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2020年3月25日水曜日

AIを自分の手で作ろう

少し前から、極めて高度なレベルの討議において、
「そう遠くなく、AIは人類の知性をはるかに超え、そんなAIがもし人類を不都合な存在として排除しようとしたら、能力の差から、人類に対抗手段がない」
と警告が発せられることがありますが、そんな警告を表明する者の中には、オックスフォード大学の、あらゆる学問に通じた天才哲学者ニック・ボストロム、時代を超えた事業家イーロン・マスク、マイクロソフト創業者で世界一の大富豪ビル・ゲイツ、さらには、神に最も近い知性を持つとまで言われた物理学者スティーブン・ホーキングら、人類トップクラスの頭脳の持ち主達も含まれます。
一方、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグや、元MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏など、「そんなことはあり得ない」と断言する人達もいます。

◆AI自体が脅威なのか?
ただ、最近はTEDでのスピーチを聞いても、この問題に対し、当を得た見解を述べる人が多くなったと感じます。
これらの人々の趣意は、一致する方向にあるように思います。
それらのスピーチの主旨を簡単に言うと、こんな感じと思います。

現在のAIは確かに驚異的なテクノロジーですが、本当の問題は、例えば原子力のように、権力者達が、それを使って間違いを犯すことです。
既に、AIを使って、権力を独占したり、人々を監視し、自由を奪うようなことが行われつつあるように思われます。AIには、それを可能にする力があります。

そこで、ブロックチェーンのように、強大なテクノロジーは、特定の権力者ではなく、全ての人が管理するようにしなくてはならないのだと思います。

◆AIは本当に人間を超えるか
現在のコンピューターを構成しているシリコンチップは原子の大きさに近付き、原子より小さくは出来ませんので、やがて性能の限界が訪れます。
しかし、これに関しては、シンギュラリティの提唱者であるレイ・カーツワイルは、「昔、真空管がトランジスタに変わったように、現在のLSIに代わる新しいテクノロジが出来るはず」と述べ、その「新しいもの」の候補の1つが、三次元分子コンピューターだと言います。
しかしこれはまだまだ、研究段階のテクノロジーです。
量子コンピューターは、今は適用範囲はそれほど広くありませんし、安価になったとはいえ億円単位で、大がかりな設備も必要です。
とはいえ、いつかは、現在のコンピューターとは根本的に構造が異なる、比較にならないほど高性能のコンピューターが登場することは間違いありません。
しかし、それでAIが人間を超えると考えるのは早計と思います。

◆優秀な人がなぜ間違う
なぜ、ビル・ゲイツやイーロン・マスクのような極めて優秀な人達が、AI自体が人類の脅威になるなどと考えるのでしょう?
AIが人間の知性を超えると言う人達は、自分の手でAIを作ったことがないのだと思います。
確かに、人間の脳の推測性能を超えるコンピューターは今でも作れるかもしれませんが、AIを自分で作ってみれば、AI自体が人類を征服しようなどとは決して思わないシロモノであることが分かります。
実際、AIの能力は、ある面では恐るべきものです。
しかし、AIは小学生でも出来る素数の判定すら出来ないのです。
つまり、AIは非常に優秀な面がある反面、子供にも(ひょっとしたらチンパンジーにも)及ばない部分も少なくないのです。
本当に危険なのは、上でも述べた通り、AIを自分の利益のために使おうとする権力者なのです。

◆AIは誰でも作れる
今や、AIを自分で作ることは難しいことではありません。
しかし、イーロン・マスクのような、極端に時間単価の高い人がやるには向いてないことでもあります。
その理由は、まず、AIを作るには、試行錯誤が必要で時間がかかることがあります。
ビル・ゲイツやイーロン・マスクらが、そんな作業をする場面は想像が出来ません。
しかし、AIを本当に理解し、権力者によるAIの悪用を阻止するためにも、多くの人々に自分でAIを作っていただきたいのですが、ほとんどのAIの本は難しく、普通の人には歯が立ちません。
そこで、筆者が、誰でもAIを作る方法を教える本を書きましたので、それを活用願えればと思います(※)。

◆自分でやってみることの大切さ
DIY(Do It Yourself)という世界的に有名なスローガンがあります。
「何でも自分でやろう」という意味です。
第二次世界大戦でナチス・ドイツに破壊された街を、ロンドン市民が自分達の手で復興させようとした時に、このポリシーを掲げました。
これが大きなムーブメントを起こして、やがて全ヨーロッパに、そして、アメリカに、さらに世界中に広がりました。
そして現在、専門家に金を払ってやらせていたこと(製作や修理等)を、「自分でやる」心構えを持つことの価値が見直されています。
それは、単にコスト削減のためだけでなく、新しい創造性を発揮することにつながったり、プロにとっても、これまで見落としてきた重要なものを発見する機会になります。
そもそも、ビル・ゲイツがパソコンを世界的に普及させた時のポリシーがまさに、「大学や大企業の専門家だけが使えるコンピューターを誰もが使えるようにしよう」だったはずです。
イーロン・マスクも、ビル・ゲイツも、若い頃は自分で熱心にプログラミングをしましたが、巨大な事業を営む彼らには、そんな時間がなくなってしまい、少し大切なことを忘れてしまったのではないかと思います。

以上です。

※『楽しいAI体験から始める機械学習』(技術評論社)2020年4月出版予定

3 件のコメント:

  1. 『楽しいAI体験から始める機械学習』楽しみにしています。購入する予定です。

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  2. ★ひろみきさん
    このブログへの最初のコメント、ありがとうございます。
    書籍の件もありがとうございます。
    よろしくお願いいたします。

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  3. 最初のコメントだったんですね。嬉しいです。Kayさんの「ITスペシャリストが語る芸術」は数年前から毎日拝見しており、そのつながりでこちらのブログも知りました。仕事がWebのマーケターで、AIにもとても興味がありますので、Kayさんの新刊で学ばせていただきたく思っております。

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