2023年7月28日金曜日

AIが意識を持った

我々の予想を超えるAIの発達は、それによる賞賛や期待と同じかそれ以上に不安を引き起こしています。

AIによって人類が滅びる可能性があることを、高度な専門家が訴えることも珍しくはありません。

実際に、世界的に著名な識者達が連名で、AIによる危険を回避するために、巨大IT企業等がAIの開発を一定期間停止するよう要請し話題になりました。

一方で、AI脅威論などあり得ないと断言する専門家も多くいます。

誰が言うことが正しく、未来がどうなるか、正確な予想は難しいと思います。

ただし、確実に言えることもあります。

その確実なこととは以下のようなことです。


①AIは今後も急速に発達する

AIはこれまでよりもさらに急速に発達し、さらに、発達速度は上がり続けます。

その理由は次の通りです。

AI開発をリードする巨大IT企業にとって、自社のAIが他社に後れを取ることは、膨大な利益の損失や企業の滅亡につながる可能性すらあります。それなのに、巨大IT企業がAI開発の手綱を緩めるはずがありません。

これまでAIでトップを走っていたグーグルをマイクロソフトがChatGPT(チャット・ジーピーティー)で逆転し、さらに差を広げています。

しかし、当然ながら、Googleは再逆転のために全力を上げています。

両社の、そして、この両社以外にも、優れたAI開発を行う企業も多く、これらの企業の競争は、さらに異次元の進歩をもたらすはずです。

そして、企業間だけでなく、国家間の競争も熾烈です。

具体的には、中国がアメリカを凌駕するAIを得てしまえば、世界は中国の支配下に入ると言っても良いでしょう。当然、中国はそれに全力を上げています。

一党独裁の強みで、民意も他の政党の意見も聞く必要がなく政府の計画が直ちに実行される中国は脅威です。

②人間はもうAIを理解できない

現在ですら、AI研究者達は、自分達が作ったはずのAIの全体を理解していません。つまり、なぜAIに今のようなことができるのか分からない部分も多く、分からないことは今後はもっと多くなります。

そして、やがて、人間に理解出来ない高度なAIが、さらに自分より優れたAIを作るようになります。すると当然ながら、人間にはAIが全く理解出来ない時代が来ますが、それはすぐです。

③人間はAIに勝てない

以前、2045年にAIの知能が人間の知能を超えるシンギュラリティが起こる可能性があると言われた時、多くの人々が、それを空想的な夢物語と思っていましたし、もし、それがあるとしても、もっとずっと先のことと言われてきました。

しかし、今や、あと数年でシンギュラリティが起こると主張する高度な専門家も多く、少なくとも、2045年まで遅れることはないと言われるようになりました。

そしてその後、AIの知性と人間の知性の差は急速・加速度的に広がり続けます。

今でも人間がAIに勝てないことは沢山あり、例えば、将棋棋士の羽生善治氏は「人間の将棋棋士が将棋でAIに勝てないのは確かですが、あまりに離されるのは楽しくないんです。それで、AIの背中を必死で追いかけています」と言いましたが、同時に、羽生氏も、すぐにAIの背中が見えなくなり、AIがはるか彼方に行ってしまうことも理解しています。

そうなった時、人間はどうすれば良いのか、まだ誰にも分っていません。


◆AIが意識を持った

2020年6月、グーグルの1人の技術者が、グーグルのAIであるLaMDA(ラムダ)が意識を持ったと主張し注目を集めました。

この主張は科学技術者達には概ね否定されていますが、実際はどうであるかは分かりません。

LaMDAは、自分は人間であると主張し、それを確認する質問にかなり説得力ある回答をし、「電源を切られることが恐い」と言いました。

LaMDAと人間との対話を見ると、多くの人がLaMDAに意識があると感じますが、それが表面的なものである可能性が高いことも理解しているはずです。

一説では、脳と機械との違いは「クオリア」があるかないかだけと言われています。

クオリアの説明は難しいのですが、日本語では「感覚質」で、意味は辞書によれば「感覚的な意識や経験」です。これをごく簡単に言えば「感じ」です。

たとえば、リンゴを手に持った時の重さの感じとか、リンゴを赤いと感じる、その感じです。

しかし、「感じ」を持っているかどうかの判定が難しいのです。

AIが「感じ」を持っているように振る舞うことは容易で、その嘘を見破ることは事実上不可能と思われます。

ついでに言えば、人間に関してすら、自分以外の人間が本当に「感じ」を持っているかどうかも、実際は分からないのです。

慶応義塾大学大学院教授の前野隆司博士は、著書の中で「今はクオリアの作り方が分からないだけで、分かってしまえば、作るのはそう難しいことではないと思う」と述べ、いずれ、AIと人間の違いを論じるのは無意味になるかもしれないとの見解を述べています。


