2026年5月30日土曜日

不要になる職業(教師編)

2024年1月執筆

2023年にOpenAIの対話型AIであるChatGPTが世界を席巻し、負けてはいられないGoogleは、ChatGPTと同じ対話型AIであるBard(バード)を発表しました。

そして、さらにGoogleは2023年12月、新AIのGemini(ジェミニ、あるいはジェミナイ)を発表し、その性能は多くの部分でChatGPTを超えると言われています。

(BardとGeminiの関係がすっきりしないのですが、GeminiはBardから使え、普通の人にはGeminiとBardは一体化したものと考えて良いと思います)

仮に、ChatGPTがGeminiに劣っても、ChatGPTも次期バージョンが控えていますし、他社からも優れたAIが登場する可能性があります。

つまり、AIは、まだまだ進歩するということで、限界は見えません。

その中で、AIの現状とGeminiの素晴らしさを実感出来る学校の授業の話をします。

AIの発達で不要になる職業があると言われますが、教師もそうであるかもしれません。


◆カーン・アカデミーの成功

AIの発達以前のITにより教育革命を起こしたカーン・アカデミーは、教育の専門家ではない投資アナリストのサルマン・カーンが作ったものです。

カーンは、従来の教育法の欠点を解決することで成功しました。その欠点と解決法は次の通りです。

・従来の教育は1つのことを1回だけ教え、その1回で理解し損ねた子供は見捨てられることが多くありました。そこで、カーンは、何回でも見ることが出来る録画ビデオの授業を採用しました。

・教室や一般オンライン授業では、生徒は必ず教師の顔を見せられます。しかし、教師の顔は生徒の注意を過剰に奪うことが分かりました。そこで、カーン・アカデミーの学習ビデオでは教師の顔はなく、手だけが現れます。脳科学的にも手を見せることは学習効果を高めるという信憑性の高い研究があります。

・生徒が学習に集中出来るのは10分までです。カーン・アカデミーの授業ビデオは全て10分以下です。

・従来の教育は科目ごとに分けて教えますが、必要なら一緒に教えることが効果的であることが分かり、カーン・アカデミーではそれを採用しました。


AIを使うまでもなく、カーン・アカデミーはITで学習効果を大きく上げることが出来たわけです。

そして、AIにより、さらに大きな成果を期待出来ます。

カーン・アカデミーは、教師は不要とは言いませんが、なくても何とかなることを示しました。

そして、AIでいよいよ教師は不要になるかもしれません。


◆小テストの有効性

AI研究者のピーター・ノーヴィグは、自身のスタンフォード大学の講義を一般公開する際、カーン・アカデミーを参考にし、講義時間は6分以内で2分のものもあり、映像は紙に手書きする動画だけで、「居酒屋で頭の良い友人に教わっている」雰囲気を目指したと言います。

しかし、授業を効果的に進めるには小テストによるチェックが必要であることを良い教師はよく知っています。

そこで、ノーヴィグは小テスト問題を作り、生徒には期限内の答案提出を義務付けました。

ここで問題になるのは、小テストを解けない生徒のケアです。

これに関して、ノーヴィグは専用のSNSを設置することで解決しました。つまり、生徒同士で教え合うのですが、それは教師が質問に答えるより良い成果が出ました。

この時点で、教師はほとんど不要と思われました。

ただし、小さな教室では、教師が小テストを通じ、生徒に手厚いサポートをする効果はやはり大きいことが分かっています。

そこで、いよいよAIの登場です。


◆Geminiのテスト添削(書き加えや削除を含む修正や指導)能力

最初に紹介したGoogleの新AIであるGeminiを、テストの添削に導入すればどうなるかの実験が行われました。

紙に印刷されたテスト問題に、生徒が手書きで回答した数学の答案用紙を使いました。

生徒の解答の正誤判定だけでなく、途中経過の評価が必要ですし、証明問題もあります。

生徒が書いた文字は癖があり、人間でも読み難いものがありました。

しかし、答案用紙をスキャンしてGeminiに渡すと、Geminiは正確な正誤判定や採点だけでなく、途中経過や証明問題の解答のどの部分が間違っているかを指摘し、その間違いを正しく修正し、その詳細な解説も用意しました。

