人の人がいて、トロッコをそちらに走らせれば、その1人が死にます。

あなたは、線路を切り替えるべきでしょうか?

単純に考えると、線路を切り替え、4人多く救うべきと思うかもしれません。

しかし、もし、これを学校の試験問題にし、学校が、「線路を切り替える」を正解にしたら、その学校への非難で大騒動になるでしょう。

では、なぜ、それが正解と言えないのでしょうか?

そこで、問題を明確にするため、こんなふうに問題を変形した人がいます。

5人の重病患者がいて、そのままでは、5人共、やがて死にます。

しかし、1人の健康な人の臓器を5人に移植すれば、5人は助かるとします。しかし、その場合、臓器を提供した1人は死にます。

6人の年齢は同じ位とします。

この場合だと、1人を犠牲にすべしという人は、まあ、ほとんどいないと思います。

つまり、この臓器移植の例では、何もしないのが正解というのは、理解し易いのです。

トロッコ問題も、本質的にはこれと同じですので、やはり、「自然にまかせて」5人を犠牲にするしかないというのが正解のように思われます。

しかし、それが正解と誰もが認めるとは限りません。


◆2017年中にAI運転車がデビューするはずだった?

2017年4月のTEDカンファレンスで、有名な電気自動車メーカーであるテスラ社のCEOイーロン・マスクは、TEDの代表者であるクリス・アンダーソンとの対談形式の講演を行いました。

その中で、アンダーソンがマスクに、「テスラ社はいつ、AI運転の自動車を市場に出すのですか?」と問うと、マスクは「今年(2017年)の11月か12月です」と答えます。そして、さらに続けて、マスクは、

「カリフォルニアの駐車場からニューヨークの駐車場へと、制御装置には一切触れることなく移動出来るようになります」

と言い切り、アンダーソンが「それが今年中に?」と改めて確認すると、マスクは、「その通りです」と自信たっぷりに断言し、会場からは拍手が起こりました。

しかし、2021年10月現在、それはまだ実現していません。

その理由は、「トロッコ問題」が解決されないことと考えて良いと思います。


◆機械には非常に厳しい条件が課せられる

AIの運転の安全性はどのくらいかと言いますと、既に、人間の運転よりはるかに安全です。

人間の運転でしたら、アメリカでは、1年間に4万人もの人が、交通事故で亡くなっています。しかし、だからといって、自動車が禁止されることはありません。

しかし、AI運転の場合、1人の死者も出すことは許されないのです。

実際は、AIだけでなく、機械や、それを制御するソフトウェア、さらには医薬品の欠陥で人が死ぬことは、決して容認されないのです。

例えば、時々、ある自動車のエンジンやエアバッグに欠陥が見つかり、メーカーは販売した何万台もの自動車を無償で修理することがありますが、これは、放っておいても事故が起こる可能性は、ほとんどゼロという些細な欠陥の場合もあります。それでも、最後の1台まで修理する義務がメーカーに課せられます。

それどころか、欠陥が明確ではないばかりか、単に疑わしいというだけでも駄目な場合があります。

2009年に、アメリカで、トヨタ車が暴走したことで家族4人が死亡したとして、トヨタが訴えられました。

しかし、これは、トヨタ車の欠陥ではなく、この車に使用されていた、この車専用のものでない床シートの一部がアクセルに引っかかったことが原因でした。

しかし、トヨタは自主的に380万台の同型車を回収しました。そうしないとアメリカ人が納得せず、アメリカを敵に回しかねなかったからです。

スマートフォンにおいても、2016年に、バッテリーの欠陥による爆発事故が相次いだとして、サムスンは「Galaxy Note 7」という機種を250万台回収しました。しかし、そんな事故が起こったのはせいぜい2、3件で、それもかなり特殊な状況でしたが、それでも許されないのです。

人間に比べ、機械がいかに厳しい目で見られるかが分かると思います。

もしかしたら、AI運転の自動車の事故率は人間が運転する場合の1%以下かもしれませんが、それでは足りないのです。AI運転の車は、決してミスをしないことが証明される必要があります。