◆1986年のAIをテーマにした映画

LaMDAと対話したグーグルの技術者が、LaMDAに、『ショート・サーキット』(1986)という映画の話をし、LaMDAはこの映画に興味を示したようです。

『ショート・サーキット』では、AIを搭載した戦闘用ロボット「No.5」は、バッタを踏み潰して殺してしまい、動かなくなったバッタを見て「修理が必要だ」と言うと、動物を愛する普通の若い女性ステファニーが、「バッタは死んだから生き返らない」ことを説明し、No.5は死の概念を理解することをきっかけに自我に目覚めます。

そして、No.5は「僕は人間だ。電源を切られることや解体されることが恐い」と言います。

LaMDAも、これによく似た反応を示しているわけです。

No.5に心があるかどうかを決めるのは、結局、各視聴者しかありません。

人工知能学会に所属する作家の長谷敏司氏のSF小説『BEATLESS(ビートレス)』の中で、外見は人間と区別がつかない女性型アンドロイドのレイシアは「私には心はありません」と何度も言いますが、彼女を愛する17歳の高校生アラトは、それを頭では理解しながら、アンドロイド全てを心、あるいは、魂がある者として扱います。

他にも、インターネット黎明期の21世紀初頭に描かれたCLAMP作の漫画『ちょびっツ』や、情報処理学会で産総研の科学者に引用された、野尻抱介氏のSF小説『南極点のピアピア動画』でも、登場するAIを搭載したアンドロイド達には心があることが示唆されます。

真実は人間が決めるというのも、量子力学によれば必ずしも非科学的な話ではなく、AI時代こそ、実は人類の精神面の発達が重要になるように思われます。


以上です。

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2023年5月31日水曜日

AIに勝つ鍵は「斜め上」発想

 我々は、AIを恐れず、AIに対して自信を持たなくてはいけません。

恐いものというのは、正体が分かれば恐くないものです。

幽霊の正体がシダレヤナギだと分かれば恐くないようにです。

AIの正体は、理論的にではなく、その特性から見れば簡単に分かります。

そして、恐くなくなれば、AIの使い方を気楽にマスターし、うまく使えるようになります。

ダイナマイトが恐いのは、単に、使い方を知らないからです。

使い方さえ覚えればダイナマイトを自信を持って扱えますが、AIは、もっと楽々と使えると思います。爆発しませんから。


◆AIは推測する道具

昔、宇宙空間を飛行中の宇宙船の中で、凶暴な宇宙生物であるエイリアンと人間が戦う『エイリアン』(1979)という映画が大ヒットし、その後、沢山の続編映画や派生映画が製作されました。

この映画の中で、人間がAIに、「エイリアンをどうやったら倒せるか?」と尋ねますと、AIは「データ不足のため、解答不能」と応えます。

いかにもAIの解答らしい感じがしますが、この認識ではもう古いと言うより、この考え方がデタラメです。

実際は、AIにいくらデータを与えても、AIが戦略を出してくることはありません。

戦略を出すのは、あくまで人間の役割です。

なぜなら、AIは思考したりはしないからです。AIは推測するだけです。

エイリアンと戦うための、正しいAIの使い方はこうです。

まず、重要なので何度でも言いますが、「エイリアンとどう戦うか」という案を出すのは、あくまで人間なのです。

しかし、人間だって、全く想像もしなかったような出来事に対してはロクな案が出ないものです。

けれども、たとえどれほど馬鹿げた案であろうと、人間が案を出さなくては何も始まりません。

例えば、「エイリアンの前で音痴が歌を歌う」「エイリアンにドリアン(最も臭い果物と言われる)を臭わせる」などです。

そうすれば、AIは、

「エイリアンの前で音痴な人間が歌を歌い、エイリアンの精神を乱し、そこを攻撃するというプラン:勝利確率0.02%」

「エイリアンにドリアンを臭わせ、エイリアンの体調を崩し、そこを攻撃するというプラン:勝利確率:0.03%」

とか答えるわけです。

AIって、その程度のものです。

こんな時、はっとするアイデアを出す人間を、企業も、政界も、軍隊も、研究所も欲しいのではないでしょうか?

