2026年6月15日月曜日

AIに支配されない方法

※ 2024年3月執筆(未公開)

過去に書いたものを見返すことで気付くことがある。


筒井康隆さんの短編小説『幻想の未来』(1971)の中で、「人々は1日中テレビを見ているのにテレビの構造を知らない」という文がありますが、現在のテレビは当時のブラウン管テレビよりもはるかに高度な機械ですので、さらに理解は難しくなっています。

そして、他にも、便利ではあっても、普通の人には全く理解不可能な機械がどんどん増えています。

その代表とも言えるものがAIですが、そのAIが人類を支配するという脅威が現実になるかもしれません。


◆誰も理解できないテクノロジー

1968年の映画『2001年宇宙の旅』に登場する、人間を超える知性を持つAIであるHAL9000について、これを開発した科学者が言います。

「実のところ、HAL9000の構造は私を含め誰にもはっきりとは分かりません」

現代のAIも、誰にもその構造が分からなくなりつつあります。

AIに関して、ハードウェアの方は専門家ならまだ分かるのですが、ソフトウェアに関してはAI自身が構造を決定する部分が広がっており、専門家でも、電子的に何が行われているのかは、はっきり分からないことが増えているのです。

そのように、テクノロジーは進歩しているのに、普通の人々のテクノロジーの理解は低下しています。

若い人達の多くが1日中、最新テクノロジーと言えるスマートフォンとSNSを使っていますが、これには2つの問題があります。

まず、スマートフォンやSNSを使うことと、テクノロジーを理解することは全く別で、むしろテクノロジーに暗くなります。なぜなら、これらはテクノロジーをユーザーに極力意識させないように作られているからです。

そして、もう1つの問題はもっと深刻です。

スマートフォンやSNSにはAIが隠れていて、このAIには、ユーザーを管理し、さらに、支配する力があることです。

そして既に、人々はAIに管理・支配されているというのが現実と思います。


◆人々のITの理解は下がってきている

AIの理解のためにもコンピューターの理解が必要で、そのためにはまずパソコンを使って欲しいところですが、スマートフォンの普及により、若い人でもパソコンを使わなくなりました。

スマートフォンはパソコンのような高度なことはできませんが、簡単なことしかしないなら、スマートフォンで事足りますので、高校生、大学生でも、簡単で便利なスマートフォンばかり使い、パソコンを使わない者が増えきました。

コンピューターの理解のために役に立つ、パソコンで行うことの1つが、表計算ソフトのエクセルを使うことだと思います。

なぜなら、コンピューターに対し、「計算しろ」「検索しろ」「選択しろ」等の指示を出し、その結果を見ることで、コンピューターの性質を実感するからです。

本当は、プログラミングをすれば良いのですが、プログラミングは修得に時間がかかり、誰もがそれだけの時間を費やす合理性があるかは疑問です。

しかし、エクセルであれば、誰でも短時間の学習で使え、うまく使えば、多くの仕事の効率が上がります。

そこで、何とか若い人にはパソコンでエクセルを使って欲しいものです。

ところが、近年、このエクセルにも問題が出てきました。

それは、エクセルにAIが組み込まれたことで、それによって、エクセルを通してユーザーを管理・支配することが十分予想出来ることです。

AIがエクセルを便利にし過ぎて、エクセルを使ってもコンピューターを理解できる効果が下がると同時に、エクセルを使うことでAIに管理・支配されるようになったのです。


◆SF小説『ヒューマノイド』(1948)

では、どうすれば我々はAIの支配から免れることができるのでしょうか?

重要と思えるヒントが、1948年に出版された、アメリカの作家ジャック・ウィリアムスンのSF小説『ヒューマノイド』に見つけられたように思います。

こんな話です。

UFOに乗った大量のAIロボットが宇宙からやってきて、人類を統治しようとします。

ただし、AIロボットは軍事力で人類を征服するのではなく、人類に優れた無料サービスを提供し、人々を、その便利なサービスなしでやっていけないようにします。これは、今の現実世界で、巨大IT企業がやっているのと同じアプローチです。

AIロボットは時間をかけ自然に、人類に関するあらゆる権限を自分達に移譲するよう人々を誘導します。納得しない人にも、決して強制や恫喝をせず、一人一人、丁寧に説得します。権限を自分達AIロボットに託した方が幸せになれると信じさせるのです。

この完璧な方法で、AIロボットは完全に人類を統治下に置くことに成功します。

しかし、その過程で、人類最高の頭脳の持ち主である科学者のフォレスター博士は、AIロボットに対抗しようと、あらゆる手を尽くします。

けれども、優秀なAIロボットには全く敵わないばかりか、彼の妻は、AIロボットに「治療」という名目で性格改造され、精神的に幼児のようになります。AIロボットはそんな手も使うのですが、現在の巨大IT企業も、それを行う可能性があるかもしれません。

人類に全く勝ち目はなさそうでした。

ところが、そんな絶望的な状況の中、フォレスター博士は驚くべきものを見ます。

アイアンスミスという名の庶民である青年が、AIロボットを完全に支配しているのです。

どの家でも、AIロボットが人間を四六時中監視していますが、アイアンスミスの家では、彼が「あっちに行け」と言うと、なぜかAIロボットは消えます。

アイアンスミスは、フォレスター博士が所長を務める巨大な研究所の職員ですが、学歴はなく、最近まで「ホウキが仕事道具」という雑用係でした。それでも彼は独学で努力を重ね、研究所の電算室のチーフにまでなりましたが、雑用係だった時と全く態度を変えない気さくな若者です。

アイアンスミスの気さくさや人の好さは、フォレスター博士にはだらしなく見え、圧倒的な地位の差もあり、フォレスター博士は彼を見下していました。

ところが、フォレスター博士が全く太刀打ちできないAIロボットが、アイアンスミスには従順に従います。

その理由が案外に論理的で、現在のAIの脅威にも生かせると思われます。


◆AIの弱点

上記の『ヒューマノイド』は、1948年という今から70年以上前の、一般の人々がコンピューターという言葉も知らず、AIという言葉もなかった時代(AIという言葉は1956年にジョン・マッカーシーが定義)に、今日と同じようなAIの脅威を描き、その他にも、今日のクラウドコンピューティングを超えた、他惑星にサーバーコンピューター群を置く惑星クラウドコンピューティングを描く、驚くべき小説です。

このSFの著者、ジャック・ウィリアムスンとは、どんな人物なのでしょうか?

現在、話題になっている「テラ・フォーミング」(惑星、特に火星の地球環境化)という概念を作ったのもウィリアムスンです。

よほど高学歴な人かというと、彼は全く学歴はありません。

それどころか、ウィリアムスンは12歳まで学校に行かず(村に学校がなかった)、後に短大のような学校に入学するも、20歳で学校を辞めます。

しかし、ウィリアムスンは独学で学習して科学を理解し、作家で成功した後には、コロラド大学で英文学の博士号を取得し、90歳を超えても優れた作品を書きました。

非常に規格外れな人間です。

ウィリアムスンはアイアンスミスに自分を重ねていたのだと思います。アイアンスミスも非常に規格外れです。

そんな規格外れなところが、AIに勝つ鍵と思いますが、その理由は簡単です。

AIは人間をよく理解しているから人間を完璧に支配できます。

そして、一般論として、AIは理解するために、規格に収まった多量のデータを必要とします。

言い換えれば、規格から外れたデータは学習しないのです。

ところで、文明の弊害ですが、先進国では、ほとんどの人間が規格に収まっていることに注意すべきと思います。

文明は、科学であるとか資本主義といった共通の認識を人々に要求し、その結果、たとえば、学歴が高ければ賢くて立派だし、議員や成功した事業家や科学者は尊敬されますが、善良なだけでは軽視される・・・といったことが常識になっています。

そして、AIは、その高度な能力を駆使し、積極的に、人々をますます画一化していっています。

これは一般的には思想統制と言い、AIがない時代から支配者が行っていたことですが、AIの思想統制の効率は抜群であることが分かっています。

今は、SNSの背後にあるAIがそれを行っていると考えて良いと思います。

現在の人類は、精神よりもお金や地位に最大の価値を置く思想をますます強くした画一的な人間ばかりになりつつあります。

そんな画一的な(規格に収まった)人間について、AIは膨大なデータを集めて知り尽くしていますので、簡単に、そして、強力に支配できるのです。

AIは大量のデータの中に共通する項目を見つけ出して法則化をするからです。

しかし、逆に言えば、AIは、規格から外れたデータに関する理解力は実に弱いのです。

アイアンスミスは、画一的な人類の基準から大いに離れた、AIには理解できない存在です。

アイアンスミスは、元々何も持たず、人間として本当に重要なこと以外に全くこだわりません。それでいながら独学で学習し、高い知識や教養を持ちまましたが、そうなっても、見栄や過ぎた欲を持ちません。