しかも、上のトヨタ車の例のように、実際には自動車に責任がないと証明されても、尚、疑われるのです。

そうであるなら、トロッコ問題のようなことに、実際にAI運転の自動車が直面した時、AIが取った対応に対し、極めて厳しい目が向けられることは間違いなく、自動車メーカーも政府も、「トロッコ問題」に決着を付けることが出来ない限り、AI運転の自動車が認可されるのは難しいと思われます。


◆論理的な答は出ない

「トロッコ問題」に、誰もが納得する答は、今のところありません。

「トロッコ問題」を、現実の問題に置き換えると、次のようなことが考えられます。

1人の男性が乗ったAI運転の車が走行中、そのままでは5人の子供をはねてしまう状況で、AIがハンドルを切り、車は崖から転落したとします。AIは5人の子供を救い、搭乗者の男性を犠牲にすることを選んだわけです。

客観的には、この判断は正しいと思われるかもしれません。

オリジナルの「トロッコ問題」に当てはめると、AIは、線路切り替え機を操作し、5人を救い、1人を犠牲にしたわけです。

しかし、車ごと崖から落とされた男性、あるいは、その家族が、この車を作った自動車会社を訴える可能性があります。

そして、自然の流れで言えば、自動車は5人の子供をはねたと思われますので、「AIが意図的に男性を殺そうとした」として、男性側が裁判に勝つ可能性があります。

そもそも、このAI自動車を販売する際、5人の子供を救うために、AIが搭乗者を犠牲にする可能性があると説明し、それが販売契約書に書かれていたら、この男性は、この車を買わなかった可能性が高いと思われます。


いずれにしても、生命とか生活が関係する問題に、理屈だけで答を見つけるのは難しいものです。

こんな逸話があります。

松下電器産業(現パナソニック)がまだそれほど大きくない時代、大不況が襲い、松下電器も経営危機に陥ります。松下電器の幹部達は、社長の松下幸之助に社員の大規模なリストラを要求します。

不採算部門を切り捨て社員をリストラするというのは、業績回復の有力な手法で、今後は、AIがリストラ実施を提案、および、その内容を提示するようになると思われます。

しかし、松下幸之助は、「リストラは一切しない。仕事がないなら掃除をやらせろ」という、言わば非論理的な、AIなら決して行わない決断をします。

ところが、松下幸之助の決断を聞いて感激した社員達全員が、一丸となって不況に立ち向かい、新しいアイデアを出し、あらゆることに積極的、果敢に取り組んだ結果、大不況の中で、松下電器だけが業績を向上させました。

「トロッコ問題」だって、非論理的としか思えないやり方で、全員を救う方法があるかもしれません。

ただし、この松下電器の場合は、たまたまうまくいっただけかもしれず、リストラをしなかった結果、もっと悪い状況になり、松下幸之助は重大な責任を追及されたかもしれません。

AIとは、ある意味、未来予測技術です。何を選択したかによって、どうなるかを正確に予測出来るほどAIが進歩することが鍵になると思われます。


以上です。


当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

誰でもAIを使って、「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの問題に挑むことが出来るよう工夫しました。
その方法を使って、あなたの会社などの問題をAIを使って解決しましょう。

実習のためのデータを作ることが出来るExcelマクロを出版社サイトから無料でダウンロード出来ます。

2022年3月18日金曜日

高まるプライバシー危機

 日本では、2016年にマイナンバー(正式名称は「個人番号」)制度が始まりましたが、現状、マイナンバーカードの申請数は少なく、まだまだ十分には普及・活用されていません。

一方、中国では、日本のマイナンバーに相当する公民身分番号制度が定着し、行政サービスはこれを基に行われています。

中国では、デジタル通貨の一般化で紙のお金が使えない場合が多く、事実上、スマートフォンなしでは生活出来ません。そのため誰でもスマートフォンを持っていることが、デジタルでの活用を前提とした公民身分番号制度の普及を促したのだと思います。