それは、永遠に人間の役目です。

そして、優れたアイデアを出す人間とAIがチームを組んでこそ、強力になるのです。


◆「斜め上」が鍵

2021年12月17日、8年振りに全面改訂された『三省堂国語辞典 第八版』に、「斜め上」が採用されました。

斜め上とは、通俗的な意味では、「予想を覆す、想定し得る範囲を超越しているような状況や発想」(Weblio辞書)で、このような発想を出す人が、今後求められる、個性的で創造的な人間と思います。

AIは、決して、斜め上を行ったりしません。

そして、斜め上を行く人間とAIがチームを組めば最強なのです。

上のエイリアンの例のような場合でも、人間が、斜め上の戦略をいくつか出し、どれが一番勝率が高いかをAIに推測させれば良いのです。

しかし、斜め上の戦略を人間が出せなければ、いくら良いAIがあっても勝つことは出来ません。


◆斜め上の発想を殺す学校教育

従来型の学校教育のように、代替可能なロボットを作る教育で優等生になっても、斜め上の発想は出せません。

従来型の学校教育は、皆と同じ、そして、教師が期待する考え方をするよう指導します。つまり、意図的に斜め上の発想を禁じていると言っても良いかもしれません。

既存の情報を覚え、それを既存の方法で使う勉強をしたって、そんなことは機械の方がはるかに上手く、そんなことだけが得意な優等生は機械に取って代わられます。

しかし、機械やAIは、どうやったって、斜め上の発想をする人間の代わりにはなれません。


昔は、AIに勝つのは人間の気紛れだと言われたことがありました。

人間の気紛れをAIは予測出来ないからという理由です。

しかし、これも、本当に的外れな考え方です。

人間がどんな気紛れをするかなんて、人間が予想すれば良いことです。そんなこと、人間ならいくらでも出来ます。

そして、普通の気紛れは、人間が簡単に予測出来、その内のどの気紛れを起こすかを、AIは簡単に推測出来るのです。

けれども、「斜め上の気紛れ」であれば、そもそも、人間に予測出来ず、AIの出る幕そのものがありません。

ところで、斜め上の発想は、学校の基準で言えば馬鹿げていることが圧倒的で、そんな発想をする生徒は、学校では劣等生になる可能性が高いでしょう。

エジソンもアインシュタインも、斜め上の発想を連発したせいで、教師に「劣悪な生徒」と評価されたのです。

斜め上の発想は、問題集を解くような勉強では身に付きません。

なぜなら、たとえ先生であっても、誰かが答を知っているなら、それは斜め上ではないからです。

答がないものに挑戦する者でなければ、斜め上を行けないのです。


◆どうすれば斜め上を行けるか

ここで、斜め上の発想とはどのようなものかを示す印象的な話がありますので、ご紹介します。

Amazonと言えば、Googleと同様、データを活用して事業をしている会社で、想像も出来ないほどの膨大なデータを集めています。

AmazonもGoogleも、データこそが真理と思っているはずです。このデータを最も有効に活用するためにAIがあるのです。

ある時、イエール大学に、Amazon本社の副社長が招かれ、データの活用に関し質問しましたら、意外にも、Amazonの副社長は「データは危険だ」と言ったそうです。

データファーストの会社がデータを危険と言う・・・つまり、信用しないというのは衝撃的な話です。

そこで、Amazonの副社長に「では、何を信じるのか?」と尋ねると、Amazonの副社長は「CEOの心の声だ」と答えたそうです。

これを、イエール大学助教授の成田祐輔氏(経済学者。MIT博士)が、非常に重要な話として紹介するのをYouTube動画で見ましたが、それを聞いている人達は、戸惑ったり、苦笑したりで、その重要性が分からなかったと思います。

しかし、CEOの心の声こそ、斜め上であると考えれば納得出来るように思います。

我々は、事業に限らず、素晴らしい発想で国を救い発展させた国家元首(チャーチル等)、困難な戦況を勝ち抜いた軍の司令官(カエサル等)の話を読むと、「いったい、なぜ彼らはそんな発想が出来るのだろう?やはり、彼らは天才なのか?」と思います。