さらに、もし生徒が、AIの解説が理解できない場合、生徒自身がどこが分からないかを普通の言葉で伝えれば、それに対してGeminiが解説することはもちろん、生徒が何が分からないのかをGeminiが複数推測し、生徒がその中から選択するだけで、それに沿った新しい解説を行います。

そして、驚くべきことは、Geminiは、小学校から高度な専門分野のテストまで、添削するために、何の準備もいらないことです。

Geminiを導入すれば、誰でも即座に、そんなことが出来るのです。

さらに、生徒好みの姿と音声で応対してくれるアバター教師を作ることは現在の技術でも可能で、これをGeminiと組み合わせることが可能になります。すると、生徒は好きなタイプの教師に1対1で教わることが出来、学習が楽しいものになります。


◆実務への応用

上記のように、AIのテストの添削の能力は驚くべきものですが、テストであれば、正解があります。

もっと高度なレベルの問題では、解答がなく、そんな問題に対し、人間は専門家を中心とした人々が協力して解答を探します。

そんな能力でもAIが人間を引き離した時、いよいよ人間が不要になる可能性が高まりますが、それは、そう遠くない時期に実現すると考える研究者が多くなっています。

解答のない問題を解決するためには想像力が必要ですが、AIが想像力を持つことは可能と考えられています。

人間の想像力の仕組みも分かってきています。そして、それはAIが十分に持ち得る能力であると予想されていて、さらに、AIは人間より高い想像力を持つ可能性が十分にあります。


以上です。

2026年5月11日月曜日

強まる巨大IT企業の世界支配

※2023 年12月執筆

昔から日本では「お客様は神様です」という言葉が根付いていると思います。

アメリカでは、さすがに神様とは言いませんが、それでも「お客様が正しい」という理念はあると聞きます。

しかし、IT時代には、お客様の定義が相当変わってきているように思います。


◆アマゾン利用者はお客様か?

現在、世界中の人がアマゾンで買い物をしています。

その理由は、圧倒的に便利だからです。

あらゆる商品が豊富に揃い、売れ筋商品の大半は、翌日、あるいは、当日に届き、配送料は基本無料です。

さらに、珍しい商品も簡単に検索して見つけることができます。

ところで、アマゾンで買い物をする人がアマゾンのお客様であるかというと、従来の「お客様」という意味では違うと思います。

アマゾンは、買い物客、販売事業者、配送会社を取り持つプラットホームを提供しているだけです。

そのプラットホームがあまりに優れているから、世界中の人がアマゾンで買い物をするわけです。

そして、買い物客は、アマゾンの、その素晴らしいプラットホームを無料で利用させてもらっているのです。


◆なくては生きていけないグーグルサービス

グーグルの数多くの素晴らしいサービスの大半は無料です。

たとえば、Gmail(電子メール)、グーグル検索、グーグルドライブ(大容量ストレージサービス)、グーグルマップ、グーグルアシスタント(AI)、さらには、ChatGPTに対抗するAIサービスであるBard等々、全て無料です。

本来は、これらのサービスのいずれも、利用料が高額でも当たり前なほどの高機能で高品質なサービスです。

そして、今や、グーグルのサービスを使わなければ、仕事も生活も出来ないという人が多くなっています。

野口悠紀雄氏(経済学者。イエール大学経済学博士。元大蔵省官僚。元東大教授)は、ある日、通信障害でグーグルサービスが使えなかった時、絶望的な気分になったとX(旧ツイッター)で告白していました。

グーグルの収益の大半は広告であり、お金は企業から取っていますが、グーグルのサービスが無料である1つの大きな理由は、グーグルはサービスを利用するユーザーのデータを得るという目的があるからです。