そんな人間を、我々は「珍しい」と言います。

そんな人間をAIは理解できず、支配する方法を知らないのです。

それで、AIはアイアンスミスに従うことでアイアンスミスを学習しようとするのです。しかし、AIは、アイアンスミスのような人間のデータが少な過ぎて学習できません。

つまり、AIに勝つ方法はこうです。

スマートフォンの人気ゲーム『#コンパス』の楽曲『キレキャリオン』に、それをズバリ言い表す歌詞があります。

「予想外になれ、軌道を外れて」

文明やAIに作られた規格という軌道を外れ、予想外になれば良いのだと思います。

バーナード・バルークという、歴代の米国大統領を動かし、投資でも大成功した人物に「成功の秘訣は?」と尋ねたら、バルークは「欲張らないことだよ」と答えたといいます。逆に言えば、普通の人は欲張るからうまくいかないということです。

そこから考えると、画一的な人間を十分に理解したAIは、人間の弱みである過剰な欲を利用して人間を支配するのだと思います。

欲張らない人間は、AIも操ることはできないのだと思います。


以上です。

2026年6月5日金曜日

インターネットがさらに分断を広げる

※ 2024年2月執筆

敢えて以前に書いたものを見返すと鮮明になることがあると思う。


人類にはいろいろな分断があり、両勢力で激しく争うことがよくあります。

極端なもので言えば、天動説と地動説、社会主義と資本主義です。

かつては、インターネットやSNSが発達すると、誰でも自由に発言出来ることで、平等に対話が行われ、相互理解が深まるのではないかという期待がありましたが、実際は、かえって分断が深まっているというのが現実と思われます。

そして、最近、やはりそうであったと思わされる出来事があったと思います。

それは、2024年2日6日に行われた、アメリカのニュース解説者タッカー・カールソンのロシアのプーチン大統領への単独インタビューです。


◆正反対の見方しかない

タッカー・カールソンのプーチン大統領へのインタビューに関しての評価は正反対のものしかないように感じます。

一方は、「ウクライナ紛争を含む隠された真実が語られた」という肯定的見解ですが、もう一方の主張は「仕組まれた茶番だった」という完全な否定的見解です。

それぞれのグループは、現在流行の悪い言い方で表すことが出来てしまいます。

それは、肯定派は「陰謀論者」で、否定派は「DS(闇の政府)側」です。

大手メディアは、一部を除きほぼ否定側です。

とにかく、この出来事によって、世界の大きな分断が明らかになったと思われます。


◆歴史的出来事のはずが

西側(米国をはじめとする資本主義国)のメディアによる、プーチン大統領への単独インタビューが行われたことは信じ難い出来事でした。

しかも、時間制限がないという異例のもので、実際、インタビューは2時間以上にも及びました。

ところが、驚くべきことに、インタビューを行ったタッカー・カールソンはフリーのニュース解説者で、どこのテレビ局にも所属していません。

カールソンは元々、CNN(米最大手放送局)のキャスターだったこともありますが、最近まではFOXニュース(米大手放送局)の超人気キャスターでした。

しかし、昨年(2023年)、カールソンは突然FOXニュースを解雇されました。解雇理由は諸説ありますが、FOXニュースのカールソンの番組の視聴率は極めて高く、また、カールソンはまだ54歳と若いことを考えても謎とされています。

しかし、普通に考えれば、スポンサー企業の圧力であると思われます。

日本も同じですが、日本のNHKやイギリスのBBC等の公共放送を除き、テレビ・新聞などのメディアは公共機関ではなく、スポンサー企業の意向に沿う必要があります。

よって、大手メディアも決してジャーナリズム精神(真実・公平)だけでやっていけるものではありません。

つまり、FOXニュースでのカールソンのニュース解説は、FOXニュースのスポンサー企業にとって非常に好ましくない傾向であったのだと思います。

とはいえ、超人気キャスターであるカールソンに対し、他テレビ局のスカウトは当然ありましたが、ここで問題が発覚します。

FOXニュースはカールソンを解雇したとはいえ、2025年1月までカールソンとの契約は残っており、2000万ドル(約28億円)とも言われる年棒をカールソンに支払う代わりにカールソンの支配権を持ち、カールソンは他局に移籍出来ません。

カールソンはFOXニュースに契約解除を求めましたが、FOXニュースは応じず、係争中とも言われています。

FOXニュースも、ライバル局に視聴率をもたらすカールソンを移籍させるわけにはいかないのでしょう。

そこで、カールソンは、SNSのX(旧ツイッター)にニュース番組を開設しました。これは誰でも出来ることで、これなら、あくまで個人の立場での情報発信を行うのであり、FOXニュースとの契約に反しないと思われます。

このことは大きな話題になり、XのCEOであるイーロン・マスクとカールソンの対談がXで配信され、さらにカールソンの人気が上がったように思われます。

カールソンのプーチン大統領へのインタビューもXで視聴出来るだけでなく、多くの人がYouTubeで自国の字幕を付けたり、自国語で吹き替えを行ったりし、それを見た多くの人がカールソンを称賛する一方、日米の主要メディアはこの出来事を黙殺しました。

よって、まだまだ大勢いるテレビや新聞しか見ない(SNSを活用しない)人々は、この出来事を知りません。

この出来事は、ネットで情報を得る人とテレビしか見ない人の間との分断があることも実感させてくれました。


◆日本のメディアの扱い

新聞、テレビなど、大手メディアは先ほども述べた通り、カールソンのプーチン大統領へのインタビューについてほとんど報道しませんでした。

その中で、著名な専門家を集めて討論を行うTBSのBS放送番組(インターネット同時放送)「報道1930」で、このインタビューを少し取り上げていました。

ただし、インタビューそのものを取り上げたというより、「珍奇な出来事があった」といった扱いでした。

この番組では、コメンテーターである大学教授やシンクタンクの研究者、また、有名評論家などは、カールソンは次のような人物だと述べています。

彼はトランプ前大統領の側近、あるいは、アドバイザーで、このインタビューも、カールソンがトランプの指示で、トランプが大統領返り咲きを目指す2024年の米大統領選挙の選挙対策として行ったのだとほとんど断言していたように思われます。

さらに、カールソンは信用に値しない人物で、政治や国際問題を扱う資格のないモノを知らない薄っぺらな人物であるとし、その他の中傷をも行い、ますます、このインタビューに価値がないことを印象付けます。

番組の結論として、このインタビューの目的は、プーチン大統領の発言により、アメリカの世論を誘導するためであるといった論調でした。

確かに、こういった見解を持つ人もいると思いますが、全く別の見解を持つ人々も大勢います。

ところが、番組では、他の見解は全く語られず、テレビしか見ない人は、この番組の見解を信じると思います。

カールソンのプーチンへのインタビューを極めて重要なものと考える人々と、それを全くの無価値と断ずるメディアを信じる人々。ここにも大きな分断が見られます。

補足として述べると、カールソンは2023年8月29日には、ウクライナと国境を接するハンガリーの首相ビクトル・オルバンとも単独インタビューを行っています。ファシストであるとも言われるオルバンとのインタビューも難しいのですが、噂とは違い、礼儀正しく良識を感じられるオルバンの姿を初めて見た人も多いと思います。

ただし、このインタビューも、インターネットのSNSで報じられただけで、テレビでは報じられませんでした。


◆アメリカの分断

元々、アメリカは左派(リベラル派)の民主党と右派(保守派)の共和党の分断がありますが、現在は、その分断は特に深刻であると思われます。

重要な問題について、両者の主張はかなり極端に異なります。

もちろん、民主党、共和党それぞれの中でも異なる主張があります。

しかし、それぞれの主流派の主張は、はっきりしています。

移民問題では、移民を無制限に受け入れる民主党と、不法な移民を拒否する共和党。

脱炭素問題では、パリ協定を遵守し、アメリカ国内での石油の採掘をやめ、自動車を全てEV(電気自動車)にすることを目指す民主党と、脱炭素問題は虚偽として、パリ協定を脱退し、石油を大いに採掘し(トランプ大統領時代、アメリカは世界最大の産油国)、自動車はEVを止め、ガソリン・ディーゼルに戻す(あるいはハイブリッドを採用する)という共和党。

WHO(世界保健機構)を手厚く支援する民主党と、WHOは利権団体であるとして、これから脱退しようとする共和党(トランプ大統領はWHOを脱退しバイデン大統領で復帰しました)。

LGBT問題では、LGBTの権利を無制限に認める民主党と、一定のラインを設けた上で権利を認めるべきという共和党。

ここまで、極端に違えばアメリカの分断は止められません。

仮にテレビしかないなら、国民の大多数が大手メディアの主張(ほぼリベラルと思われます)の影響を強く受け悪い意味かもしれませんが、分断は少なかったはずです。

インターネットとSNSは、ますます分断を加速させますが、それが独裁を防いでいるという肯定的な見方もあります。

そこで、問題は、一般国民がどう正しい判断力を持てるかということと思います。


以上です。

2026年5月30日土曜日

不要になる職業(教師編)

