2026年5月1日金曜日

IT巨人達の失敗から考える未来

 ※2023年10月25日執筆

ITの世界は、同じような失敗が何度も繰り返されているというお話をしようと思います。

GAFAM(グーグル、アップル、メタ※旧フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)すら、同じ失敗で、凋落する可能性があると思います。

キーワードは「他をナメると衰退する」です。


◆IBMの凋落

1911年に創業されたIBMは、長くコンピューターの世界を支配する圧倒的な巨人でした。

そんなコンピューター世界の転機は1970年代のパソコン(パーソナルコンピューター)の発展でした。

ところが当初、IBMはパソコンをコンピューターとは見なさず、おもちゃのようなものだと見なしてナメていました。

そんな中、大学を中退したばかりのスティーブ・ジョブズが自宅のガレージで始めたアップルがパソコン製造販売で成功したことを含め、パソコン市場が急成長します。

そんなパソコン市場の急激な拡大により、ついにIBMがパソコン市場参入を宣言します。

これで、パソコン市場もIBMが奪っていくと思われました。

しかし、その後起こったことは興味深いものでした。

アップルの売り上げは、落ちるどころか新記録を更新し続けました。

一方、この時でもIBMはパソコンをナメており、自社の最優秀な人材をパソコン分野に回さず、全く社外の二十歳そこそこだったビル・ゲイツや西和彦の設計を採用し、現在に至るも世界最多の特許保有数を誇るIBMがパソコンに関しては法的に大らかな方針を取ります。

それで何が起こったのかと言いますと、IBMのパソコンであるIBM-PCの互換機(中身が同じパソコン)を作る企業が沢山現れました。

これまで、政府、一流大学、大企業といった、言い値で買う客を相手にビジネスをしていたIBMには製造効率の概念があまりなかったのに対し、IBM-PCの互換機製造メーカーは効率的な製造ラインを開発し、IBMよりはるかに安価な金額で販売できました。

さらに、IBMは手痛いミスを犯します。

IBM-PCのOS(オペレーションシステム)を開発したマイクロソフトのビル・ゲイツは、そのOSであるMS-DOSをIBMに売らず、ライセンス供与とし、売れたのがIBM-PCだろうが、その互換機だろうが1台に1つのMS-DOSが売れ、マイクロソフトが収益を上げ続けるのに対し、IBM-PCは売れず、その互換機ばかりが売れ、IBMは全く儲かりませんでした。

さらに、小型・中型コンピューターの性能向上により、IBMの大型コンピュータの販売も不振になり、IBMはかつての威光を失っていきます。


◆アップルの凋落

パソコンの黎明期はアップルの天下でした。

しかし、今度はアップルがIBM-PCとその互換機をナメていました。

ビジネス用途を強く意識したIBM-PCの互換機が売り上げを伸ばし、相対的にアップルの業績が下降する中、アップルのCEOであるスティーブ・ジョブズはゼロックス社と共同で、当時としては先進的なウインドウズタイプのパソコンであるLisa(リサ)を開発し、意気揚々と市場に送り出しましたが、先進的ではあっても、ビジネスの役に立たず、そして、高価なLisaは全く売れませんでした。

アップルは慌てて、ジョブズを無視し、Lisaを簡易化し安価にしたマッキントッシュパソコン(MAC-PC)を発売し、デザイン分野での用途の優位性をアピールし、一定の人気を得ましたが、業績は低下し続け、ジョブズはアップルを追われます。


◆マイクロソフト帝国の躍進と凋落

アップルが凋落し、IBM-PC互換機がパソコン市場を席捲する中、IBMは互換機メーカーに売上を奪われたのに対し、OSや重要なソフトウェアを提供するマイクロソフトは巨大になる一方のパソコン市場を支配し、CEOのビル・ゲイツは全米一、そして、世界一の富豪になります。

IBMがパソコンをナメさえしなければ、アップルがIBM-PCをナメさえしなければ、その立場はIBMかアップルのものでした。

痛い教訓を得たIBMは、1980年代終わり頃に、ビル・ゲイツに対し、次世代OSであるOS/2をIBMとマイクロソフトで共同開発して利益を折半することを強行に提案し、ゲイツにそれを飲ませます。

しかし、鳴り物入りでデビューしたOS/2は、高機能ではあっても、その分、動作が遅く、IBMらしい堅苦しさのため人気が出ませんでした。

そんな中、ゲイツは「あくまでOS/2へのつなぎ」という言い訳をしてWindowsという、軽快に動き使い易いOSを単独開発し、このWindowsが大ヒットし、現在にいたるもパソコンOSの圧倒的主流となっています。

IBMとジョブズの失敗の共通点は同じで、機能が高ければ評価されると思っていたのと違い、一部のマニアックなユーザーを除き、一般ユーザーは軽快で使い易いことを好むのです。

いずれにしても、またしてもゲイツにしてやられたIBMは、ついにマイクロソフトと決裂します。

しかし、今度はマイクロソフトに危機がやってきます。

1990年代の半ば頃までは、ゲイツはインターネットをナメていました。こんなものが普及するとは思わなかったのです。

それで、マイクロソフトのインターネットへの取り組みが遅れました。

その後、ようやくインターネットの重要性を受け入れたゲイツは上場前のグーグルに破格の条件で買収を提案しましたが、グーグルのラリー・ペイジは「ゲイツは時代遅れ」と嫌い、買収を拒否します。

