とは言っても、それは、石で叩いて何かを砕いたり、棒で突っつくといった程度のものです。
特に賢いチンパンジーは、木の棒の余分な枝を除いたり、石を加工したという話もありますが、陸上動物では人間に次ぐ発達した脳を持つチンパンジーでもそこまでです。
◆人間はなぜ道具を作ったのか
人類の最も古い道具は、映画『2001年宇宙の旅』では、こん棒でした。もちろん、正確なことではないでしょうが、だいたい、そんなものだったと思われます。
ところで、道具とは何かと言いますと、全て、「自己の能力を拡張するもの」であると言えると思います。
上の『2001年宇宙の旅』では、こん棒で自己の攻撃力を拡張した旧人類は、周囲の旧人類達を暴力で圧倒しました。
また、人間の歯や爪は、あまり強力ではなく、硬いものを切れませんので、人間は石器を作り、もっと固いものが切れるよう銅器を作り、さらに、鉄器へと進歩させました。
そして、人間は、あまり速く、そして、長時間走れないので、馬を走る道具とし、さらに、もっと楽に乗れるよう馬車を作り、やがて、鉄道列車や自動車を作ります。
飛行機に関しても、純粋に飛びたいというよりは、速くスムーズに移動したいと思って発明したのではないかと思います。
このように、人間は、人間の裸の能力に不満を感じたので、その能力を高めるために道具を作ったのだと思います。
◆深刻に欲しい能力
ところで、かなり昔から、人間が持ってはいるが、その能力が低いことを賢い人達は認識していた能力があります。
それは、「予測力」です。
トーマス・フリードマンは、ただのジャーナリストなのですが、彼は、度々、ホワイトハウスで大統領と話し合っていました。
その他にも、彼は、超大企業のCEOや億万長者の大投資家、アラブの石油王達とも、度々、誘われて会談をしました。
なぜ、フリードマンがそれほどの大物達に「モテる」のかと言いますと、彼が高い予測能力を持っていたからです。
フリードマンは、政治、国際問題、戦争、科学など、広い範囲に渡り、鋭い予測力を発揮しました。
ニューヨークタイムズ等、世界中のメディアでよく引用された、こんなジョークがあります。
「平均的な専門家の予測の正確さは、チンパンジーが投げるダーツとだいたい同じ」
これは、誰かが口から出まかせで言ったのではなく、ペンシルべニア大学教授、フィリップ・テトロックが、1984年から2004年まで20年の間、大変な労苦をかけて詳細に研究した結果、出した結論です。
つまり、専門家の予測なんて、「チンパンジーが投げるダーツ」程度のいい加減なものなので、フリードマンのような「それなりに本当に当たる」予測能力を持った人は非常に貴重なのですが、そんな人は滅多にいないようなのです。
昔から、歴史に名を残すような大政治家や大将軍、あるいは、大事業家達が、評判の高い占い師を、秘密裏に高給で雇っているというのは、風説もあるでしょうが、実際に確認されている例も多くあるようです(そんな事実を調査した研究者の著作もあります)。
それほど、責任重き立場の人達は、正確な予測力を欲しているのだということです。
◆予測力を得るコストが下がった
それなら、正しい推測をする道具を作れば良いのですが、そんなものをどうやったら作れるのか、最近まで皆目見当が付きませんでした。
1960年代から行われている、コンピューター・シミュレーションも、予測を目的としています。
しかし、簡単なことならともかく、コンピューター・シミュレーションで複雑な予測をしようとしますと、膨大な労力や予算がかかりますが、実際には、それほど正確な予測は得られません。
ところが、近年、ビッグデータという、正確な予測が期待出来る、待望の手法が出来ました。
実際、ビッグデータは驚異的に正確な予測をすることがあります。
しかし、これを使えるのは、膨大なデータと高度な設備、そして、優れたデータサイエンティストを擁する一部の企業だけです。
ところが、1950年代から研究が進められてきたAIの分野で、2006年頃に「ディープラーニング」という手法が発明され、これがAIに取り入れられることで状況が一変します。
最初は、ディープラーニング型AIを使うことは難しいことでしたが、これを簡単に使う方法が急速に発達しました。
そして今や、ディープラーニング型AIは、誰でも使え、これによって高度な予測が出来るようになりました。
実際、ディープラーニング型AIは、未来の技術ではなく、もう「枯れている技術」とまで言う専門家すらおり、目端の利く企業は、規模の大きさに関係なく、既に導入し、活用しています。
これを使うか使わないかで、持てる予測力は比較になりませんが、予測力がどれほど重要なものであるかは上に述べた通りです。
以上です。
当ブログオーナー、KayのAI書籍。 AIを自分で作れるようになることは、今後の世界でとても重要になると思います。 しかし、我々は、そのために、無限の時間を割く訳にはいきません。 自動車を運転出来れば便利ですが、運転を習得するために膨大な時間や費用をかける訳にいかないのと同じです。 実用的なAIを作るために、数学もプログラミングも難しいAI理論も不要です。 そして、技術オタク、数学オタク、プログラミングマニアでなくても分かる普通のテーマを普通の言葉で説明することでAIツールの使い方が分かるようにしました。 応用編においても、類書に見られる退屈なものではなく、興味深く感じるテーマを選びました。 ただし、それが成功しているかどうかを決めるのは読者ですが。 |
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