我々は、AIを恐れず、AIに対して自信を持たなくてはいけません。
恐いものというのは、正体が分かれば恐くないものです。
幽霊の正体がシダレヤナギだと分かれば恐くないようにです。
AIの正体は、理論的にではなく、その特性から見れば簡単に分かります。
そして、恐くなくなれば、AIの使い方を気楽にマスターし、うまく使えるようになります。
ダイナマイトが恐いのは、単に、使い方を知らないからです。
使い方さえ覚えればダイナマイトを自信を持って扱えますが、AIは、もっと楽々と使えると思います。爆発しませんから。
◆AIは推測する道具
昔、宇宙空間を飛行中の宇宙船の中で、凶暴な宇宙生物であるエイリアンと人間が戦う『エイリアン』(1979)という映画が大ヒットし、その後、沢山の続編映画や派生映画が製作されました。
この映画の中で、人間がAIに、「エイリアンをどうやったら倒せるか?」と尋ねますと、AIは「データ不足のため、解答不能」と応えます。
いかにもAIの解答らしい感じがしますが、この認識ではもう古いと言うより、この考え方がデタラメです。
実際は、AIにいくらデータを与えても、AIが戦略を出してくることはありません。
戦略を出すのは、あくまで人間の役割です。
なぜなら、AIは思考したりはしないからです。AIは推測するだけです。
エイリアンと戦うための、正しいAIの使い方はこうです。
まず、重要なので何度でも言いますが、「エイリアンとどう戦うか」という案を出すのは、あくまで人間なのです。
しかし、人間だって、全く想像もしなかったような出来事に対してはロクな案が出ないものです。
けれども、たとえどれほど馬鹿げた案であろうと、人間が案を出さなくては何も始まりません。
例えば、「エイリアンの前で音痴が歌を歌う」「エイリアンにドリアン(最も臭い果物と言われる)を臭わせる」などです。
そうすれば、AIは、
「エイリアンの前で音痴な人間が歌を歌い、エイリアンの精神を乱し、そこを攻撃するというプラン:勝利確率0.02%」
「エイリアンにドリアンを臭わせ、エイリアンの体調を崩し、そこを攻撃するというプラン:勝利確率:0.03%」
とか答えるわけです。
AIって、その程度のものです。
こんな時、はっとするアイデアを出す人間を、企業も、政界も、軍隊も、研究所も欲しいのではないでしょうか?
それは、永遠に人間の役目です。
そして、優れたアイデアを出す人間とAIがチームを組んでこそ、強力になるのです。
◆「斜め上」が鍵
2021年12月17日、8年振りに全面改訂された『三省堂国語辞典 第八版』に、「斜め上」が採用されました。
斜め上とは、通俗的な意味では、「予想を覆す、想定し得る範囲を超越しているような状況や発想」(Weblio辞書)で、このような発想を出す人が、今後求められる、個性的で創造的な人間と思います。
AIは、決して、斜め上を行ったりしません。
そして、斜め上を行く人間とAIがチームを組めば最強なのです。
上のエイリアンの例のような場合でも、人間が、斜め上の戦略をいくつか出し、どれが一番勝率が高いかをAIに推測させれば良いのです。
しかし、斜め上の戦略を人間が出せなければ、いくら良いAIがあっても勝つことは出来ません。
◆斜め上の発想を殺す学校教育
従来型の学校教育のように、代替可能なロボットを作る教育で優等生になっても、斜め上の発想は出せません。
従来型の学校教育は、皆と同じ、そして、教師が期待する考え方をするよう指導します。つまり、意図的に斜め上の発想を禁じていると言っても良いかもしれません。
既存の情報を覚え、それを既存の方法で使う勉強をしたって、そんなことは機械の方がはるかに上手く、そんなことだけが得意な優等生は機械に取って代わられます。
しかし、機械やAIは、どうやったって、斜め上の発想をする人間の代わりにはなれません。
昔は、AIに勝つのは人間の気紛れだと言われたことがありました。
人間の気紛れをAIは予測出来ないからという理由です。
しかし、これも、本当に的外れな考え方です。