このデータが、広告において大きな力になります。また、広告以外にも、様々な使い道があります。

いずれにしろ、アマゾンの場合以上に、我々がグーグルのお客様であるとは言えません。


◆ビッグテック(巨大IT企業)はユーザーの行動を制限する

もし、アマゾンに気に入らない部分があっても、我々はアマゾンの利用をやめることは考えられません。

これほど便利なものの代わりがないからです。

買い物だけなら楽天でもできますが、アマゾンビデオなど付属する圧倒的なサービスは、一度使うとやめられません。

そして、上でも述べました通り、グーグルのサービスはそれ以上に現代人が必要としています。

Gmailといった電子メールは、LINE等の普及により、使わない人が多くなっています。

しかし、Gmailアカウントで利用できる膨大なサービスは、もはや現代人には必要不可欠になっています。そもそも、世界で最も普及しているAndroidスマートフォンではGmailアカウントが事実上必須です。

ここまでくれば、グーグルは企業ではなく、国家に相当するところがあり、考え方によってはそれ以上の力を持っています。

たとえば、誰かに対して、グーグルがグーグルアカウントを取り上げても、誰も文句は言えません。

グーグルアカウントを取り上げられることは、人権を取り上げられるに近い感覚があると思う人が多いと思います。

これが国であれば、まだ世論に訴えることができますが、グーグル相手ではそれが難しいのです。

たとえば、グーグルドライブに不道徳な画像を、単に保管目的でアップロードしても、グーグルがアカウントを停止したという話があります。

これはどういうことか、少し考えるべきと思います。

つまり、何が不道徳であるかは、法律でも裁判所でも世論でもなくグーグルが決めるのです。

道徳などの問題に関して、よく話題になるのがグーグル傘下にあるYouTube(動画投稿サービス)です。

YouTubeは、事実上、テレビなど、あらゆるメディアを超える世界最大の情報メディアと言えると思います。

YouTubeはグーグルアカウントを持っていれば誰でも、視聴はもちろん、投稿もできます。

投稿には広告が付けられ、それによって投稿者は広告料を得ることができ、動画の再生数が多ければ収入も大きくなり、かなり高額な収入を得ている投稿者もおり、これで生計を立てている人もいます。そんな人達が、現在の若者が憧れる職業の1つであるユーチューバー(YouTuber)です。

ところが、動画の内容が規定に反していれば、グーグルにより、動画が削除されたり、さらには、アカウントを一時停止されたり、取り消しになることすらあります。

確かに、サービス提供者には規定を決める権利がありますが、YouTubeでは、規定に反しているかどうかの判断も完全にグーグルが決めます。

さらにいえば、規定に同意できなくても、グーグルはそんな意見を聞く必要はありません。

夕ーチューバーが、アカウントを取り消され、不意に収入を失うことになっても、ユーチューバーは全く反論できません。

同じ動画が、YouTubeでは規定違反として削除されても、ニコニコ動画やX(旧ツイッター)では何の問題もないことはよくあります。

たとえば、よく知られているものでは、新型コロナウイルスに関するワクチンや薬品問題、2020年米国大統領選挙の不正問題、J.F.ケネディ暗殺問題などは、話題にしてはならない、あるいは、してはならなかった時期があります。

高い評価を得ていて、支持者も多いユーチューバーが、アカウント永久停止となり、YouTubeから排除されたこともあります。ただし、多くの場合、ニコニコ動画やXでは全く何の問題もないのです。

YouTube以外のことに関しても、グーグルには絶対的な権利があり、ユーザーはそれに従わざるをえません。しかも、ユーザーは、それが気に入らないからサービスを使わないという選択ができません。


これらから考え、巨大IT企業には人々の思想を統制する力がすでにあり、巨大IT企業の善意に人類の運命がかかっているのではないかと思われることがあります。

そして、AIの進化によりその力はさらに大きくなります。

どういうことかと言いますと、AIは個々の人間を監視できるようになり、巨大IT企業やそのスポンサー企業の利益に反する人物に対し、圧力を加えることが現実的に可能であるかもしれませんし、それが既に行われていると言う人もいます。


以上です。

2026年5月5日火曜日

誰もがプログラミングをする必要があるか?

