2024年1月11日木曜日

下火になるChatGPT

予想に反してChatGPT(チャット・ジーピーティー)の利用が大きく減少してきています。

もちろん、ChatGPTはいまや企業、大学等では必要不可欠なツールになっており、活用方法もどんどん広がっています。

しかし、全体としての利用率は大きく下がっています。

つまり、一般の人が使わなくなっているのだと思います。

少し前、ChatGPTの大躍進に対し、グーグルは、それによってグーグル検索エンジンが利用されなくなることへの危機感を隠しませんでした。

ところが、グーグル検索エンジンの利用率はほとんど変わりませんでした。

この大方の予想を裏切る展開の意味は何でしょう?


◆プロンプトを作れない人達

ChatGPTは普通の会話の調子で、高度なAIに質問や命令が出来ることにインパクトがありましたが、ChatGPTに有意義なことをさせるには、どんな形の回答を得たいのかとか、何をしてほしいのかを具体的に示す必要があります。

そのような、AIに指示を出す命令文を「プロンプト」と言いますが、プロンプトエンジニアリングという言葉があることで予想出来る通り、ちゃんとしたプロンプトを作ることは結構難しいのです。

プロンプトに明確な目的が表現されていなければ、いくら優秀なAIでも有益な回答や処理ができません。

ただ、こういった難点に関しては、ChatGPTを開発したOpenAIに巨額の出資をし、事実上ChatGPTを支配下に置いているマイクロソフトも考えていたと思われ、先手を打って対策しています。次項でそれについて述べます。


◆Bingチャット

ChatGPTには、無償版のChatGPT3.5と有償版のChatGPT4があります。

ChatGPT3.5でもかなり高性能ですが、ChatGPT4は全く別物と言えるほどさらに優秀です。しかし、ChatGPT4を使うには、月額20ドル(約2800円)必要です。

普通の人が月20ドルも出してChatGPT4を使うことはあまりないと思います。

ところが、ChatGPT3.5はインターネット上の2021年9月以前のデータしか収集しておらず、それもあってかなり嘘の回答もします。

ところが、マイクロソフトのブラウザであるEdge(エッジ)に組み込まれたBing(ビーイング)チャットというAIチャットは、無料で使えるのに中身は実はChatGPT4です。

さらに、このBingチャットに対しプロンプトを出して指示をしますと、Bingチャットは、そのプロンプトに不足しているプロンプトを作って提案してきたり、プロンプトを改良するためのヒントや質問を提示します。

それに対し、ユーザーは選択をしたり、簡単な質問に答えれば、より良いプロンプトをBingチャット自身が作るという便利さです。

これは、プロンプトを作る能力の養成を阻害しますが、ユーザーは便利なものを選ぶものです。

その他にも、Bingチャットには便利な機能があり、結果、人々はBingチャットを使うようになり、ChatGPTをますます使わなくなったのかもしれません。

教訓は、人間は結局は楽な方に流れるということです。


◆グーグルBard(バード)

グーグルも以前から、ChatGPTのようなチャット型AIを開発していましたが、OpenAIが予想を超える早さで驚異的な性能のChatGPTを公開したことで、グーグルは焦り、予定を前倒ししてグーグルのチャット型AIであるBard(バード)の開発に力を注ぎ、2023年3月にBardの試験運用版をリリースします。

ChatGPTと違い、Bardは音声会話に対応し、世界中の人々が利用しているグーグルの多くのサービスとも連携しますが、現時点では、AIとしての性能でChatGPTにかなり劣ります。

ところが、最初に述べた通り、ChatGPTが下火になります。

グーグルが最も危険視したことは、ChatGPTが、グーグルの主要コンテンツであるグーグル検索エンジンにとって代わることでした。

正確に言えば、ChatGPT4を搭載したBingチャットを組み込んだBing検索エンジンがグーグル検索エンジンのシェアを奪うことを心配していたのですが、結局、ユーザーは単純な検索エンジンを単体で使うことを好むことが分かりました。

すると、グーグルは当初の計画であったグーグル検索にBardを組み込むことを中止する動きさえ見せています。

検索エンジンとしては、現時点では、グーグル検索エンジンはBing検索エンジンより優秀で人気があります。


◆今後の教育

ただの検索であればグーグル検索エンジンを使えば良いのです。

一方、ChatGPTのような対話型AIは、目的を持って何かを作ったり、複雑な問題を解決するのに適しています。問題は、それをする必要がない、あるいは、それをする能力がない人が多いということです。

これまでの教育では、こういったことをする能力を育てることができないと思われます。

これまでの教育は、生徒全員が、教師が知っている1つの解答を当てることが目的の、取り換えの効くロボットを育てる教育という面が大きかったと思います。

しかし、AIを活用し、大きな成果を上げるためには、自主性、創造性、独創性が必要です。

今後の教育では、何を学ぶかは生徒が自分で決めるようになり、オンライン教育やAI教師の発達で、学びたいことをいつでも効果的に学べるようになると思われます。

ただ、新しいものの導入が遅れがちな日本の教育界がそれに対応できるのかはやや疑問です。


以上です。


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