日本でも、今後、マイナンバーカードが行き渡り、それがスマートフォンで活用出来るようになると、行政サービスは合理化して簡易化・高速化し、行政側も国民側もとても便利になりますが、一方で、政府による国民の監視で社会主義化につながるのではないか、あるいは、政府のITリテラシーが低いことで何か問題が起こるのではないかという懸念が言われています。

また、中国では、他人の公民身分番号を盗み、その番号の人間になりすます違法事件が多発しており、日本でも同じようなことが起こるのではないかという疑問もあります。


◆進歩しない一般のITスキル

中国がデジタル大国といったところで、国民のITスキルが高いわけではなく、上でも述べましたが、個人番号の漏洩・悪用などは、日常茶飯事と言われています。

世界で、インターネットが急速に普及していった21世紀初頭前後から20年以上、ネットでの、セキュリティー、プライバシー対策が重要であると言われ続けていますが、はっきり言って、日本でも、国民、さらに政府のITリテラシーは、それほど進歩したようには思えません。

一党独裁の社会主義国家である中国では、事実上の国家である中国共産党が決定したことが、誰にも反対されずに実施されますが、日本では、民意を無視出来ません。ですから、現状では懸念や疑問も多いマイナンバー制度は、政府の思惑通りには進まず、それは必ずしも悪いことではないと思われます。

しかし、政府に対し、必要な確認や反対はしつつも、良い部分は実行することが必要で、そのためには、政府も国民もITリテラシーを高めなければなりません。


◆個人情報海外流出事件

マイナンバー制度を始めるためには、コンピューターへの大量のデータ入力が必要です。

ところが、これに関し、日本で、こんな事件が起きています。

マイナンバーを活用する予定の日本の政府機関が、国民の個人情報データの入力を国内の業者に委託したのですが、その業者は、いつものことでしょうが、コストが安い中国の業者に業務を再委託しました。

すると、その中国の業者から、日本人の個人情報が漏洩した疑いがあり、詳細は不明ながら、おそらく、それが起こったことは確かなのですが、その政府機関は、それを否認し、そのままうやむやになってしまいました。

もうずっと前から、企業においては、機密情報や個人情報を扱う業務の再委託の取り決めなどは厳格に行う習慣が定着していますが、政府機関では、必ずしもそうではないことが今回の騒動の原因であると考えられます。

このように、政府やその配下の機関自体のITリテラシーが不十分では、マイナンバーカードの普及が遅れるのは、やむを得ないかもしれません。


◆スマートフォンによるデータ流出

中国に限りませんが、いろいろな国の様々な機関が、日本、アメリカ等の国民の個人情報を収集しようとしていることは十分に考えられます。

その目的は、様々ですが、例えば、日本人の個人情報を盗めば、その日本人になりますことも可能になり、そうすれば、スパイ活動がし易くなります。

もし、日本人の個人情報の収集が、外国の工作員により、組織的・広範囲に行われているなら大きな問題で、それが既に実際に行われている可能性すらありますが、日本の警察や公安は、そのあたりの対策が十分ではなく、そもそも対応能力に疑問があります。

しかし、もし、マイナンバーと紐づいた個人情報が海外に流出したら、非常に拙いことになりかねません。

マイナンバーに関連する個人情報の漏洩で我々に被害が発生した場合に、国がどこまで守ってくれるかは、甚だ疑問です。

そして、我々のプライバシー情報の海外流出の危険に関する、こんな話があります。

日本でも、中国製スマートフォンが広く普及しています。

それなりの性能を持ちながら、日本製、アメリカ製、韓国製に比べ、非常に安価なので大人気です。

特に、現在は、スマートフォンのSIMフリー化が進んだことにより、中国製スマートフォンを使う際にも、通信回線に関しては日本の通信会社を自由に選んで使えるからです。中国製スマートフォンは、日本の代理店を通じ、Amazon等のネットショップで手軽に購入出来ます。