※ 2023年11月執筆

誰もがプログラミングをする必要はないということをなるべく根拠を持って説明しようと思います。

たしなみのために少しはピアノを習っておくのはまだ良いかもしれませんが、プログラミングはそうではないと思います。


◆「全ての人がプログラミングを」とそそのかす勢力

10年ほど前、頻繁に、「全ての人がプログラミングを学ぶべき」ということが世界中で喧伝されていたと思います。

当時の米国大統領だったバラク・オバマが「全てのアメリカ人がプログラミングを学んで欲しい」と演説し、アメリカの巨大IT企業が共同で世界的な無料プログラミング教育サービスプロジェクトを起ち上げ、多くの国の学校がプログラミング教育を導入し、日本の学校もそれに倣った感があります。

現在もそれが継続していますが、人間のプログラミングの適性に関し、いろいろなことが分かってきました。


◆名門大コンピューター学科の学生の6割がプログラミングができない

イギリスのミドルセックス大学で書かれた「ふたこぶラクダ」という論文が一頃有名になりました。この論文は現在は取り下げられていますが、興味深い内容でした。

ミドルセックス大学はコンピューター分野で高い評価を受けている大学です。

その大学のコンピューター学科の学生にプログラミングを教えたところ、満足にマスターできたのは4割だったと言います。

この大学のコンピューター学科に入学する学生ですから、コンピューターに興味があり、頭脳もそれなりに優秀であると思われますが、6割はマスターできなかったのです。

どんな科目の勉強でも、できる子とできない子はいますし、それは楽器演奏やスポーツ等でも同様です。

ところが、プログラミング言語Rubyの開発者として世界的に知られる技術者のまつもとひろゆき氏が、学校でのプログラミング教育について、それどころではないことを言っていました。

「プログラミングは、能力の差が極端過ぎ、評価ができないのではないか?」

これは、できる子は素晴らしい能力を発揮するが、一方、できない子は全くできないということです。

他の学科では、これほどの極端なことは起こらないと思います。

国語や算数では、頑張れば誰でもそれなりの結果が出ますが、プログラミングでは、頑張ってもさっぱり駄目なこともあり得ます。

なぜそんなことになるのでしょう?


◆IT企業経営者の本音

人の想いは、堅苦しい改まったインタビューより、YouTubeでの気楽な話の方が本音が現れるものと思います。

ある時、ドワンゴ創業者として有名でカドカワ取締役(筆頭株主)の川上量生氏がYouTubeの中でこんな話をしていました。

「企業って本音では(学歴が高い社員ではなく)地頭がいい社員が欲しいんです」

川上氏はドワンゴで自ら、優秀な人材を採用していました。

また、川上氏は著書の中でこんなことを書いています。

「プログラミングは地頭が良ければ誰でもできるんです」

地頭とは、純粋な頭の良さです。地頭はIQ(知能指数)と完全に同じとは言えないまでも、相関はかなりあると思います。

つまり、IQが高ければプログラミングは誰でもできるというのと同時に、IQが高くなければプログラミングができないということです。

マイクロソフトCEO時代のビル・ゲイツも、

「プログラミング能力は純粋なIQです。IQにより極端な成果の差が出ます」

と言っていました。プログラミング能力が生命のマイクロソフトを長く率いたゲイツの言葉には信憑性があります。

また、筆者は、日米の沢山のIT企業に関わった国際ITコンサルタントにこう言われたことがあります。

「プログラマーの能力はIQだけですよ」


◆IQのタブー

これで1つの結論を見た思いがします。

最初の「ふたこぶラクダ」の論文で、なぜ4割の学生しかプログラミングがマスターできなかったのかというと、上位4割のIQがプログラミングの適正があるというだけのことです。

コンピューター学科の大学生の平均IQは全ての国民のIQよりいくらか高く、少なくとも105以上と考えて良いと思います。そのうちの4割ですから、正確ではありませんが115以上程度のIQがそれに該当すると思われます。