人間がどんな気紛れをするかなんて、人間が予想すれば良いことです。そんなこと、人間ならいくらでも出来ます。
そして、普通の気紛れは、人間が簡単に予測出来、その内のどの気紛れを起こすかを、AIは簡単に推測出来るのです。
けれども、「斜め上の気紛れ」であれば、そもそも、人間に予測出来ず、AIの出る幕そのものがありません。
ところで、斜め上の発想は、学校の基準で言えば馬鹿げていることが圧倒的で、そんな発想をする生徒は、学校では劣等生になる可能性が高いでしょう。
エジソンもアインシュタインも、斜め上の発想を連発したせいで、教師に「劣悪な生徒」と評価されたのです。
斜め上の発想は、問題集を解くような勉強では身に付きません。
なぜなら、たとえ先生であっても、誰かが答を知っているなら、それは斜め上ではないからです。
答がないものに挑戦する者でなければ、斜め上を行けないのです。
◆どうすれば斜め上を行けるか
ここで、斜め上の発想とはどのようなものかを示す印象的な話がありますので、ご紹介します。
Amazonと言えば、Googleと同様、データを活用して事業をしている会社で、想像も出来ないほどの膨大なデータを集めています。
AmazonもGoogleも、データこそが真理と思っているはずです。このデータを最も有効に活用するためにAIがあるのです。
ある時、イエール大学に、Amazon本社の副社長が招かれ、データの活用に関し質問しましたら、意外にも、Amazonの副社長は「データは危険だ」と言ったそうです。
データファーストの会社がデータを危険と言う・・・つまり、信用しないというのは衝撃的な話です。
そこで、Amazonの副社長に「では、何を信じるのか?」と尋ねると、Amazonの副社長は「CEOの心の声だ」と答えたそうです。
これを、イエール大学助教授の成田祐輔氏(経済学者。MIT博士)が、非常に重要な話として紹介するのをYouTube動画で見ましたが、それを聞いている人達は、戸惑ったり、苦笑したりで、その重要性が分からなかったと思います。
しかし、CEOの心の声こそ、斜め上であると考えれば納得出来るように思います。
我々は、事業に限らず、素晴らしい発想で国を救い発展させた国家元首(チャーチル等)、困難な戦況を勝ち抜いた軍の司令官(カエサル等)の話を読むと、「いったい、なぜ彼らはそんな発想が出来るのだろう?やはり、彼らは天才なのか?」と思います。
しかし、そんな斜め上の発想をする経営者、国家元首、司令官らは、心の声に従っているのであり、どうすれば彼らのように、心の声を聞くことが出来るかを学べば良いのだと思います。
◆最高の誉め言葉
今の時代の最高の誉め言葉・・・是非、優れた人に言われたい誉め言葉は、こうではないかと思います。
「お前はいつも、俺の斜め上を行きやがる」
これは、『三省堂国語辞典』に「斜め上」が採用される9年も前の2012年のアニメ映画『009 RE:CYBORG(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)』に有ったセリフです。
この「いつも俺の斜め上を行くやつ」の特徴は、人を思いやり、仲間を信じ、正しいことのためには、いかなる困難にも立ち向かう者で、このような者が、心の声を正しく聞けるのかもしれないと思いましたが、もしそうなら、それはAIには未来永劫、全く不可能なことと思います。
斜め上の発想を評価し、大失敗を防ぎ、確実性を増すのがAIの役目です。
以上です。
当ブログオーナー、KayのAI書籍です。 誰でもAIを使って、「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの問題に挑むことが出来るよう工夫しました。 その方法を使って、あなたの会社などの問題をAIを使って解決しましょう。 実習のためのデータを作ることが出来るExcelマクロを出版社サイトから無料でダウンロード出来ます。 |
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