2022年11月21日月曜日

メタバースと脳内チップ

 昨年(2021年)10月28日、マイクソロソフトを除くITの世界トップ企業4社を示す“GAFA ”  の一角であるフェイスブックが社名をメタ・プラットフォームズ(以下、「メタ」と略します)に変更しましたが、それにより、このメタという社名が意味する「メタバース」の重要性がますます認識されてきたと思います。

メタバースとは、オンライン上に構築されたVR(仮想現実)空間、あるいはそのサービスのことです。

そのようなサービスは、既に数多く存在しますが、メタは、全力を傾け、メタバースの覇権を目指すはずです。

それほど、これからの世界で、メタバースが重要なものだからです。

今回は、メタバース時代に備え、メタバースの中心的な技術であるVR(仮想現実)に関する興味深い話をします。


◆VR(仮想現実)

2017年8月に出版された、元・日本マイクソフト社長の成毛眞氏の著書『理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件』(朝日新聞出版社)で、こんなことが書かれていました。

「最近でいえば、VRを体験しているかいないかは大きな違いだ」

この言葉には、「いまだVRを体験していない人はかなりまずい(時代に置いていかれる)」というニュアンスが含まれていると考えられます。これがもう4年以上、前のことです。

VRを体験するとは、現代では、ほぼ、VR用HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を頭に装着して何かを行うことを意味します。

しかし、では何を行うのかというと、今のところ、大半がゲームで、その他のコンテンツも若者向けのものがほとんどですので、VRを体験しているのは若者が圧倒的です。

メタバースはVRと共にあるものですので、メタバースに取り組むには、VRに馴染んでいることが有利というか、必須かもしれません。

とはいえ、ゲーム以外の「大人の用途」としては、例えば、オンラインのVR空間で会議を行うといった会社は、進歩的と言うよりは、遊び心がある会社といった感じかもしれません。

ところが、2020年10月に、メタが開発した(正しくはメタが買収したOculus社が開発した)「Oculus Quest 2(オキュラス・ クエスト・ツー)」という、高性能ながら、安価なHMDが発売されたことで状況が変わってきました。

Ocullus Quest 2は、人気があったOculus Questの後継機ですが、Oculus Questと違い、パソコンを必要とせず単独で使用出来、軽量で使い勝手も格段に良くなり、これで、HMDの普及が大きく進むと思われます。


◆メタが目指すもの

メタがまず目指すのは、メタが運営する世界最大のSNSであるFacebookのメタバース化です。

メタバース化されたSNSは、既にもういくつか存在しますが、Facebookをユーザーに支持される形でメタバース化することで、Facebookが最大のメタバースSNSになる可能性が高いでしょう。

そこでメタは、手始めに、Facebook内で比較的簡易なメタバースを提供し、Facdebookユーザーをメタバースに慣れさせようとするでしょう。例えば、企業が簡単に、メタバース内でリモート会議をするデモンストレーションをメタは公開しています。

実用的な用途として、教育分野では、教師と生徒がメタバース内で授業を行うことも簡単に出来るようになります。

しかし、これらはあくまでプロローグ(序章)であり、メタの計画はもっともっと壮大なものです。


◆フルダイブ型メタバース

メタが目指すメタバースは、この世界と全く同等の仮想世界の構築と、その中で人々が、現実世界のように活動出来るようにすることです。

簡単に言えば、デジタルの新しい世界を作ることです。

丁度、SF映画の『マトリックス』のような世界です。

夢のような話ですが、メタは本気で実現を目指していると思わます。

ところで、『マトリックス』シリーズの第1作『マトリックス』は、実に1999年、つまり、20世紀の作品です。

テクノロジーの進歩が急速化している現代でも、あれから20年以上も経つのに、いまだ『マトリックス』の世界は全く実現出来ていません。

『マトリックス』の世界と現代のVRの違いは何でしょう?