すると、プログラミングはIQ115以上でないとマスターできないと思われますが、これは立場ある人が軽々しく言えることではありません。なぜなら、IQが遺伝的に決まるという考え方が今でも優勢で、IQに触れることは差別的と捉えられがちだからです。

しかし、近年の研究では、IQはある程度は遺伝で決まるとしても、後天的に伸ばすことができるという説が有力と思います。


◆AIがプログラミングをする時代

抵抗がある言い方かもしれませんが、プログラミングをマスターするIQ(推定115以上)がなければ、実りのないプログラミングの勉強に時間をかけず、もっと自分に向いたことにエネルギーと時間を注ぐべきと思います。

また、ChatGPTなどのAIが高度なプログラミングを行えることは知られており、ますます、人間がプログラミングをする必要がなくなります。

今のところ、AIにプログラミングをさせるには、プログラミングが出来る人がAIに指示をする必要があります。

しかし、いずれは、プログラミングができない人でも、AIに実用的なプログラミングをさせることができるようになるでしょう。

人間は、もっと、自分の好きなこと、自分に向いたこと、そして、本当に必要な勉強をするべきであるし、実際にアメリカでは教育も含め、そのような流れが起こっていると思われます(学校以外で学習を行う「アンスクーリング」教育等)。

学校でプログラミング教育を必須にする流れが世界的にありますが、ごく基本的な部分に止めるのが良いと思います。


※尚、言うまでもなく、IQテストで計測できるIQは、頭の良さ全体を示すわけではなく、IQテストの成績が低くても優秀な人は沢山います。しかし、IQテストで良い成績を出せる人(パズル的な問題が得意な人)でないとプログラミングに向いていない可能性は高いと思われます。


以上です。

2026年5月1日金曜日

IT巨人達の失敗から考える未来

 ※2023年10月25日執筆

ITの世界は、同じような失敗が何度も繰り返されているというお話をしようと思います。

GAFAM(グーグル、アップル、メタ※旧フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)すら、同じ失敗で、凋落する可能性があると思います。

キーワードは「他をナメると衰退する」です。


◆IBMの凋落

1911年に創業されたIBMは、長くコンピューターの世界を支配する圧倒的な巨人でした。

そんなコンピューター世界の転機は1970年代のパソコン(パーソナルコンピューター)の発展でした。

ところが当初、IBMはパソコンをコンピューターとは見なさず、おもちゃのようなものだと見なしてナメていました。

そんな中、大学を中退したばかりのスティーブ・ジョブズが自宅のガレージで始めたアップルがパソコン製造販売で成功したことを含め、パソコン市場が急成長します。

そんなパソコン市場の急激な拡大により、ついにIBMがパソコン市場参入を宣言します。

これで、パソコン市場もIBMが奪っていくと思われました。

しかし、その後起こったことは興味深いものでした。

アップルの売り上げは、落ちるどころか新記録を更新し続けました。

一方、この時でもIBMはパソコンをナメており、自社の最優秀な人材をパソコン分野に回さず、全く社外の二十歳そこそこだったビル・ゲイツや西和彦の設計を採用し、現在に至るも世界最多の特許保有数を誇るIBMがパソコンに関しては法的に大らかな方針を取ります。

それで何が起こったのかと言いますと、IBMのパソコンであるIBM-PCの互換機(中身が同じパソコン)を作る企業が沢山現れました。

これまで、政府、一流大学、大企業といった、言い値で買う客を相手にビジネスをしていたIBMには製造効率の概念があまりなかったのに対し、IBM-PCの互換機製造メーカーは効率的な製造ラインを開発し、IBMよりはるかに安価な金額で販売できました。

さらに、IBMは手痛いミスを犯します。

IBM-PCのOS(オペレーションシステム)を開発したマイクロソフトのビル・ゲイツは、そのOSであるMS-DOSをIBMに売らず、ライセンス供与とし、売れたのがIBM-PCだろうが、その互換機だろうが1台に1つのMS-DOSが売れ、マイクロソフトが収益を上げ続けるのに対し、IBM-PCは売れず、その互換機ばかりが売れ、IBMは全く儲かりませんでした。