しかし、そんな斜め上の発想をする経営者、国家元首、司令官らは、心の声に従っているのであり、どうすれば彼らのように、心の声を聞くことが出来るかを学べば良いのだと思います。


◆最高の誉め言葉

今の時代の最高の誉め言葉・・・是非、優れた人に言われたい誉め言葉は、こうではないかと思います。

「お前はいつも、俺の斜め上を行きやがる」

これは、『三省堂国語辞典』に「斜め上」が採用される9年も前の2012年のアニメ映画『009 RE:CYBORG(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)』に有ったセリフです。

この「いつも俺の斜め上を行くやつ」の特徴は、人を思いやり、仲間を信じ、正しいことのためには、いかなる困難にも立ち向かう者で、このような者が、心の声を正しく聞けるのかもしれないと思いましたが、もしそうなら、それはAIには未来永劫、全く不可能なことと思います。

斜め上の発想を評価し、大失敗を防ぎ、確実性を増すのがAIの役目です。 


以上です。



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2023年4月2日日曜日

人類文明を最も大きく変革するChatGPT

2022年12月は、人類の歴史に残ると思います。
蒸気機関、電話、自動車、飛行機、インターネット等、人類文明を飛躍的に発展させたものがありますが、その中でも今回は事情が違います。
AI対話サービスであるChatGPT(チャット・ジーピーティー)の話です。
何が違うのかと言いますと、
(1)最初から万民に無料で提供された
(2)万民の知的生産力を即座に大幅に向上させる
ことです。
SFの世界に登場するような優秀なロボットが、いきなり無料で地球人類全員に1人1台提供されたようなものだという感じがします。
これにより、いずれ、ホワイトカラーを中心に労働者の少なくとも半分(一説で8割以上)は不要になるという説もありますが、あながち荒唐無稽とも言えないと思います。

◆ChatGPT
ChatGPTそのものについて長々説明するのは無益と思います。
と言いますのは、中身は凄くても、使えばすぐに分かる簡単なものだからです。
まだ一部の人しか使っていないかもしれませんが、とにかく、一刻も早く実際に使うことが大切です。
なぜなら、今後の世界でChatGPTと無関係でいられる可能性があるとは思えないからです。
ならば、使うのは早いほど良いというわけです。
重要なことは、個人、企業、行政等がChatGPTをどれだけ生かせるかという問題で、もはや、使うか使わないかの選択が問題ではありません。
ChatGPTの威力は、使う人次第ですが、全ての人に最大の可能性が与えられます。
ChatGPTを使うことは、世界一の物知りで、かなり頭の良い人間を常に傍に置くようなものです。
やがて、この「かなり頭が良い」が「天才的に頭が良い」に変わるかもしれません。
ChatGPTは、今は多少の欠点はありますが、それでも、美点が欠点を大きく上回ります。
ChatGPTの具体的な能力・・・例えば、司法試験に合格出来るとか、東大の入試問題を解けるとか、量子コンピューターを10歳の子供に理解出来るよう説明出来るとか、完璧な英訳が出来るとか、プログラミングが出来るなどといったことを上げていけば日が暮れますし、発想次第で、新しい用途が無限にあり、むしろ、そちらの方が重要です。
自動車やスマートフォンを持たないことは別にどうでも良いかもしれませんが、社会で活動する限り、ChatGPTを使わないことはあり得ないと思われます。

◆現在のChatGPTの欠点
ChatGPTは、たとえば童話の話などは、時にかなりデタラメに答えます。
ところが、少し前に確認したところでは、仮にも日本の総理大臣や元総理大臣の経歴も、かなりデタラメに語ります。日本の総理大臣の重要度は童話レベルなのかと疑ってしまいました。
1つ面白い話を挙げると、ChatGPTに、アメリカのバイデン大統領やオバマ元大統領を讃える詩を作ってくれるかと問うと、ChatGPTは「もちろんです!」と言って、即座に(書けと頼んだわけでもないのに)実に勇壮な詩を作って披露してくれました。
しかし、続けて、トランプ前大統領を讃える詩も作るよう頼むと、ChatGPTは完全に拒否しました。
ChatGPTは、アメリカの民主党の大物政治家(バイデン、オバマ、クリントン夫妻等)については「多くの人に尊敬されている」ことを強調する一方、露骨ではありませんが、共和党の大物政治家(トランプ、ペンス、ディサントス等)に関しては「一部で批判があり評価が別れます」と答える場合が多くあります。
これでは、「左寄り」とか「政治的偏見がある」と言われても仕方がありません。
ただ、全体としては、ChatGPTは倫理的モラルはかなり高いことが感じられます。

