2022年7月31日日曜日

AIが全てを監視する世界

 2010年にGDP(国内総生産)で日本を抜き、世界第2位になった中国は、いずれ、現在は圧倒的な1位であるアメリカ合衆国を抜き、世界一の経済大国になると言われています。

ところが、中国の政治経済の隠れた深刻な問題を指摘し、中国の成長が止まる、あるいは、破綻するとさえ言う政治学者や経済評論家等もいますが、現実には、中国は直実な経済成長を続けており(コロナ禍でもプラス成長でした)、軍事力の拡大も顕著です。

一党独裁制の社会主義国家である中国では、民意を問う必要がなく、政府の決定は直ちに実行されますので、指導者が優秀であれば、効果的な政策を、何者にも妨げられず実行出来、進歩はとても早いのです。

そして、中国の指導者は優秀で、早い時期からITの重要性を深く理解し、全力を上げて高度なITの導入を進め、今や中国は強大なデジタル国家と化しています。


◆膨大な監視カメラは何のためにあるか

今日、日本でも、多くの場所に監視カメラが設置されています。もちろん、それは、会社や店舗等の内部あるいは周辺といった、妥当性が感じられる場所であることがほとんどです。

ところが、中国では、どこにでも・・・それこそ、「何のためにこんな所に?」と思うほどの場所にも監視カメラが設置されています。

これを当局(中国の事実上の独裁政党である中国共産党の人民管理部)による国民の監視と捉えるのは、半分正解ですが、それだけでは、重要なポイントを見逃しています。

アメリカや日本等の民主主義国家では、政策の実施には国民の賛同が必要で、例えば、日本政府が、原爆を持つことが必要と判断しても、民意が得られなければ、原爆を持つことは出来ません。

民主主義国家では、平和で強い国とは、政府と国民が信頼し合い、国民の声が政治に反映される国であると考え、それを実現するのが選挙であり、選挙こそが、国民が政治に参加することであると言われます。

ところが、選挙のない社会主義国家である中国が、ITの高度な活用で民主主義国家を超えたのではないかと思われます。

それには、AI(人工知能)が大きな役割を果たしています。

中国の監視カメラは、監視目的だけではなく、AIの活用のためにあります。

監視カメラにより国民のあらゆるデータを収集し、このデータに対し、AIが分析を行えば、国民のコントロールだけではなく、政策の決定・実施のための重要な手がかりが得られることを、中国の指導者は理解しています。

つまり、現在の中国国民のあらゆる属性を明確に把握出来、どうすれば国民を効率的に管理し、そして、動かせるかが分かるのです。

一方、民主主義国家では、選挙によって選ばれた政治家の公約が国民の民意と了解され、選挙こそが政治に民意を反映させる方法であると考えられています。

けれども、選挙で選ばれた政治家が必ずしも公約を守るとは限りません。

また、国民が、あまり公約を理解したり、重要視せず、単に有名人だからという理由で投票することが多くあります。

一方、中国では国民投票の選挙はありませんが、AIは選挙よりも正確に民意を推測出来、それを政府は有効に利用します。

つまり、中国では、国民は知らないうちに、政府の都合の良いように政治に参加させられていると言えます。

中国は、AIの活用により、「選挙に参加することが政治に参加することである」と言う民主主義を笑うほどのレベルに来ているのかもしれません。


◆シンガポール

独裁制は、効率においては、民主制を上回ることは中国の例でも分かります。

その利点を生かして発展したのがシンガポールです。

十年近くも前に、当時既に世界的に注目されていた日本のデジタルソリューション企業であるチームラボが、シンガポールでの大イベントに参加した後で、先進的な思想・理念を持つことでも知られているチームラボ社長の猪子寿之氏が、「世界で最も格好良い都市は、ニューヨークでも東京でもなく、シンガポール市(建前上の首都。シンガポールは1つの都市国家であるため、実際は首都はない)だ」と断言しましたが、実際、シンガポール市の人々の収入は、ニューヨーク、東京を超え、シンガポール(国家)の1人当たり国内総生産(GDP)は世界2位です。

そして重要なことは、シンガポールは建前上、民主主義国家ですが、『準独裁政治体制』と言われ、実質では、中国に近いと思われます。

シンガポールもまた、独裁政治のメリットを十分に生かし、そして、強いIT指向があるという点でも中国と似ています。


◆イーグル・アイ

IT技術がますます発展するこれからの社会や政治がどうなるかを理解するために、是非見ておくべきアメリカ映画があります。

それは、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮の2008年の映画『イーグル・アイ』です。

スピルバーグ作品としては地味で、スピルバーグの他の作品と比べ興行収入もそれほどではないのですが、まだスマートフォンが普及していない時代に、AIが管理する未来社会の様子を現実的に描いています。

全米中のあらゆる場所に設置された監視カメラから得られる映像・音声をAIが収集・分析し、さらに、機密情報を含む最大限の情報にアクセス出来る高度AIは、国家の状況を完全に把握しつつ、未来に起こることを高精度で予測し、リスクを事前に察知して、最適な問題解決策を提示します。

ある時、アメリカ合衆国を管理する最高位のAIである「アリア」は、アメリカの軍隊のトップ、即ち、最高司令官である大統領、そして、副大統領、国防長官らを、アメリカの安全にとってリスクと判断し、彼らを抹殺する「ギロチン計画」をホワイトハウスとは独立した米国組織に提示し、合衆国憲法に則って実行の承認を得ます。

注意すべきことは、これが、一部のSF小説にありがちな、AIが偏見を持っているとか、AIが一部の権力者の都合で動いているのではないということです。

本当にAIの判断は正しく、アメリカのトップの抹殺は、アメリカのために良いことであるという論理性や根拠があるのです。

そして、あらゆる機械がインターネットに接続された世界で、それらの機械(一般的にはIoTと呼ばれます)を自在に利用出来るアリアの実行能力は強大です。

これらは、現代のテクノロジーで十分に起こり得ると思われます。

この作品を見てから、中国のことを考えると、我々は未来世界を予測出来ますが、ディストピア(ユートピアの反対。暗黒郷)を招くことも予想出来るのです。

『イーグル・アイ』の最後では、「安全のための過ぎたシステムはかえって安全を脅かす」と述べます。


以上です。

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