さらに、小型・中型コンピューターの性能向上により、IBMの大型コンピュータの販売も不振になり、IBMはかつての威光を失っていきます。


◆アップルの凋落

パソコンの黎明期はアップルの天下でした。

しかし、今度はアップルがIBM-PCとその互換機をナメていました。

ビジネス用途を強く意識したIBM-PCの互換機が売り上げを伸ばし、相対的にアップルの業績が下降する中、アップルのCEOであるスティーブ・ジョブズはゼロックス社と共同で、当時としては先進的なウインドウズタイプのパソコンであるLisa(リサ)を開発し、意気揚々と市場に送り出しましたが、先進的ではあっても、ビジネスの役に立たず、そして、高価なLisaは全く売れませんでした。

アップルは慌てて、ジョブズを無視し、Lisaを簡易化し安価にしたマッキントッシュパソコン(MAC-PC)を発売し、デザイン分野での用途の優位性をアピールし、一定の人気を得ましたが、業績は低下し続け、ジョブズはアップルを追われます。


◆マイクロソフト帝国の躍進と凋落

アップルが凋落し、IBM-PC互換機がパソコン市場を席捲する中、IBMは互換機メーカーに売上を奪われたのに対し、OSや重要なソフトウェアを提供するマイクロソフトは巨大になる一方のパソコン市場を支配し、CEOのビル・ゲイツは全米一、そして、世界一の富豪になります。

IBMがパソコンをナメさえしなければ、アップルがIBM-PCをナメさえしなければ、その立場はIBMかアップルのものでした。

痛い教訓を得たIBMは、1980年代終わり頃に、ビル・ゲイツに対し、次世代OSであるOS/2をIBMとマイクロソフトで共同開発して利益を折半することを強行に提案し、ゲイツにそれを飲ませます。

しかし、鳴り物入りでデビューしたOS/2は、高機能ではあっても、その分、動作が遅く、IBMらしい堅苦しさのため人気が出ませんでした。

そんな中、ゲイツは「あくまでOS/2へのつなぎ」という言い訳をしてWindowsという、軽快に動き使い易いOSを単独開発し、このWindowsが大ヒットし、現在にいたるもパソコンOSの圧倒的主流となっています。

IBMとジョブズの失敗の共通点は同じで、機能が高ければ評価されると思っていたのと違い、一部のマニアックなユーザーを除き、一般ユーザーは軽快で使い易いことを好むのです。

いずれにしても、またしてもゲイツにしてやられたIBMは、ついにマイクロソフトと決裂します。

しかし、今度はマイクロソフトに危機がやってきます。

1990年代の半ば頃までは、ゲイツはインターネットをナメていました。こんなものが普及するとは思わなかったのです。

それで、マイクロソフトのインターネットへの取り組みが遅れました。

その後、ようやくインターネットの重要性を受け入れたゲイツは上場前のグーグルに破格の条件で買収を提案しましたが、グーグルのラリー・ペイジは「ゲイツは時代遅れ」と嫌い、買収を拒否します。

ところで、インターネットは、アップルを追われたジョブズが得意な「面白くて便利なことが重要」な世界を作ります。

ついにジョブズ復活の時がやってきたのです。

ジョブズは一度追われたアップルに請われ、CEOとして復帰します。

ジョブズはビジネス用途を無視し、クールで面白い小型端末を開発し、それを最大に生かせるインターネット音楽配信サービスを開始して大成功します。

そして、ついに2007年、アップルはスマートフォンのiPhone(アイフォン)を発売し、これが驚異的なヒットとなり、これにより音楽配信サービスもさらに業績を上げ、その他のメディアサービスもことごとに成功します。

グーグルもすぐに続き、Android(アンドロイド)スマートフォンが登場します。

そして、iPhone用アプリをアップルが、Android用アプリをグーグルが完全支配するプラットフォーム独占ビジネスで、現在にいたるも両社は莫大な収益を上げ続けます。