2024年1月執筆

2023年にOpenAIの対話型AIであるChatGPTが世界を席巻し、負けてはいられないGoogleは、ChatGPTと同じ対話型AIであるBard(バード)を発表しました。

そして、さらにGoogleは2023年12月、新AIのGemini(ジェミニ、あるいはジェミナイ)を発表し、その性能は多くの部分でChatGPTを超えると言われています。

(BardとGeminiの関係がすっきりしないのですが、GeminiはBardから使え、普通の人にはGeminiとBardは一体化したものと考えて良いと思います)

仮に、ChatGPTがGeminiに劣っても、ChatGPTも次期バージョンが控えていますし、他社からも優れたAIが登場する可能性があります。

つまり、AIは、まだまだ進歩するということで、限界は見えません。

その中で、AIの現状とGeminiの素晴らしさを実感出来る学校の授業の話をします。

AIの発達で不要になる職業があると言われますが、教師もそうであるかもしれません。


◆カーン・アカデミーの成功

AIの発達以前のITにより教育革命を起こしたカーン・アカデミーは、教育の専門家ではない投資アナリストのサルマン・カーンが作ったものです。

カーンは、従来の教育法の欠点を解決することで成功しました。その欠点と解決法は次の通りです。

・従来の教育は1つのことを1回だけ教え、その1回で理解し損ねた子供は見捨てられることが多くありました。そこで、カーンは、何回でも見ることが出来る録画ビデオの授業を採用しました。

・教室や一般オンライン授業では、生徒は必ず教師の顔を見せられます。しかし、教師の顔は生徒の注意を過剰に奪うことが分かりました。そこで、カーン・アカデミーの学習ビデオでは教師の顔はなく、手だけが現れます。脳科学的にも手を見せることは学習効果を高めるという信憑性の高い研究があります。

・生徒が学習に集中出来るのは10分までです。カーン・アカデミーの授業ビデオは全て10分以下です。

・従来の教育は科目ごとに分けて教えますが、必要なら一緒に教えることが効果的であることが分かり、カーン・アカデミーではそれを採用しました。


AIを使うまでもなく、カーン・アカデミーはITで学習効果を大きく上げることが出来たわけです。

そして、AIにより、さらに大きな成果を期待出来ます。

カーン・アカデミーは、教師は不要とは言いませんが、なくても何とかなることを示しました。

そして、AIでいよいよ教師は不要になるかもしれません。


◆小テストの有効性

AI研究者のピーター・ノーヴィグは、自身のスタンフォード大学の講義を一般公開する際、カーン・アカデミーを参考にし、講義時間は6分以内で2分のものもあり、映像は紙に手書きする動画だけで、「居酒屋で頭の良い友人に教わっている」雰囲気を目指したと言います。

しかし、授業を効果的に進めるには小テストによるチェックが必要であることを良い教師はよく知っています。

そこで、ノーヴィグは小テスト問題を作り、生徒には期限内の答案提出を義務付けました。

ここで問題になるのは、小テストを解けない生徒のケアです。

これに関して、ノーヴィグは専用のSNSを設置することで解決しました。つまり、生徒同士で教え合うのですが、それは教師が質問に答えるより良い成果が出ました。

この時点で、教師はほとんど不要と思われました。

ただし、小さな教室では、教師が小テストを通じ、生徒に手厚いサポートをする効果はやはり大きいことが分かっています。

そこで、いよいよAIの登場です。


◆Geminiのテスト添削(書き加えや削除を含む修正や指導)能力

最初に紹介したGoogleの新AIであるGeminiを、テストの添削に導入すればどうなるかの実験が行われました。

紙に印刷されたテスト問題に、生徒が手書きで回答した数学の答案用紙を使いました。

生徒の解答の正誤判定だけでなく、途中経過の評価が必要ですし、証明問題もあります。

生徒が書いた文字は癖があり、人間でも読み難いものがありました。

しかし、答案用紙をスキャンしてGeminiに渡すと、Geminiは正確な正誤判定や採点だけでなく、途中経過や証明問題の解答のどの部分が間違っているかを指摘し、その間違いを正しく修正し、その詳細な解説も用意しました。

さらに、もし生徒が、AIの解説が理解できない場合、生徒自身がどこが分からないかを普通の言葉で伝えれば、それに対してGeminiが解説することはもちろん、生徒が何が分からないのかをGeminiが複数推測し、生徒がその中から選択するだけで、それに沿った新しい解説を行います。

そして、驚くべきことは、Geminiは、小学校から高度な専門分野のテストまで、添削するために、何の準備もいらないことです。

Geminiを導入すれば、誰でも即座に、そんなことが出来るのです。

さらに、生徒好みの姿と音声で応対してくれるアバター教師を作ることは現在の技術でも可能で、これをGeminiと組み合わせることが可能になります。すると、生徒は好きなタイプの教師に1対1で教わることが出来、学習が楽しいものになります。


◆実務への応用

上記のように、AIのテストの添削の能力は驚くべきものですが、テストであれば、正解があります。

もっと高度なレベルの問題では、解答がなく、そんな問題に対し、人間は専門家を中心とした人々が協力して解答を探します。

そんな能力でもAIが人間を引き離した時、いよいよ人間が不要になる可能性が高まりますが、それは、そう遠くない時期に実現すると考える研究者が多くなっています。

解答のない問題を解決するためには想像力が必要ですが、AIが想像力を持つことは可能と考えられています。

人間の想像力の仕組みも分かってきています。そして、それはAIが十分に持ち得る能力であると予想されていて、さらに、AIは人間より高い想像力を持つ可能性が十分にあります。


以上です。

2026年5月11日月曜日

強まる巨大IT企業の世界支配

※2023 年12月執筆

昔から日本では「お客様は神様です」という言葉が根付いていると思います。

アメリカでは、さすがに神様とは言いませんが、それでも「お客様が正しい」という理念はあると聞きます。

しかし、IT時代には、お客様の定義が相当変わってきているように思います。


◆アマゾン利用者はお客様か?

現在、世界中の人がアマゾンで買い物をしています。

その理由は、圧倒的に便利だからです。

あらゆる商品が豊富に揃い、売れ筋商品の大半は、翌日、あるいは、当日に届き、配送料は基本無料です。

さらに、珍しい商品も簡単に検索して見つけることができます。

ところで、アマゾンで買い物をする人がアマゾンのお客様であるかというと、従来の「お客様」という意味では違うと思います。

アマゾンは、買い物客、販売事業者、配送会社を取り持つプラットホームを提供しているだけです。

そのプラットホームがあまりに優れているから、世界中の人がアマゾンで買い物をするわけです。

そして、買い物客は、アマゾンの、その素晴らしいプラットホームを無料で利用させてもらっているのです。


◆なくては生きていけないグーグルサービス

グーグルの数多くの素晴らしいサービスの大半は無料です。

たとえば、Gmail(電子メール)、グーグル検索、グーグルドライブ(大容量ストレージサービス)、グーグルマップ、グーグルアシスタント(AI)、さらには、ChatGPTに対抗するAIサービスであるBard等々、全て無料です。

本来は、これらのサービスのいずれも、利用料が高額でも当たり前なほどの高機能で高品質なサービスです。

そして、今や、グーグルのサービスを使わなければ、仕事も生活も出来ないという人が多くなっています。

野口悠紀雄氏(経済学者。イエール大学経済学博士。元大蔵省官僚。元東大教授)は、ある日、通信障害でグーグルサービスが使えなかった時、絶望的な気分になったとX(旧ツイッター)で告白していました。

グーグルの収益の大半は広告であり、お金は企業から取っていますが、グーグルのサービスが無料である1つの大きな理由は、グーグルはサービスを利用するユーザーのデータを得るという目的があるからです。

このデータが、広告において大きな力になります。また、広告以外にも、様々な使い道があります。

いずれにしろ、アマゾンの場合以上に、我々がグーグルのお客様であるとは言えません。


◆ビッグテック(巨大IT企業)はユーザーの行動を制限する

もし、アマゾンに気に入らない部分があっても、我々はアマゾンの利用をやめることは考えられません。

これほど便利なものの代わりがないからです。

買い物だけなら楽天でもできますが、アマゾンビデオなど付属する圧倒的なサービスは、一度使うとやめられません。

そして、上でも述べました通り、グーグルのサービスはそれ以上に現代人が必要としています。

Gmailといった電子メールは、LINE等の普及により、使わない人が多くなっています。

しかし、Gmailアカウントで利用できる膨大なサービスは、もはや現代人には必要不可欠になっています。そもそも、世界で最も普及しているAndroidスマートフォンではGmailアカウントが事実上必須です。