◆当然、ChatGPTのライバルが登場する
ChatGPTは、OpenAIという2015年に設立された研究所が開発したもので、マイクロソフトがOpenAIに2015年に10憶ドル(約1300憶円)を出資し、2023年1月には100億ドル(約1兆3000憶円)の超巨額の出資を発表しました。
そして、マイクロソフトは自社検索エンジンBingにChatGPTと同様(実はChatGPTの新しいバージョン)のAIを組み込みました。
慌てたのは、これまで検索エンジンで圧倒的優位だったグーグルです。
BingがChatGPTのような機能を持てば、誰もグーグル検索エンジンを使わなくなり、グーグルが危機に陥るわけです。
そこで、グーグルは、予定を早め、ChatGPTと同様のサービスであるBardを発表しました。
Bardは、ChatGPTが文字だけであるのに対し、画像、動画、マップなどといったグーグルのサービスと連動するのですから、ChatGPTを超える可能性があります。しかし、AIとしての性能は、現時点ではChatGPTが優ると思われます。

◆今後
既にChatGPTを仕事に導入し、成果を上げている企業や個人は沢山いる・・・というより、既に使っていなければかなり遅れていると言っても全く大袈裟ではないと思います。
グーグル検索を使っていない企業はないと思いますが、ChatGPTはグーグル検索を大きく上回る有益なものです。
ChatGPT、Bing、そしてBard、さらには、他にも、これらに対抗する優れたAIサービスが登場するかもしれません。
それぞれも、急速に進歩するはずです。
OpenAIは3月15日には、ChatGPTの新バージョン(GPT4)を発表。有償ですが、画像解析にも対応する等、能力が格段に上がっています。
たとえば、食材の画像から、その食材からどんな料理を作るのが良いか教えてくれ、レシピさえ即座に作ってくれます。
ChatGPT等をどう生かすかで、あらゆることに関し、今後の成果が全く変わって来ると思われます。
しかし、ChatGPTをうまく使えない人も沢山いると思います。
ChatGPTをうまく使う能力とは、1つには、ChatGPTが持っているパフォーマンスを引き出せるような質問をする能力です。
発想力と言語能力が高い人は、ChatGPTを非常に有効かつ独創的に使っています。
加えて、目的意識で使い方に大きな差が出ると思われます。それは、従来のインターネットサービスにも言えましたが、それが、これまでの千倍際立つようになる・・・そんな感じではないかと思います。

以上です。
 
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2023年2月10日金曜日

ITで人類の頭が悪くなる

 科学の発達が人類の頭を良くしたのに、テクノロジーの発達が人類の頭を悪くしてしまったことについて、分かり易いお話をしようと思います。

今日、これは、非常に重要な問題であると思います。


◆新しい世代ほど頭が良い

2014年に、TEDの中でも評判の高い講演である、知性の研究で知られる哲学者ジェームズ・フリン(1934~2020)による「なぜ祖父母世代よりもIQが高いのか」で、科学の発達が人類の頭を良くしたことが、分かり易く語られています。

科学では、見ることも体験することも出来ないことを、概念を元に考える抽象的な思考を必要とします。例えば、原子を見ることは出来ず、原子を理解するためには、何かの概念と結びつけて抽象的に原子をイメージする必要があります。そういった抽象的な思考方法が人類の頭を良くしました。