ところが、そんな中国製スマートフォンに初期インストールされているアプリを通して、個人情報が漏洩する可能性が指摘されています。

実際、初期インストールされたアプリには、合理的理由がないのにユーザーにはアンインストール出来ないものもあり、非常に疑問を感じます。


◆ビッグテック(巨大IT企業)のプライバシー情報収集

今日、電子メールやSNSにお金を払う人はいません。現在では、電子メールがかつて有料であるのが普通だったと聞くと驚く人の方が多いかもしれません。

代表的なSNSであるFacebookやTwitterは、無料サービスでありながら、今や、世界中の政治家やビジネスマン、ジャーナリストらが、仕事にもフル活用し、万一、これらの利用が出来なくなると、活動に支障が出るほどです。

また、GoogleのGmailがないと仕事にならないと言う人も沢山います。

これは、既にかなりの個人情報が、ビッグテックに渡っているということです。

それだけではありません。

Gmailの中は、重要情報のやり取りにも普通に使われ、個人情報や機密情報もいっぱいで、、万一、他人に不正利用されると大変なことになりかねません。

よって、電子メールでもSNSでも、特にビッグテックのものは、単にパスワードで接続出来るのではなく、例えば、これまでと違う端末でアクセスする際には、強制的に確認が行われる等の安全機能が付けられ、よりセキュリティを高めています。

しかし、これらの運営会社(つまりビッグテック)自体が、機密情報やプライバシーを侵害してはいないのかが話題になることがあります。

これに対し、Googleは、従業員がユーザーのGmailの中身を見ることは決してないが、AIが見ていることは認めています。だから、ホテルや鉄道等の予約の受付メールが送られてくると、AIにより、自動的にスマートフォンのカレンダーに、それらのスケジュールが追加されることがあります。これは確かに便利ですが、勝手にそのようなことが行われることを、恐ろしいと思う感覚は忘れてはならないような気がします。

また、Googleマップの初期設定では、ユーザーがいつ、どこに行ったかの詳細がGoogleのクラウドサーバー上に記録されるようになっています。それこそ、何日の何時何分にどの電車に乗り、どのホテルに泊まり、どのイベント会場に行ったかなど、自分で解除しない限り、細大漏らさず記録されています。

そんな情報が漏れると困る場合もありますし、警察が捜査のために、そのような個人情報をGoogleに請求する可能性もありますが、それはやはりプライバシー侵害と言うべきでしょう。

そして、日本で多くのユーザーを持つSNSであるLINEで、個人情報が韓国や中国に筒抜けであったという報道がありました。

LINEを運営するLINE株式会社は、韓国最大のインターネットサービス会社NAVERの完全子会社です。

LINEは、この事件を否定、あるいは、些細な部分のみの漏洩であるとしていますが、様々な専門家から深刻性も指摘されています。


◆セキュリティ認証

では、スマートフォンの顔認証と指紋認証に関するセキュリティはどうでしょう?

顔認証に関しては、AIが学習するため、顔の画像データが、運営会社のクラウドサーバーに送られます。それによって、AIが認証の学習を行い、認証精度が上がるのです。

しかし、顔と違い、指紋は、様々な重要な用途で利用される生体認証情報です。

一応、指紋データは、運営会社のクラウドサーバーに送られることはないはずです。

指紋データが漏洩した場合、本人になりすます不正行為が行われる可能性があります。

例えば、アメリカ映画『バッドマン・ダークナイト・ライジング』(2012)で、バッドマンの正体である大富豪ブルース・ウェインは、ある日、突然に破産し、70億ドル(約7000億円)と言われる資産の全てを失います。

その経緯はこうでした。ブルースの家で行われたパーティーの客になりますました敵が、ブルースの指紋を家具から採取し、その指紋を使って、ブルースになりすまし、ブルースを破産させるようなオンライン投資を行ったのでした。

実際に、指紋だけでそこまで出来るとは思えませんが、生体認証の重要性を実感させるお話でした。

そして、スマートフォンで指紋認証を行っている者は、既に、スマートフォンを通じて、指紋データが海外に流失しているという噂もあります。単なる噂かもしれませんが、技術的にはやろうと思えば出来ると思います。

セキュリティで問題が起こった場合、自己の責任に帰することになると考えておくべきです。

そのために、「ITに弱くて」という言い訳は通用しないと認識すべきですし、「僕は怠惰で細かい管理は駄目なんだ」という人間は、悪人にとって、とても美味しいカモなのです。