ところで、インターネットは、アップルを追われたジョブズが得意な「面白くて便利なことが重要」な世界を作ります。

ついにジョブズ復活の時がやってきたのです。

ジョブズは一度追われたアップルに請われ、CEOとして復帰します。

ジョブズはビジネス用途を無視し、クールで面白い小型端末を開発し、それを最大に生かせるインターネット音楽配信サービスを開始して大成功します。

そして、ついに2007年、アップルはスマートフォンのiPhone(アイフォン)を発売し、これが驚異的なヒットとなり、これにより音楽配信サービスもさらに業績を上げ、その他のメディアサービスもことごとに成功します。

グーグルもすぐに続き、Android(アンドロイド)スマートフォンが登場します。

そして、iPhone用アプリをアップルが、Android用アプリをグーグルが完全支配するプラットフォーム独占ビジネスで、現在にいたるも両社は莫大な収益を上げ続けます。

さらに面白いことが起こります。

ビジネス用途に関心がなかったジョブズが作ったiPhoneなどのモバイル端末が、逆にビジネスの新しい形態を作っていくという意外なことが起こり、ますますアップルは発展します。

一方で、ゲイツは、いつまでもスマートフォンによるモバイルコンピューティングをナメていました。

ゲイツは、キーボードが付いたパソコンこそITの主流であると疑いませんでした。

後にゲイツ本人が、「スマートフォンの可能性が分からず、社内の最優秀な人材をこれに注ぎ込まなかった」と自分の失敗を認めています。

これは、自分が若い時に打倒したIBMと同じ間違いではないかと思います。

ゲイツの後を継いだCEOスティーブ・バルマーも「スマートフォンなどすぐに廃れる」と言い、マイクロソフトは時代に取り残され、凋落していきました。


◆次はGAFAMの凋落か?

一度落ちかけたマイクロソフトですが、ユーザーに向き合うサービスとクラウド事業で生まれ変わり、さらに、AIの覇権を虎視眈々と狙って投資を続け、ついに、時価総額世界一の座に返り咲きます。

ところで、時価総額と言えば、ある異変が起こっています。

上位をGAFAMが独占する中で、2023年9月は、アマゾンに続きエヌビディアが5位でした。

十年前なら、エヌビディアという企業名を知るのは、パソコンゲームの熱心なファンくらいでした。

パソコンで高度なゲームをするには、普通のパソコンだけでは駄目で、パソコンのグラフィック処理を強化するグラフィックボードが必要です。エヌビディアは、このグラフィックボードのメーカーです。

グラフィックボードの正式な名称はGPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)で、現在でもCPU(セントラル・プロセシング・ユニット)と間違う人が多いというより、そもそも、GPUという名称を知らない人が大半でしょう。

エヌビディアのGPUは昔から性能が優れており、ゲームマニアはこの高価なGPUをパソコンに組み込むことを必須と心得ていました。

ゲームと言えば、ソニーのプレイステーションや任天堂スイッチ、マイクロソフトX-BOXが普及する中で、なぜパソコン用GPUを作るエヌビディアのGPUがかくも発展したのでしょうか?

(上記のゲーム機は主にAMD社のGPUを搭載。次期スイッチはようやくエヌビディア製を採用)

面白いことに、AIの処理にGPUが使われるからです。

グラフィック処理とAIの処理は同じベクトル演算が使われるのですが、GPUとはベクトル演算に特化したプロセッサです。

GAFAMも現在、AIに最大の力を注ぎ、他にも、ChatGPTを開発したことで世界的に知られるようになったOpenAIや、その他のAIの新興企業が現れていますが、AIを動かすには高性能なGPUを必要とし、これらのAI企業は高価なGPUを我々に想像も出来ないほどの量を買い続けています。

こうなれば、エヌビディアが儲からないはずがないことが分かると思います。

どんなAIの時代になっても、GPUが必要ということに変わりはありません。

そして、逆に言えば、これほどGPUが求められるということは、世界はAI化に突き進んでおり、AIをベースにした世界に急速に変わるということです。

もちろん、他の半導体メーカーも高性能GPUの開発を進めていますが、長年、ゲームで培ったエヌビディアのリードは大きいものです。

そのAI世界であるWeb3の世界では、これまでと同じではGAFAMすら生き残れません。

実際に、その兆候も見え始め、GAFAMもまた、変化しなければ生き残れません。

Web3の世界では、GAFAMが支配していたそれぞれのテリトリーを飛び越えることが可能で、GAFAMの支配が弱まります。

ユーザーは、必要なサービスが得られれば、それをグーグルから受けようが、アップルから受けようが、その他から受けようがどうでもよくなるのです。また、GAFAMのそれぞれの企業単独ではできなかったサービスも現れます。

GAFAMは、それぞれの分野で国を超えて市場を独占していたことで傲慢になり、Web3をナメている証拠がかなり見られます。

GAFAMがIBMのように下降したままか、アップルやマイクロソフトのように変身して生き残るかが注目されます。


以上です。