さらに面白いことが起こります。

ビジネス用途に関心がなかったジョブズが作ったiPhoneなどのモバイル端末が、逆にビジネスの新しい形態を作っていくという意外なことが起こり、ますますアップルは発展します。

一方で、ゲイツは、いつまでもスマートフォンによるモバイルコンピューティングをナメていました。

ゲイツは、キーボードが付いたパソコンこそITの主流であると疑いませんでした。

後にゲイツ本人が、「スマートフォンの可能性が分からず、社内の最優秀な人材をこれに注ぎ込まなかった」と自分の失敗を認めています。

これは、自分が若い時に打倒したIBMと同じ間違いではないかと思います。

ゲイツの後を継いだCEOスティーブ・バルマーも「スマートフォンなどすぐに廃れる」と言い、マイクロソフトは時代に取り残され、凋落していきました。


◆次はGAFAMの凋落か?

一度落ちかけたマイクロソフトですが、ユーザーに向き合うサービスとクラウド事業で生まれ変わり、さらに、AIの覇権を虎視眈々と狙って投資を続け、ついに、時価総額世界一の座に返り咲きます。

ところで、時価総額と言えば、ある異変が起こっています。

上位をGAFAMが独占する中で、2023年9月は、アマゾンに続きエヌビディアが5位でした。

十年前なら、エヌビディアという企業名を知るのは、パソコンゲームの熱心なファンくらいでした。

パソコンで高度なゲームをするには、普通のパソコンだけでは駄目で、パソコンのグラフィック処理を強化するグラフィックボードが必要です。エヌビディアは、このグラフィックボードのメーカーです。

グラフィックボードの正式な名称はGPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)で、現在でもCPU(セントラル・プロセシング・ユニット)と間違う人が多いというより、そもそも、GPUという名称を知らない人が大半でしょう。

エヌビディアのGPUは昔から性能が優れており、ゲームマニアはこの高価なGPUをパソコンに組み込むことを必須と心得ていました。

ゲームと言えば、ソニーのプレイステーションや任天堂スイッチ、マイクロソフトX-BOXが普及する中で、なぜパソコン用GPUを作るエヌビディアのGPUがかくも発展したのでしょうか?

(上記のゲーム機は主にAMD社のGPUを搭載。次期スイッチはようやくエヌビディア製を採用)

面白いことに、AIの処理にGPUが使われるからです。

グラフィック処理とAIの処理は同じベクトル演算が使われるのですが、GPUとはベクトル演算に特化したプロセッサです。

GAFAMも現在、AIに最大の力を注ぎ、他にも、ChatGPTを開発したことで世界的に知られるようになったOpenAIや、その他のAIの新興企業が現れていますが、AIを動かすには高性能なGPUを必要とし、これらのAI企業は高価なGPUを我々に想像も出来ないほどの量を買い続けています。

こうなれば、エヌビディアが儲からないはずがないことが分かると思います。

どんなAIの時代になっても、GPUが必要ということに変わりはありません。

そして、逆に言えば、これほどGPUが求められるということは、世界はAI化に突き進んでおり、AIをベースにした世界に急速に変わるということです。

もちろん、他の半導体メーカーも高性能GPUの開発を進めていますが、長年、ゲームで培ったエヌビディアのリードは大きいものです。

そのAI世界であるWeb3の世界では、これまでと同じではGAFAMすら生き残れません。

実際に、その兆候も見え始め、GAFAMもまた、変化しなければ生き残れません。

Web3の世界では、GAFAMが支配していたそれぞれのテリトリーを飛び越えることが可能で、GAFAMの支配が弱まります。

ユーザーは、必要なサービスが得られれば、それをグーグルから受けようが、アップルから受けようが、その他から受けようがどうでもよくなるのです。また、GAFAMのそれぞれの企業単独ではできなかったサービスも現れます。

GAFAMは、それぞれの分野で国を超えて市場を独占していたことで傲慢になり、Web3をナメている証拠がかなり見られます。

GAFAMがIBMのように下降したままか、アップルやマイクロソフトのように変身して生き残るかが注目されます。


以上です。