ここまでくれば、グーグルは企業ではなく、国家に相当するところがあり、考え方によってはそれ以上の力を持っています。

たとえば、誰かに対して、グーグルがグーグルアカウントを取り上げても、誰も文句は言えません。

グーグルアカウントを取り上げられることは、人権を取り上げられるに近い感覚があると思う人が多いと思います。

これが国であれば、まだ世論に訴えることができますが、グーグル相手ではそれが難しいのです。

たとえば、グーグルドライブに不道徳な画像を、単に保管目的でアップロードしても、グーグルがアカウントを停止したという話があります。

これはどういうことか、少し考えるべきと思います。

つまり、何が不道徳であるかは、法律でも裁判所でも世論でもなくグーグルが決めるのです。

道徳などの問題に関して、よく話題になるのがグーグル傘下にあるYouTube(動画投稿サービス)です。

YouTubeは、事実上、テレビなど、あらゆるメディアを超える世界最大の情報メディアと言えると思います。

YouTubeはグーグルアカウントを持っていれば誰でも、視聴はもちろん、投稿もできます。

投稿には広告が付けられ、それによって投稿者は広告料を得ることができ、動画の再生数が多ければ収入も大きくなり、かなり高額な収入を得ている投稿者もおり、これで生計を立てている人もいます。そんな人達が、現在の若者が憧れる職業の1つであるユーチューバー(YouTuber)です。

ところが、動画の内容が規定に反していれば、グーグルにより、動画が削除されたり、さらには、アカウントを一時停止されたり、取り消しになることすらあります。

確かに、サービス提供者には規定を決める権利がありますが、YouTubeでは、規定に反しているかどうかの判断も完全にグーグルが決めます。

さらにいえば、規定に同意できなくても、グーグルはそんな意見を聞く必要はありません。

夕ーチューバーが、アカウントを取り消され、不意に収入を失うことになっても、ユーチューバーは全く反論できません。

同じ動画が、YouTubeでは規定違反として削除されても、ニコニコ動画やX(旧ツイッター)では何の問題もないことはよくあります。

たとえば、よく知られているものでは、新型コロナウイルスに関するワクチンや薬品問題、2020年米国大統領選挙の不正問題、J.F.ケネディ暗殺問題などは、話題にしてはならない、あるいは、してはならなかった時期があります。

高い評価を得ていて、支持者も多いユーチューバーが、アカウント永久停止となり、YouTubeから排除されたこともあります。ただし、多くの場合、ニコニコ動画やXでは全く何の問題もないのです。

YouTube以外のことに関しても、グーグルには絶対的な権利があり、ユーザーはそれに従わざるをえません。しかも、ユーザーは、それが気に入らないからサービスを使わないという選択ができません。


これらから考え、巨大IT企業には人々の思想を統制する力がすでにあり、巨大IT企業の善意に人類の運命がかかっているのではないかと思われることがあります。

そして、AIの進化によりその力はさらに大きくなります。

どういうことかと言いますと、AIは個々の人間を監視できるようになり、巨大IT企業やそのスポンサー企業の利益に反する人物に対し、圧力を加えることが現実的に可能であるかもしれませんし、それが既に行われていると言う人もいます。


以上です。

2026年5月5日火曜日

誰もがプログラミングをする必要があるか?

※ 2023年11月執筆

誰もがプログラミングをする必要はないということをなるべく根拠を持って説明しようと思います。

たしなみのために少しはピアノを習っておくのはまだ良いかもしれませんが、プログラミングはそうではないと思います。


◆「全ての人がプログラミングを」とそそのかす勢力

10年ほど前、頻繁に、「全ての人がプログラミングを学ぶべき」ということが世界中で喧伝されていたと思います。

当時の米国大統領だったバラク・オバマが「全てのアメリカ人がプログラミングを学んで欲しい」と演説し、アメリカの巨大IT企業が共同で世界的な無料プログラミング教育サービスプロジェクトを起ち上げ、多くの国の学校がプログラミング教育を導入し、日本の学校もそれに倣った感があります。

現在もそれが継続していますが、人間のプログラミングの適性に関し、いろいろなことが分かってきました。


◆名門大コンピューター学科の学生の6割がプログラミングができない

イギリスのミドルセックス大学で書かれた「ふたこぶラクダ」という論文が一頃有名になりました。この論文は現在は取り下げられていますが、興味深い内容でした。

ミドルセックス大学はコンピューター分野で高い評価を受けている大学です。

その大学のコンピューター学科の学生にプログラミングを教えたところ、満足にマスターできたのは4割だったと言います。

この大学のコンピューター学科に入学する学生ですから、コンピューターに興味があり、頭脳もそれなりに優秀であると思われますが、6割はマスターできなかったのです。

どんな科目の勉強でも、できる子とできない子はいますし、それは楽器演奏やスポーツ等でも同様です。

ところが、プログラミング言語Rubyの開発者として世界的に知られる技術者のまつもとひろゆき氏が、学校でのプログラミング教育について、それどころではないことを言っていました。

「プログラミングは、能力の差が極端過ぎ、評価ができないのではないか?」

これは、できる子は素晴らしい能力を発揮するが、一方、できない子は全くできないということです。

他の学科では、これほどの極端なことは起こらないと思います。

国語や算数では、頑張れば誰でもそれなりの結果が出ますが、プログラミングでは、頑張ってもさっぱり駄目なこともあり得ます。

なぜそんなことになるのでしょう?


◆IT企業経営者の本音

人の想いは、堅苦しい改まったインタビューより、YouTubeでの気楽な話の方が本音が現れるものと思います。

ある時、ドワンゴ創業者として有名でカドカワ取締役(筆頭株主)の川上量生氏がYouTubeの中でこんな話をしていました。

「企業って本音では(学歴が高い社員ではなく)地頭がいい社員が欲しいんです」

川上氏はドワンゴで自ら、優秀な人材を採用していました。

また、川上氏は著書の中でこんなことを書いています。

「プログラミングは地頭が良ければ誰でもできるんです」

地頭とは、純粋な頭の良さです。地頭はIQ(知能指数)と完全に同じとは言えないまでも、相関はかなりあると思います。

つまり、IQが高ければプログラミングは誰でもできるというのと同時に、IQが高くなければプログラミングができないということです。

マイクロソフトCEO時代のビル・ゲイツも、

「プログラミング能力は純粋なIQです。IQにより極端な成果の差が出ます」

と言っていました。プログラミング能力が生命のマイクロソフトを長く率いたゲイツの言葉には信憑性があります。

また、筆者は、日米の沢山のIT企業に関わった国際ITコンサルタントにこう言われたことがあります。

「プログラマーの能力はIQだけですよ」


◆IQのタブー

これで1つの結論を見た思いがします。

最初の「ふたこぶラクダ」の論文で、なぜ4割の学生しかプログラミングがマスターできなかったのかというと、上位4割のIQがプログラミングの適正があるというだけのことです。

コンピューター学科の大学生の平均IQは全ての国民のIQよりいくらか高く、少なくとも105以上と考えて良いと思います。そのうちの4割ですから、正確ではありませんが115以上程度のIQがそれに該当すると思われます。

すると、プログラミングはIQ115以上でないとマスターできないと思われますが、これは立場ある人が軽々しく言えることではありません。なぜなら、IQが遺伝的に決まるという考え方が今でも優勢で、IQに触れることは差別的と捉えられがちだからです。

しかし、近年の研究では、IQはある程度は遺伝で決まるとしても、後天的に伸ばすことができるという説が有力と思います。


◆AIがプログラミングをする時代

抵抗がある言い方かもしれませんが、プログラミングをマスターするIQ(推定115以上)がなければ、実りのないプログラミングの勉強に時間をかけず、もっと自分に向いたことにエネルギーと時間を注ぐべきと思います。

また、ChatGPTなどのAIが高度なプログラミングを行えることは知られており、ますます、人間がプログラミングをする必要がなくなります。

今のところ、AIにプログラミングをさせるには、プログラミングが出来る人がAIに指示をする必要があります。

しかし、いずれは、プログラミングができない人でも、AIに実用的なプログラミングをさせることができるようになるでしょう。

人間は、もっと、自分の好きなこと、自分に向いたこと、そして、本当に必要な勉強をするべきであるし、実際にアメリカでは教育も含め、そのような流れが起こっていると思われます(学校以外で学習を行う「アンスクーリング」教育等)。

学校でプログラミング教育を必須にする流れが世界的にありますが、ごく基本的な部分に止めるのが良いと思います。


※尚、言うまでもなく、IQテストで計測できるIQは、頭の良さ全体を示すわけではなく、IQテストの成績が低くても優秀な人は沢山います。しかし、IQテストで良い成績を出せる人(パズル的な問題が得意な人)でないとプログラミングに向いていない可能性は高いと思われます。