以上です。


当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

誰でもAIを使って、「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの問題に挑むことが出来るよう工夫しました。
その方法を使って、あなたの会社などの問題をAIを使って解決しましょう。

実習のためのデータを作ることが出来るExcelマクロを出版社サイトから無料でダウンロード出来ます。

2022年2月20日日曜日

優等生ほどAIの奴隷になる

 昔からあることですが、アニメを見ている子供を見て、母親が「下らないアニメなんか見て!」と叱責します。

しかし、そのアニメが、子供の将来に良い影響を与える素晴らしいものでないとは限りません。

この母親の問題は何かと言いますと、自分で体験せずに、価値判断をしたことです。

人間は、体験をしないと、良いか悪いか分からないのに、この母親は、体験をしないまま、誰か(テレビや先生)の意見を受け入れたわけです。

これまでは、それでも誤魔化しが効きましたが、特にAI(人工知能)の時代では、それは拙いということをお話しようと思います。


◆これまでの何にも似ていない新しいもの

自分で体験しないと何も分からないことは誰でも分かっています。

例えば、海外旅行、スキューバダイビング、坐禅・・・経験すれば良いかもしれないと思いつつ、「別にやらなくても、そんなに変わらない」と思い、他人の経験談をテレビなどで見聞きして、分かった気になっていました。

しかし、今後は、経験をしないことがリスクになる可能性があります。

例えば、グーグル検索について考えてみましょう。

昔なら、何かを調べる時、図書館など、あちこちに出かけ、沢山の本や昔の新聞を調べ、電話をかけまくって、やっと分かった・・・いや、それでも、分からないかもしれないことを、グーグル検索を使えば、かなりのことが数分で分かってしまいます。

確かに、苦労して調べることの価値もありますが、今、何でもかでも、自分の足で調べるのは愚かと言えると思います。

ところで、グーグル検索や、その他の既に広く使われているインターネットサービスは、昔からあるものの代替であり、分かり易く、特に進取の気性がある人でなくても利用しています。

しかし、従来は想像もしなかったものがどんどん現れてきています。AIやVR(仮想現実)がそうです。

それらは過去の何かに例えて理解することは出来ず、それを直接体験しない限り、全く分からないばかりか、存在にすら気付きません。

それで、知らないうちに時代に取り残されます。


◆分かったような気になる恐さ

少し前、『鬼滅の刃』というアニメ映画が、驚異的にヒットしました。

すると、テレビのワイドショー番組で、『鬼滅の刃』は何が良くてヒットしたのかということを、顔なじみのコメンテーターが、自信満々で解説します。

それを見て、視聴者は「なるほど」と納得します。

しかし、『鬼滅の刃』の、そんな解説は全部嘘です。

コメンテーターに解説出来るような理由で、これほどヒットするなら、アニメ製作会社は苦労しません。

また、たとえ、コメンテーターが、実際に映画を見、本当に良いと思った上で解説していたとしても、彼らに映画の良さを説明出来ないのです。

つまり、いくら良いと思っても、それを言葉で説明することは、ほとんど不可能なのです。

そもそも、映画の製作者ですら、その映画の良さを10%も解説出来ないなんて普通なのです。

例えば、男の子に、自分が好きな女の子について、「その子のどこがいいの?」と尋ねたら、「え・・・と、顔とか、優しいところとか」と、曖昧なことを言います。この男の子は、その女の子に何か特別なものを感じてはいるのですが、その「何か」を言葉で言うことは出来ません。

そして、それは、大人でも同じことなのです。

何か素晴らしいことを体験し、これはと思う人を仲間にしようと、その素晴らしさを力説したところで、せいぜいが、「君がそこまで言うなら、良いかもしれないね」と言う程度ではないですか?