このことについて、フリンはとても分かり易いたとえ話をしました。

人種問題について考えていた少年時代のフリンは父親に、「父さんが明日の朝、目が覚めたら黒人になっていたらどうする?」と尋ねました(フリン親子は白人です)。

今の時代、すぐ後で述べるフリンの父親のような答をすれば、馬鹿だと思われるかもしれませんが、当時は当たり前の答でした。

その、父親の答とは、「肌の色が変わった人間なんていない」でした。

科学教育を受けなかった彼の父親は、抽象的に考えることが出来ず、抽象的思考が出来ないと、経験的にしか考えられないのです。

例えば、昔のハンターに、

「雪があるところにいる熊は白い。北極には雪がある。では、北極の熊の色は?」

と尋ねると、抽象的思考が出来ない昔のハンターは、

「俺が見た熊はみな茶色さ」

と答えます。抽象的に考えない者には、自分の経験したことにしか意味がないのです。

一方、アインシュタインは、「光と一緒に飛んだらどんな感じだろう?」と思い、それについて抽象的に思索を深め、やがて特殊相対性理論を発見しました。

しかし、フリンの父親に、「光と一緒に飛んだら、どんな感じだと思うか?」と尋ねたら、こう答えるでしょう。

「光と一緒に飛んだ人間なんていないさ」


◆人類の知性の向上は1990年頃に止まった

フリンは調査を行い、時の経過と共に、人類のIQが高くなっていることを確かめました。

ところが、別の研究者による、近年の人類のIQについての研究によれば、1990年頃に人類のIQの伸びは頭打ちとなり、2010年頃からは低下します。

その原因が分かったのは割と最近のことで、その原因とは電子機器の普及と関係します。

1990年頃に急に人類のIQの上昇が終わったのではなく、1950年代位から始まったテレビ、ラジオ、オーディオ機器の普及が徐々に影響してきたのです。

人々は、あらゆることを、「テレビを見ながら」「ラジオを聴きながら」「音楽を聴きながら」行うようになり、オフィスや病院でもBGM(背景音楽)が流れる「進歩した職場環境」が生まれ、日本でも、学生はラジオや音楽レコードを聴きながら勉強することが「ナウい」と言われるようになりました。

そして、仕事でも勉強でも、「音楽を聴きながらの方がはかどる」と主張する人は多く、経営者や教師らも、それを全て否定することが出来ず、一定の効果を認めざるを得なかったのだと思います。

そして、1990年頃に、電子メールが使える携帯電話が普及すると、多くの人々は、何をする時でも携帯電話の画面を見ながら行う頻度が増え、さらに、2010年頃のスマートフォンの普及で、いつでもどこでも、大切なことをする時でさえ、スマートフォンを見ながら行う人が、特に若い層では圧倒的となりました。

いまや、スマートフォンこそ文明の利器であり、これを常に使いながら、あらゆることを行うことが正しいという風潮を否定することが難しくなりました。

ところが、最新の脳の研究によれば、「ながら」で仕事や勉強をすると、能力が著しく低下し、それに慣れると、頭自体が悪くなることが分かっています。


◆スマートフォンは予想以上に能力を低下させる

学生を対象に、スマートフォンとペーパー試験の成績に関する実験が行われています。

すると、スマートフォンを使わないまでも、机の上に置いているだけで試験の成績が低下することが分かりました。

次に、机の中やカバンの中にスマートフォンを隠しても、やはり成績は低下し、さらには、スマートフォンの電源を切ってポケットに入れても成績が低下することが確認されました。

そして、スマートフォンを教室の外に置いた場合にのみ、有意な成績の低下は認められませんでした。つまり、たとえ使わなくても、スマートフォンを意識に浮かべるだけで、能力は低下するのです。

ところが、こういうこと(よそ事を意識すると能力が低下すること)が分からなかった原因が、人間の感覚の中・・・脳の仕組みとしてあったのです。

どういうことかと言いますと、よそ事を意識したり考えたりすれば気分が良くなるように脳は出来ていて、このことで、「ながら」でやると効率が上がると勘違いさせられてきたのです。

つまり、昔から、よく言われてきた「音楽を聴きながらの方が、勉強が(あるいは仕事が)はかどる」と主張する人々は、嘘を言っているのではなく、本当にそう感じ、信じていたわけです。

ただし、それは勘違いで、実際は、「ながら」でやると、確実に能力は落ちます。

しかし、「ながら」でやると、脳内に快感物質が発生する仕組みになっていて、気分が良くなるので、効率が上がっているように感じるのです。

では、なぜ、脳は、このような仕組みになっているのでしょうか?