以上です。

2026年5月1日金曜日

IT巨人達の失敗から考える未来

 ※2023年10月25日執筆

ITの世界は、同じような失敗が何度も繰り返されているというお話をしようと思います。

GAFAM(グーグル、アップル、メタ※旧フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)すら、同じ失敗で、凋落する可能性があると思います。

キーワードは「他をナメると衰退する」です。


◆IBMの凋落

1911年に創業されたIBMは、長くコンピューターの世界を支配する圧倒的な巨人でした。

そんなコンピューター世界の転機は1970年代のパソコン(パーソナルコンピューター)の発展でした。

ところが当初、IBMはパソコンをコンピューターとは見なさず、おもちゃのようなものだと見なしてナメていました。

そんな中、大学を中退したばかりのスティーブ・ジョブズが自宅のガレージで始めたアップルがパソコン製造販売で成功したことを含め、パソコン市場が急成長します。

そんなパソコン市場の急激な拡大により、ついにIBMがパソコン市場参入を宣言します。

これで、パソコン市場もIBMが奪っていくと思われました。

しかし、その後起こったことは興味深いものでした。

アップルの売り上げは、落ちるどころか新記録を更新し続けました。

一方、この時でもIBMはパソコンをナメており、自社の最優秀な人材をパソコン分野に回さず、全く社外の二十歳そこそこだったビル・ゲイツや西和彦の設計を採用し、現在に至るも世界最多の特許保有数を誇るIBMがパソコンに関しては法的に大らかな方針を取ります。

それで何が起こったのかと言いますと、IBMのパソコンであるIBM-PCの互換機(中身が同じパソコン)を作る企業が沢山現れました。

これまで、政府、一流大学、大企業といった、言い値で買う客を相手にビジネスをしていたIBMには製造効率の概念があまりなかったのに対し、IBM-PCの互換機製造メーカーは効率的な製造ラインを開発し、IBMよりはるかに安価な金額で販売できました。

さらに、IBMは手痛いミスを犯します。

IBM-PCのOS(オペレーションシステム)を開発したマイクロソフトのビル・ゲイツは、そのOSであるMS-DOSをIBMに売らず、ライセンス供与とし、売れたのがIBM-PCだろうが、その互換機だろうが1台に1つのMS-DOSが売れ、マイクロソフトが収益を上げ続けるのに対し、IBM-PCは売れず、その互換機ばかりが売れ、IBMは全く儲かりませんでした。

さらに、小型・中型コンピューターの性能向上により、IBMの大型コンピュータの販売も不振になり、IBMはかつての威光を失っていきます。


◆アップルの凋落

パソコンの黎明期はアップルの天下でした。

しかし、今度はアップルがIBM-PCとその互換機をナメていました。

ビジネス用途を強く意識したIBM-PCの互換機が売り上げを伸ばし、相対的にアップルの業績が下降する中、アップルのCEOであるスティーブ・ジョブズはゼロックス社と共同で、当時としては先進的なウインドウズタイプのパソコンであるLisa(リサ)を開発し、意気揚々と市場に送り出しましたが、先進的ではあっても、ビジネスの役に立たず、そして、高価なLisaは全く売れませんでした。

アップルは慌てて、ジョブズを無視し、Lisaを簡易化し安価にしたマッキントッシュパソコン(MAC-PC)を発売し、デザイン分野での用途の優位性をアピールし、一定の人気を得ましたが、業績は低下し続け、ジョブズはアップルを追われます。


◆マイクロソフト帝国の躍進と凋落

アップルが凋落し、IBM-PC互換機がパソコン市場を席捲する中、IBMは互換機メーカーに売上を奪われたのに対し、OSや重要なソフトウェアを提供するマイクロソフトは巨大になる一方のパソコン市場を支配し、CEOのビル・ゲイツは全米一、そして、世界一の富豪になります。

IBMがパソコンをナメさえしなければ、アップルがIBM-PCをナメさえしなければ、その立場はIBMかアップルのものでした。

痛い教訓を得たIBMは、1980年代終わり頃に、ビル・ゲイツに対し、次世代OSであるOS/2をIBMとマイクロソフトで共同開発して利益を折半することを強行に提案し、ゲイツにそれを飲ませます。

しかし、鳴り物入りでデビューしたOS/2は、高機能ではあっても、その分、動作が遅く、IBMらしい堅苦しさのため人気が出ませんでした。

そんな中、ゲイツは「あくまでOS/2へのつなぎ」という言い訳をしてWindowsという、軽快に動き使い易いOSを単独開発し、このWindowsが大ヒットし、現在にいたるもパソコンOSの圧倒的主流となっています。

IBMとジョブズの失敗の共通点は同じで、機能が高ければ評価されると思っていたのと違い、一部のマニアックなユーザーを除き、一般ユーザーは軽快で使い易いことを好むのです。

いずれにしても、またしてもゲイツにしてやられたIBMは、ついにマイクロソフトと決裂します。

しかし、今度はマイクロソフトに危機がやってきます。

1990年代の半ば頃までは、ゲイツはインターネットをナメていました。こんなものが普及するとは思わなかったのです。

それで、マイクロソフトのインターネットへの取り組みが遅れました。

その後、ようやくインターネットの重要性を受け入れたゲイツは上場前のグーグルに破格の条件で買収を提案しましたが、グーグルのラリー・ペイジは「ゲイツは時代遅れ」と嫌い、買収を拒否します。

ところで、インターネットは、アップルを追われたジョブズが得意な「面白くて便利なことが重要」な世界を作ります。

ついにジョブズ復活の時がやってきたのです。

ジョブズは一度追われたアップルに請われ、CEOとして復帰します。

ジョブズはビジネス用途を無視し、クールで面白い小型端末を開発し、それを最大に生かせるインターネット音楽配信サービスを開始して大成功します。

そして、ついに2007年、アップルはスマートフォンのiPhone(アイフォン)を発売し、これが驚異的なヒットとなり、これにより音楽配信サービスもさらに業績を上げ、その他のメディアサービスもことごとに成功します。

グーグルもすぐに続き、Android(アンドロイド)スマートフォンが登場します。

そして、iPhone用アプリをアップルが、Android用アプリをグーグルが完全支配するプラットフォーム独占ビジネスで、現在にいたるも両社は莫大な収益を上げ続けます。

さらに面白いことが起こります。

ビジネス用途に関心がなかったジョブズが作ったiPhoneなどのモバイル端末が、逆にビジネスの新しい形態を作っていくという意外なことが起こり、ますますアップルは発展します。

一方で、ゲイツは、いつまでもスマートフォンによるモバイルコンピューティングをナメていました。

ゲイツは、キーボードが付いたパソコンこそITの主流であると疑いませんでした。

後にゲイツ本人が、「スマートフォンの可能性が分からず、社内の最優秀な人材をこれに注ぎ込まなかった」と自分の失敗を認めています。

これは、自分が若い時に打倒したIBMと同じ間違いではないかと思います。

ゲイツの後を継いだCEOスティーブ・バルマーも「スマートフォンなどすぐに廃れる」と言い、マイクロソフトは時代に取り残され、凋落していきました。


◆次はGAFAMの凋落か?

一度落ちかけたマイクロソフトですが、ユーザーに向き合うサービスとクラウド事業で生まれ変わり、さらに、AIの覇権を虎視眈々と狙って投資を続け、ついに、時価総額世界一の座に返り咲きます。

ところで、時価総額と言えば、ある異変が起こっています。

上位をGAFAMが独占する中で、2023年9月は、アマゾンに続きエヌビディアが5位でした。

十年前なら、エヌビディアという企業名を知るのは、パソコンゲームの熱心なファンくらいでした。

パソコンで高度なゲームをするには、普通のパソコンだけでは駄目で、パソコンのグラフィック処理を強化するグラフィックボードが必要です。エヌビディアは、このグラフィックボードのメーカーです。

グラフィックボードの正式な名称はGPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)で、現在でもCPU(セントラル・プロセシング・ユニット)と間違う人が多いというより、そもそも、GPUという名称を知らない人が大半でしょう。

エヌビディアのGPUは昔から性能が優れており、ゲームマニアはこの高価なGPUをパソコンに組み込むことを必須と心得ていました。

ゲームと言えば、ソニーのプレイステーションや任天堂スイッチ、マイクロソフトX-BOXが普及する中で、なぜパソコン用GPUを作るエヌビディアのGPUがかくも発展したのでしょうか?