こんなことを、しっかり認識した方が良い時代です。その理由を次項でお話します。


◆曖昧な概念を論理化・数値化するAI

ところが、AI(人工知能)は、人間にとってはふわっとした「好き」を論理的に理解してしまいます。そんな仕組みなのです。

「好き」だけではありません。あらゆるアナログな感覚やノウハウを、精密にデジタル化します。

「銀座No.1ホステスの社交術」なんてベストセラー本があったように思います。

No.1ホステスのように、勘と経験と卓越した思考力で、どんな対応が相手にとって心地良いか、高度に掴める人がいます。

しかし、そのノウハウは、やっぱり言葉で説明出来ないのです。

それが証拠に、そんな本を読んでも、No.1のサービスは出来ません。

しかし、AIは、それを、論理化出来るのです。

もう何年も前に、ドワンゴ創業者の川上量生氏が「いずれ、人間はAIとだけ付き合うようになる。AIの方がずっと性格が良いですから」と言ったのは、まさに正しいのです。

人間には、ふわっとした雰囲気でしか分からないことを、AIは数値化、理論化出来ます。

そして、その理論を応用出来るとしたら、これは、よく考えると恐ろしいことです。

例えば、AIは、人間を完璧に騙すことも可能なのです。

人間の詐欺師など、足元にも及びません。

騙す相手は重要な個人や大衆、あるいは、全人類などが考えられます。


◆AIに負けない方法

しかし、本来、人間がAIに劣るはずがありません。

AIには分からないような価値でも、人間なら分かるのです。

大脳の160億のシナプスを同時並行的に動かし、さらに、研究者によればシナプスに関係する器官を量子的に働かせるような真似がAIに出来るとは、とても思えません。

けれども、学校では、交換可能なロボットを作る教育がされ、人間の本当に重要な力を殺してしまっています。

人間のロボット的な性能(計算力や記憶力)は、大昔のコンピューターでも人間にはるかに優ります。

よって、ロボット人間ではAIに全く敵いませんので、そんなロボット人間はAIに支配されるようになります。

では、人間が持つ能力を発揮するにはどうすれば良いでしょうか?

それには、まず、偏見のない目で見、人間の優秀な知覚能力をフル回転させて経験することです。

それには、進んで体験する自主性が必要です。


◆真っ新な目で見る

FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグが初めて体験したVR(仮想現実)のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)は、モノクロで解像度も低い、今のものと比べれば貧弱なものでしたが、それでも彼は、偏見のない真っ新な状態でこれを進んで体験し、知覚能力をフル回転させることでVRの可能性に驚愕し、すぐに、VRの最先端を行っていたオキュラス社を買収します。

しかし、いかにザッカーバーグでも、自分で体験しなくては分からなかったのです。

そして、多くの人は、「VRなんて子供のゲーム機のものだろう。少しも重要ではない」と決めつけて体験しようとしません。

ところで、電話やテレビを見たことがない人間など、世界にはいくらでもいます。

そんな人達に、テレビや電話の良さを説明しても無駄です。

自分で使うしか、理解する方法はありません。

そして、そんな人達が「テレビや電話は人間を堕落させる有害で不要なものだ」と言い、積極的に試そうとしなければ、我々は、彼らを愚かだと思うでしょう。

しかし、VRを積極的に体験しようとせずに、「そんな下らないもの」と馬鹿にしている人も全く同じなのです。

見もせず、体験もせずに否定するのは、老人と相場が決まっていたはずが、戦後のロボットを作る教育のせいで、若くても(子供でも)優等生ほど、その傾向が強くなっています。ロボット人間は、教科書とテレビニュースに出ないものは価値がないと思っています(試験に出るのはその範囲までですから)。

そんな人達は、これからはAIの奴隷になるしかありません。

そうならないコツは、優等生ではない若い人達が良いと言うものを、馬鹿にしたくなるのをぐっとこらえて、自分で味わってみることです。

子供に「そんな下らないアニメ見て」と言う母親は、やっぱり時代遅れかもしれません。


以上です。

当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

誰でもAIを使って、「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの問題に挑むことが出来るよう工夫しました。
その方法を使って、あなたの会社などの問題をAIを使って解決しましょう。

実習のためのデータを作ることが出来るExcelマクロを出版社サイトから無料でダウンロード出来ます。