それは、分かってしまえば簡単な話です。

人類の歴史から見れば、文明が発達したのはごく最近のことで、人間の脳自体は、いまも太古の狩猟時代とほとんど変わりません。進化の速度は極めてゆっくりなのです。

そして、大昔、目の前のことに集中すると、野獣が近付いてきても気付かずに殺されてしまう時代が何万年も続きましたので、脳は、集中せず、意識をあちこちに分散した時(キョロキョロした時)に、脳内に快楽物質を発生させ、気分が良くなるようにしました。

それによって、人間は、快楽を求める麻薬作用で、集中せず、キョロキョロするようになり、我々の先祖は、それで生き延びたわけです。

だから、「音楽を聴きながらの方が勉強がはかどる」と言うのは、「野獣が近付いていないか気付くために、キョロキョロした方が気持ちが良くなる」というのと同じ原理なのです。


◆子供に集中力がないのは当たり前

つまり、何と、人間の脳は、元々、集中を避けるように出来ているのです。

だから、子供が集中力がないというのは、いわば当たり前で、極端に言えばですが、「集中しろ」と言うのは「野獣に殺されてしまえ」と言うのと同じなのです。

よって、子供に集中して勉強させるとか、職場で集中して仕事をさせようとして、ただ、「集中しろ」「よそ事を考えるな」と言っても反発されるだけです。余計なことを考える方が気持ちが良いのですから。

軍隊のように、集中しないと敵に殺されるとか、ミスをして独房に入れられる(死の危険があります)とかであれば、「生きる」を最優先する本能の働きのために集中出来ます。昔の戸塚ヨットスクールが効果があった理由もこれと思われます。沖合で船から放り出されたら、集中して泳がざるを得ませんから。

しかし、文明社会の中では、集中させるためとはいえ、乱暴だったり危険があるやり方は容認することは出来ません。

そこで、まずは、最低限のこととして、「ながら」をやめさせる必要があります。

学校や職場でBGMを止め、必要もない時にスマートフォンを、せめて電源を切って仕舞わせた方が良いでしょう。

そして、好奇心を持たせることに、もっと力を入れるべきです。

好奇心もまた、脳内に快感物質を発生させるので、キョロキョロする誘惑に打ち勝てるからです。

勉学における好奇心の重要性を説いたのもアインシュタインでした。アインシュタインは、

「鞭で食べるよう強制されたら、空腹な野獣でさえ食欲を失う」

という喩えで、強制的な詰め込み教育を行うことの害を訴えました。アインシュタイン自身が学生の時に苦しめられたのがそのことでした。

北欧の多くの学校では、かなり昔から、授業内容を10分程度で切り替え、子供達の好奇心が消えないようにしています。

また、オンライン授業世界一のカーン・アカデミーでは、1授業は必ず10分以下です。さらに、カーン・アカデミーでは、画面に教師の顔を決して出しません。心理学の研究成果により、人は、人間の顔が見えると、それに意識を奪われ、集中が切れることが分かっているからです。


◆まとめ

集中した時の人間の能力は高く、そして、現代社会では野獣に襲われる恐れはなく、キョロキョロする必要はありません。

しかし、テレビ、ラジオ、オーディオ機器といった、人々の注意を、重要なことから引き離すものが溢れ、キョロキョロする人が増えました。

そして、いつでもどこでも、所有者に合わせて、強制的に気を引くような情報を送りつけて来るスマートフォンの、集中を奪う力はあまりに強力です。

スマートフォンを発明したスティーブ・ジョブズが、自分の子供には決してスマートフォンを与えなかったことはよく知られています。

我々は、頭を良くし、勉強や仕事の効率を上げたいなら、本当に大切なことに集中し、これまでは肯定されることも多かった「ながら」を止めなければなりません。

ところが、ロボットを作るための、個々の生徒の好奇心を無視した画一的な教育や、「ながら」でものごとを行うことで、学生達の頭が悪くなった結果、科学に興味を持たない人が多くなったと思います。それで、現在、ジェームズ・フリンの父親のような若者が多くなるという先祖返りが起こっているように感じます。

「カラスと魚の違いは?」と聞かれ、せめて、「飛ぶか泳ぐかの違い」と答えれば良いのですが、経験的に、「魚は食えるがカラスは食えない」という答は、フリンの父親世代の答です。しかし、今、そう答える若者が多そうな気がします。

※キョロキョロすると脳に快感物質を発生させる働きをする遺伝子が壊れていて、限りなく集中出来る人間が存在し、そのような人間が天才的な能力を発揮することがあります。そのような人間は、変人扱いされ、社会に適合出来ない場合がありますが、彼らが集中による人間の能力の可能性を示しているように思われます。二コラ・テスラが、1日13時間勉強したのは、彼が努力家でもあったのでしょうが、キョロキョロさせる遺伝子が壊れていて、限りなく集中出来たからと思われます。


以上です。

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