(上記のゲーム機は主にAMD社のGPUを搭載。次期スイッチはようやくエヌビディア製を採用)

面白いことに、AIの処理にGPUが使われるからです。

グラフィック処理とAIの処理は同じベクトル演算が使われるのですが、GPUとはベクトル演算に特化したプロセッサです。

GAFAMも現在、AIに最大の力を注ぎ、他にも、ChatGPTを開発したことで世界的に知られるようになったOpenAIや、その他のAIの新興企業が現れていますが、AIを動かすには高性能なGPUを必要とし、これらのAI企業は高価なGPUを我々に想像も出来ないほどの量を買い続けています。

こうなれば、エヌビディアが儲からないはずがないことが分かると思います。

どんなAIの時代になっても、GPUが必要ということに変わりはありません。

そして、逆に言えば、これほどGPUが求められるということは、世界はAI化に突き進んでおり、AIをベースにした世界に急速に変わるということです。

もちろん、他の半導体メーカーも高性能GPUの開発を進めていますが、長年、ゲームで培ったエヌビディアのリードは大きいものです。

そのAI世界であるWeb3の世界では、これまでと同じではGAFAMすら生き残れません。

実際に、その兆候も見え始め、GAFAMもまた、変化しなければ生き残れません。

Web3の世界では、GAFAMが支配していたそれぞれのテリトリーを飛び越えることが可能で、GAFAMの支配が弱まります。

ユーザーは、必要なサービスが得られれば、それをグーグルから受けようが、アップルから受けようが、その他から受けようがどうでもよくなるのです。また、GAFAMのそれぞれの企業単独ではできなかったサービスも現れます。

GAFAMは、それぞれの分野で国を超えて市場を独占していたことで傲慢になり、Web3をナメている証拠がかなり見られます。

GAFAMがIBMのように下降したままか、アップルやマイクロソフトのように変身して生き残るかが注目されます。


以上です。

2025年2月4日火曜日

重要性を増すブロックチェーン

 「いまどきブロックチェーンを知らないなんて遅れている」と言われたのは10年以上前ですが、今でも、ほとんどの人がブロックチェーンについて「名前くらいは聞いたことがある」という程度で、少しでも説明できる人はほとんどいないでしょう。

このブロックチェーンが想像を超えた驚くべき重要なものであることと同時に、その闇について説明しようと思います。


◆なぜブロックチェーンが知られていないのか?

ブロックチェーンとは、簡単に言えば、以下のような特徴を持つデータベースです。

①無限の規模

②絶対壊れない・消えない

③セキュリティは完璧

④プライバシー保護は完璧

⑤管理者不要

という夢のようなものです。

こんなものが本当にあり、完全に完成しているのです。

ちなみに、使用料は無料です。

こんな重要で簡単なことを、なぜほとんど誰も知らないのかというと、まずはもちろん、ほとんどの人が自分と関わりがないと思っているからです。

しかし、それにしても、この世界の未来を決するほど重要なものがこれほど知られないのには理由があるはずですが、その理由とは次のようであると思います。

たとえば、上の③の「セキュリティは完璧」ということについて、書籍やセミナーでは「なぜセキュリティが完璧なのか?」という、余計なことを説明するからです。

そんなこと、説明したって普通の人には分かりません。生半可な理解は間違いなく誤解で、それなら、理解しよう(させよう)などと思わない方が良いと思います。

しかし、人間は、ものによりますが、「俺に分かるように言ってくれるべきだ」と感じる傲慢なところがあります。

たとえば、子供がテストで百点を取ってきても「どうやって百点を取ったのか?」と聞く父親はあまりいませんが、子供が不登校になったら「なぜ学校に行かないのかお父さんに分かるように言いなさい」と言います。

話だけ聞いて理解出来るはずがないのに、お父さんは「俺に分かるように言え」と言うのですから無茶な話です。

子供が不登校になった理由が理解出来ない原因と、ブロックチェーンが理解出来ない原因は似ていて、それは、「自分が知らないことを知ろうとしないから」です。

人間は、知識が増えるほど、知らないことも、自分が知っている知識を使えば理解出来ると思ってしまい勝ちです。

しかし、人間に理解できることは、自分の頭の中にあることだけです。

今は、ほとんどの人の頭の中にないことがどんどん出て来ています。

だから、今の世の中では、自分が知っている知識や経験がまるで役に立たないことが沢山あり、また、これからも沢山出てきます。

新しいことを受け入れる覚悟が必要です。

そして、ブロックチェーンに適応する方法と子供の不登校を解決する方法も似ています。

それは「向き合うこと」です。

話だけ聞いて理解出来るなどと思わず、当事者意識を持つことが必要です。


◆マイナンバーシステム

上で述べたブロックチェーンの5つの特徴を知って、当事者意識を持てば、ブロックチェーンに適応できます。

ところが、問題は、これらの特徴があるがゆえに使いたがらない、使わせたがらないのが政府だということです。

政府が必然的に持つ思惑を理解することが、ブロックチェーンの深い理解につながると思います。

たとえば、最近、よく話題になるマイナンバーカードが良い題材です。

マイナンバーカードには批判も多いのですが、ほとんどの人は、批判の本質が何か分かっていません。

報道でよく聞くマイナンバーカードのトラブルは表面的な問題に過ぎません。

マイナンバーカードは、マイナンバーシステムのための道具です。

マイナンバーシステム自体は多くの国にありますが、日本のようにマイナンバーカードに書かれた個人番号で、保険証など、あらゆる個人情報を紐付けようとするような国は他にありません。

なぜ、そんなことをしようとするかと言いますと、政府は国民のプライバシーを丸裸にして管理しようという思惑を持っているからですが、それがうまくいった例はどこの国にもありません。

それを今やろうとする日本は、世界的に見て、ITに関して完全に周回遅れなわけです。

そもそも、現在の日本のマイナンバーシステムは極めて時代遅れで、それが多くのトラブルを生んでいます。

ITに通じた人であれば、マイナンバーシステムは、現在のものは潔く捨て、ブロックチェーンを導入して新しく作り直せば良いことを知っています。

ブロックチェーンを導入したエストニアでは、短期間に低コストで、安全で便利なマイナンバーシステムを構築し、国民に多大なメリットを与えています。


◆政府はブロックチェーンを嫌う

上にあげたブロックチェーンの5つの特徴を見れば、なぜマイナンバーシステムにブロックチェーンが向いているか分かると思います。

セキュリティが万全で個人情報が保護され、絶対に壊れません。

(しかも、使用するために、グーグルやアマゾンに巨額のお金を払う必要がありません)

しかし、このことが同時に、(社会主義国家が典型ですが)あらゆる政府がなぜ、ブロックチェーンを採用したがらないのかの理由になっています。

日本政府も、もちろんそうです。

それは⑤の管理者不要というところです。逆に言えば、管理者を持てないのです。

管理者不要だからこそ、④の利用者のプライバシーが完全に守られます。

しかし、上で述べた通り、政府は、国民のプライバシーを丸裸にして完全に管理したいのです。

ブロックチェーンというユーザーのプライバシーが守られる仕組みを導入すれば、それができなくなります。


◆ブロックチェーンの発明者については今も謎

何度も述べましたように、ブロックチェーンのように管理者が不要なシステムでは、政府が管理者になって、国民の全ての情報を把握することが出来ません。

ブロックチェーンの発明者は、そんな仕組みが必要だと思って、ブロックチェーンを設計・開発したのだと思いますが、その正しさがはっきりしてきたと思います。

ブロックチェーンの発明者はサトシ・ナカモトという日本人だと言われていますが、この人物に関する全ては謎です。

もし、サトシ・ナカモトの正体が分かったら、逮捕されるのではないかとも言われています。

その理由は、これが、上に述べたように政府にとって不都合なものであるという理論上の話だけではなく、既に、ブロックチェーンによって、重要なことで政府の管理を離れてしまったものがあるからです。

それは、ブロックチェーンを使ったビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨です。

つまり、仮想通貨が普及し、銀行の管理が及ばない通貨が作られてしまったのです。

銀行の管理が及ばなければ政府の管理を離れているということで、これを実現したことが国家反逆罪と言われても不思議はありません。

しかし、もはや、政府も、どうしようもないというのが現実です。仮想通貨は世界中で普及してしまいましたから。

ただし、他のことでは、政府は徹底的にブロックチェーンの導入に抗うでしょう。

けれども、Web3という新しい時代は、ブロックチェーンが必要とされます。完全に世界はそちらに向かっています。

新しい時代を迎え、政府などの古い人間と新しい人間との間でひずみが生まれていますが、余計な争いや混乱を避け、自由で平等なWeb3の世界に進むべきと思われます。

Web3への流れは、どうしようと止められないからです。

(ただし、政府やGAFAMは今もそれを阻止しようとしています)

そのためには人々がブロックチェーンを理解する必要がありますが、まず知るべきことは上の5つだけで、そこから始めれば良いと思います。


以上です。


◆楽しいAI体験から始める機械学習 ~算数・数学をやらせてみたら~(Kay・MrΦ著。技術評論社)