現代のVRは、HMDをつけた、視覚と聴覚だけの仮想世界です。なるほど、初めてHMDでVRを体験した人は、そのリアリティ(現実感)に感動することがよくあります。

とはいえ、現代のVRは、やはり、視覚と聴覚だけのものですので、やがて慣れ、そして、飽きるのです。

一方、『マトリックス』の世界は、五感全てで感じる仮想世界で、自分が現実世界に居るのか仮想世界に居るのか区別がつきません。喩えて言えば、鮮明な夢の中にいるようなものです。

五感全てで仮想世界に没入する技術をフルダイブ技術と言い、そのような世界に入ることを「フルダイブする」と言います。

そして、フルダイブしようと思ったら、脳とコンピューターを直接接続するしかありません。

『マトリックス』でも、そのようにしていました。

『マトリックス』では、仮想世界にフルダイブする人間の首の後ろに、コンピューターとの接続コネクターがあり、そこにコンピューターのケーブルを接続します。この場合、脳から首の後ろにかけて外科手術をして首のコネクターで接続出来るようにしているはずです。

しかし、現代でも、そんな手術が出来るほど脳の研究は進んではいませんし、仮に可能だとしても、正直、誰もそんな手術を受けたくないはずです。

ところが、そんな恐ろしい外科手術をせず、脳にチップを埋め込むだけで(それでもやりたくない人が多いでしょうが)、脳とコンピューターを接続することを実現しようとしているのが、イーロン・マスクが設立しCEOを務めるニューラリンク社です。ニューラリンク社では、猿を使った動物実験では、かなりの成果を上げているようです。しかし、人間で実験を行うとなると、倫理的規制が大きく立ちはだかります。


◆脳に取り付ける装置の人々の認識

脳に機械を取り付けて脳の力を拡張したり、あるいは、脳に機械を取り付けられた人間の心をコントロールするという発想は、かなり昔からあります。

現実的にも、脳神経と記憶装置を接続し、脳の記憶力を増大させる研究がMITメディアラボで行われているという話があります。

ただ、こういった研究が進むためには、一般の人々の理解を得ることも必要なのですが、一般の人々の、この分野の認識や理解は遅れています。

例えば、有名なSF作家だった平井和正氏原作の1963年の漫画『エイトマン』で、サイバーという名のAI(人工知能)が人類の征服を始め、サイバーは人間の脳に直径数センチの球体の装置を手術で取り付けて、その人間を操るというものがありましたが、現代人の多くは、脳に取り付ける装置に関して、まだ、そんなイメージを持っているのだと思います。

ところが、その『エイトマン』の続編の2004年の漫画『エイトマン・インフィニティ』では、AIサイバーが再び登場し、今度は、マイクロマシン(マイクロミニサイズの微小機械)を人間の首の後ろから注射器で血管に入れ、血流に乗って脳に到達したマイクロマシンが、血液中の金属成分やタンパク質を使って、脳をコントロールするチップを形成するというふうに進歩しています。

実際は、脳は、異物を中に入れない強固な防御機能を持っていますが、マイクロマシンより小さなナノマシンを脳内物質に擬態させて脳内に進入させる技術が研究されていますので、手術せずに脳内にチップを形成することも可能になるかもしれません。

一方、世界的に人気がある日本のSF小説・アニメの『ソードアート・オンライン』(2009~)では、頭にかぶった装置が、電磁波により脳のシナプスと量子的に共鳴することで、仮想世界にフルダイブしますが、今のところ、これは不可能です。

もし、このように、外部からの電磁波だけで脳をコントロール出来るなら、中国あたりが、人工衛星から、人間を支配する電磁波を送信しようとするでしょう。ただし、これも、いずれは可能にならないとも限りません(陰謀論かもしれませんが、既に可能であるという説もあります)。

今のところは、イーロン・マスクのニューラリンク社は、外科手術で脳に埋め込むチップにより、思考だけで外部装置を操作したり、脳で直接、インターネットに接続したり、また、脳にチップを埋め込んだ者同士が、テレパシーのように会話すること等を目指しています。

メタが、この分野に参入する可能性もあり、メタやイーロン・マスクなら可能と思われますが、1兆円も研究につぎ込めば、フルダイブ技術が急速に進歩するのではと言われています。

ただ、アメリカや日本のように人体実験を行うのが難しい国ではなく、人体実験を平気でやれる独裁国家が、アメリカの優秀な研究者を大金で雇い、先に完成させる可能性があります。


メタバースが未来を決める大きな鍵であることは確かと思います。

実際、世界はメタバースに飲み込まれつつあると述べる科学技術者、社会学者、経済学者も増えているように思われます。


以上です。

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