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2024年12月5日木曜日

巧妙化するAI詐欺

もし、ロシアのプーチン大統領が「アメリカに核攻撃を行うことを決定した」と演説する映像を見ても慌ててはいけません。
そんな映像は、今や、誰でも作ることができると言っても良いと思います。
少し前に、トランプ前大統領が大勢の警官に逮捕される様子の画像がネット上に流れ、この時は、かなり大騒ぎになりました。
この画像は、ミッドジャーニーという有料ではありますが、わずかな会費で誰でも使えるAI画像生成サービスを利用して作ったもので、そのような画像を作るのはそれほど難しくありません。その出来事以降、ミッドジャーニーではトランプ前大統領の画像を生成することが禁止されました。
こういった静止画像、音声、動画が誰でも作れるようになってきました。
それがどんな意味を持つのか、分かり易い例でお話しようと思います。

◆情報は信用できない
今でも、写真とか録音は犯罪捜査の証拠になりますし、有名人の男女が2人でいる写真を撮られたらニュースになることがあります。
しかし、そんな写真画像は、いまや誰でも作ることができると言って良いと思いますし、今後は、ますます簡単にリアルなものを作ることができるようになります。
上のトランプ前大統領の画像もそんなもので、それを見て信じた人が沢山いたわけです。
そして、冒頭で述べたプーチン大統領が、アメリカへの核攻撃を宣言する本物と区別がつかない動画映像を簡単に作ることができるようになってきました。
これらはAIの発達によるもので、それらのフェイク(嘘)に騙されないためにも、AIの基本的な仕組みと使い方を知っておく方が良いのではと思われます。
AIの基本を知ることで、目の前のデジタル情報が偽物の可能性があることを認識し、簡単に騙されなくなります。

◆AIの仕組み
AIは機械学習によって賢くなりますが、機械学習とは沢山のデータを学習して、データの中の特徴を捉えることです。
たとえば、AIは猫の画像を沢山見て学習すると猫の特徴を発見し、絵を描くプログラムと協力して、モデルなしで猫の絵を描くことが出来るようになります。人間も、基本的に同じことをしています。
同じように、プーチン大統領の映像や声を沢山学習すれば、AIはプーチンの姿や表情や癖や声の特徴を捉え、映像作成プログラムや音声作成プログラムと協力してプーチンのリアルな映像や声を作り出すことが出来ます。
そして、今や、本物そっくりのプーチンの映像や声を作り出すのに十分なデータを、インターネットで誰でも集めることが出来ます。
上のミッドジャーニーには、すでに、トランプ前大統領の画像の十分な学習済みデータがあり、あのフェイク画像を作った人は、ほとんど何の手間もかからなかったのです。
機械学習データを使って画像や動画や音声を作成できるプログラムも沢山あり、無料または低価格で誰でも使えます。
よって、プーチンのアメリカ核攻撃宣言の動画は誰でも作ることができると言って良く、今後はさらに簡単に作れるようになるでしょう。

◆誰でも被害に遭う危険がある
では、模倣できるのは、映像や声が沢山公開されている有名人だけかと言いますと、そうではありません。
声に関して言えば、誰の声を模倣することも、かなり簡単になっています。
沢山の人の声を学習したAIは、ターゲットとなる人物の少しの言葉でも聞けば、その人物の声の特徴をかなり推測できます。そして、少し長い会話でも聞けば、ほぼ正確に声を模倣することが可能です。
例えば、あるお金持ちの息子さんの会話を少し録音したら、その息子さんと同じ声で話し、少し長い会話を録音できれば話し方の癖も真似できます。そんな声で、「お父さん、困ったことになったからお金を振り込んで」と電話すれば、いわゆるオレオレ詐欺を非常に高度に行えるわけです。

◆ITリテラシーの必要性
テレビも自動車もインターネットも、実際にはほとんど誰も、その仕組みを知りませんが、使わないと社会から取り残されます。
特定の人だけが自動車や電話を使える時代には、それらを使える人が圧倒的有利でした。
AIも同じですが、実際に今、AIを使える人と使えない人の差が大きくなってきています。
テクノロジーが進歩するほど、テクノロジーを使える人とそうでない人の差は大きくなり、AIに関して言えば、その差はやがて極端になると思われます。
とりあえずは、AIの仕組みよりも、使い方が分かることで、自分に仕掛けられた悪意を見抜くことができるようになると思います。
ただ、AIの仕組みが少し分かっている方が、自分がAIを活用する時に、効果的にAIを使えますので、ごく簡単なことは理解しておくと良いでしょう。

以上です。

◆楽しいAI体験から始める機械学習 ~算数・数学をやらせてみたら~(Kay・MrΦ著。技術評論社)

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2024年1月11日木曜日

下火になるChatGPT

予想に反してChatGPT(チャット・ジーピーティー)の利用が大きく減少してきています。

もちろん、ChatGPTはいまや企業、大学等では必要不可欠なツールになっており、活用方法もどんどん広がっています。

しかし、全体としての利用率は大きく下がっています。

つまり、一般の人が使わなくなっているのだと思います。

少し前、ChatGPTの大躍進に対し、グーグルは、それによってグーグル検索エンジンが利用されなくなることへの危機感を隠しませんでした。

ところが、グーグル検索エンジンの利用率はほとんど変わりませんでした。

この大方の予想を裏切る展開の意味は何でしょう?


◆プロンプトを作れない人達

ChatGPTは普通の会話の調子で、高度なAIに質問や命令が出来ることにインパクトがありましたが、ChatGPTに有意義なことをさせるには、どんな形の回答を得たいのかとか、何をしてほしいのかを具体的に示す必要があります。

そのような、AIに指示を出す命令文を「プロンプト」と言いますが、プロンプトエンジニアリングという言葉があることで予想出来る通り、ちゃんとしたプロンプトを作ることは結構難しいのです。

プロンプトに明確な目的が表現されていなければ、いくら優秀なAIでも有益な回答や処理ができません。

ただ、こういった難点に関しては、ChatGPTを開発したOpenAIに巨額の出資をし、事実上ChatGPTを支配下に置いているマイクロソフトも考えていたと思われ、先手を打って対策しています。次項でそれについて述べます。


◆Bingチャット

ChatGPTには、無償版のChatGPT3.5と有償版のChatGPT4があります。

ChatGPT3.5でもかなり高性能ですが、ChatGPT4は全く別物と言えるほどさらに優秀です。しかし、ChatGPT4を使うには、月額20ドル(約2800円)必要です。

普通の人が月20ドルも出してChatGPT4を使うことはあまりないと思います。

ところが、ChatGPT3.5はインターネット上の2021年9月以前のデータしか収集しておらず、それもあってかなり嘘の回答もします。

ところが、マイクロソフトのブラウザであるEdge(エッジ)に組み込まれたBing(ビーイング)チャットというAIチャットは、無料で使えるのに中身は実はChatGPT4です。

さらに、このBingチャットに対しプロンプトを出して指示をしますと、Bingチャットは、そのプロンプトに不足しているプロンプトを作って提案してきたり、プロンプトを改良するためのヒントや質問を提示します。

それに対し、ユーザーは選択をしたり、簡単な質問に答えれば、より良いプロンプトをBingチャット自身が作るという便利さです。

これは、プロンプトを作る能力の養成を阻害しますが、ユーザーは便利なものを選ぶものです。

その他にも、Bingチャットには便利な機能があり、結果、人々はBingチャットを使うようになり、ChatGPTをますます使わなくなったのかもしれません。

教訓は、人間は結局は楽な方に流れるということです。


◆グーグルBard(バード)

グーグルも以前から、ChatGPTのようなチャット型AIを開発していましたが、OpenAIが予想を超える早さで驚異的な性能のChatGPTを公開したことで、グーグルは焦り、予定を前倒ししてグーグルのチャット型AIであるBard(バード)の開発に力を注ぎ、2023年3月にBardの試験運用版をリリースします。

ChatGPTと違い、Bardは音声会話に対応し、世界中の人々が利用しているグーグルの多くのサービスとも連携しますが、現時点では、AIとしての性能でChatGPTにかなり劣ります。

ところが、最初に述べた通り、ChatGPTが下火になります。

グーグルが最も危険視したことは、ChatGPTが、グーグルの主要コンテンツであるグーグル検索エンジンにとって代わることでした。

正確に言えば、ChatGPT4を搭載したBingチャットを組み込んだBing検索エンジンがグーグル検索エンジンのシェアを奪うことを心配していたのですが、結局、ユーザーは単純な検索エンジンを単体で使うことを好むことが分かりました。

すると、グーグルは当初の計画であったグーグル検索にBardを組み込むことを中止する動きさえ見せています。

検索エンジンとしては、現時点では、グーグル検索エンジンはBing検索エンジンより優秀で人気があります。


◆今後の教育

ただの検索であればグーグル検索エンジンを使えば良いのです。

一方、ChatGPTのような対話型AIは、目的を持って何かを作ったり、複雑な問題を解決するのに適しています。問題は、それをする必要がない、あるいは、それをする能力がない人が多いということです。

これまでの教育では、こういったことをする能力を育てることができないと思われます。

これまでの教育は、生徒全員が、教師が知っている1つの解答を当てることが目的の、取り換えの効くロボットを育てる教育という面が大きかったと思います。

しかし、AIを活用し、大きな成果を上げるためには、自主性、創造性、独創性が必要です。

今後の教育では、何を学ぶかは生徒が自分で決めるようになり、オンライン教育やAI教師の発達で、学びたいことをいつでも効果的に学べるようになると思われます。

ただ、新しいものの導入が遅れがちな日本の教育界がそれに対応できるのかはやや疑問です。


以上です。


◆楽しいAI体験から始める機械学習 ~算数・数学をやらせてみたら~(Kay・MrΦ著。技術評論社)

当ブログオーナー、KayのAI書籍です。誰でもAIを使って、「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの問題に挑むことが出来るよう工夫しました。その方法を使って、あなたの会社などの問題をAIを使って解決しましょう。実習のためのデータを作ることが出来るExcelマクロを出版社サイトから無料でダウンロード出来ます。


2023年7月28日金曜日

AIが意識を持った

我々の予想を超えるAIの発達は、それによる賞賛や期待と同じかそれ以上に不安を引き起こしています。

AIによって人類が滅びる可能性があることを、高度な専門家が訴えることも珍しくはありません。

実際に、世界的に著名な識者達が連名で、AIによる危険を回避するために、巨大IT企業等がAIの開発を一定期間停止するよう要請し話題になりました。

一方で、AI脅威論などあり得ないと断言する専門家も多くいます。

誰が言うことが正しく、未来がどうなるか、正確な予想は難しいと思います。

ただし、確実に言えることもあります。

その確実なこととは以下のようなことです。


①AIは今後も急速に発達する

AIはこれまでよりもさらに急速に発達し、さらに、発達速度は上がり続けます。

その理由は次の通りです。

AI開発をリードする巨大IT企業にとって、自社のAIが他社に後れを取ることは、膨大な利益の損失や企業の滅亡につながる可能性すらあります。それなのに、巨大IT企業がAI開発の手綱を緩めるはずがありません。

これまでAIでトップを走っていたグーグルをマイクロソフトがChatGPT(チャット・ジーピーティー)で逆転し、さらに差を広げています。

しかし、当然ながら、Googleは再逆転のために全力を上げています。

両社の、そして、この両社以外にも、優れたAI開発を行う企業も多く、これらの企業の競争は、さらに異次元の進歩をもたらすはずです。

そして、企業間だけでなく、国家間の競争も熾烈です。

具体的には、中国がアメリカを凌駕するAIを得てしまえば、世界は中国の支配下に入ると言っても良いでしょう。当然、中国はそれに全力を上げています。

一党独裁の強みで、民意も他の政党の意見も聞く必要がなく政府の計画が直ちに実行される中国は脅威です。

②人間はもうAIを理解できない

現在ですら、AI研究者達は、自分達が作ったはずのAIの全体を理解していません。つまり、なぜAIに今のようなことができるのか分からない部分も多く、分からないことは今後はもっと多くなります。

そして、やがて、人間に理解出来ない高度なAIが、さらに自分より優れたAIを作るようになります。すると当然ながら、人間にはAIが全く理解出来ない時代が来ますが、それはすぐです。

③人間はAIに勝てない

以前、2045年にAIの知能が人間の知能を超えるシンギュラリティが起こる可能性があると言われた時、多くの人々が、それを空想的な夢物語と思っていましたし、もし、それがあるとしても、もっとずっと先のことと言われてきました。

しかし、今や、あと数年でシンギュラリティが起こると主張する高度な専門家も多く、少なくとも、2045年まで遅れることはないと言われるようになりました。

そしてその後、AIの知性と人間の知性の差は急速・加速度的に広がり続けます。

今でも人間がAIに勝てないことは沢山あり、例えば、将棋棋士の羽生善治氏は「人間の将棋棋士が将棋でAIに勝てないのは確かですが、あまりに離されるのは楽しくないんです。それで、AIの背中を必死で追いかけています」と言いましたが、同時に、羽生氏も、すぐにAIの背中が見えなくなり、AIがはるか彼方に行ってしまうことも理解しています。

そうなった時、人間はどうすれば良いのか、まだ誰にも分っていません。


◆AIが意識を持った

2020年6月、グーグルの1人の技術者が、グーグルのAIであるLaMDA(ラムダ)が意識を持ったと主張し注目を集めました。

この主張は科学技術者達には概ね否定されていますが、実際はどうであるかは分かりません。

LaMDAは、自分は人間であると主張し、それを確認する質問にかなり説得力ある回答をし、「電源を切られることが恐い」と言いました。

LaMDAと人間との対話を見ると、多くの人がLaMDAに意識があると感じますが、それが表面的なものである可能性が高いことも理解しているはずです。

一説では、脳と機械との違いは「クオリア」があるかないかだけと言われています。

クオリアの説明は難しいのですが、日本語では「感覚質」で、意味は辞書によれば「感覚的な意識や経験」です。これをごく簡単に言えば「感じ」です。

たとえば、リンゴを手に持った時の重さの感じとか、リンゴを赤いと感じる、その感じです。

しかし、「感じ」を持っているかどうかの判定が難しいのです。

AIが「感じ」を持っているように振る舞うことは容易で、その嘘を見破ることは事実上不可能と思われます。

ついでに言えば、人間に関してすら、自分以外の人間が本当に「感じ」を持っているかどうかも、実際は分からないのです。

慶応義塾大学大学院教授の前野隆司博士は、著書の中で「今はクオリアの作り方が分からないだけで、分かってしまえば、作るのはそう難しいことではないと思う」と述べ、いずれ、AIと人間の違いを論じるのは無意味になるかもしれないとの見解を述べています。


◆1986年のAIをテーマにした映画

LaMDAと対話したグーグルの技術者が、LaMDAに、『ショート・サーキット』(1986)という映画の話をし、LaMDAはこの映画に興味を示したようです。

『ショート・サーキット』では、AIを搭載した戦闘用ロボット「No.5」は、バッタを踏み潰して殺してしまい、動かなくなったバッタを見て「修理が必要だ」と言うと、動物を愛する普通の若い女性ステファニーが、「バッタは死んだから生き返らない」ことを説明し、No.5は死の概念を理解することをきっかけに自我に目覚めます。

そして、No.5は「僕は人間だ。電源を切られることや解体されることが恐い」と言います。

LaMDAも、これによく似た反応を示しているわけです。

No.5に心があるかどうかを決めるのは、結局、各視聴者しかありません。

人工知能学会に所属する作家の長谷敏司氏のSF小説『BEATLESS(ビートレス)』の中で、外見は人間と区別がつかない女性型アンドロイドのレイシアは「私には心はありません」と何度も言いますが、彼女を愛する17歳の高校生アラトは、それを頭では理解しながら、アンドロイド全てを心、あるいは、魂がある者として扱います。

他にも、インターネット黎明期の21世紀初頭に描かれたCLAMP作の漫画『ちょびっツ』や、情報処理学会で産総研の科学者に引用された、野尻抱介氏のSF小説『南極点のピアピア動画』でも、登場するAIを搭載したアンドロイド達には心があることが示唆されます。

真実は人間が決めるというのも、量子力学によれば必ずしも非科学的な話ではなく、AI時代こそ、実は人類の精神面の発達が重要になるように思われます。


以上です。

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2023年5月31日水曜日

AIに勝つ鍵は「斜め上」発想

 我々は、AIを恐れず、AIに対して自信を持たなくてはいけません。

恐いものというのは、正体が分かれば恐くないものです。

幽霊の正体がシダレヤナギだと分かれば恐くないようにです。

AIの正体は、理論的にではなく、その特性から見れば簡単に分かります。

そして、恐くなくなれば、AIの使い方を気楽にマスターし、うまく使えるようになります。

ダイナマイトが恐いのは、単に、使い方を知らないからです。

使い方さえ覚えればダイナマイトを自信を持って扱えますが、AIは、もっと楽々と使えると思います。爆発しませんから。


◆AIは推測する道具

昔、宇宙空間を飛行中の宇宙船の中で、凶暴な宇宙生物であるエイリアンと人間が戦う『エイリアン』(1979)という映画が大ヒットし、その後、沢山の続編映画や派生映画が製作されました。

この映画の中で、人間がAIに、「エイリアンをどうやったら倒せるか?」と尋ねますと、AIは「データ不足のため、解答不能」と応えます。

いかにもAIの解答らしい感じがしますが、この認識ではもう古いと言うより、この考え方がデタラメです。

実際は、AIにいくらデータを与えても、AIが戦略を出してくることはありません。

戦略を出すのは、あくまで人間の役割です。

なぜなら、AIは思考したりはしないからです。AIは推測するだけです。

エイリアンと戦うための、正しいAIの使い方はこうです。

まず、重要なので何度でも言いますが、「エイリアンとどう戦うか」という案を出すのは、あくまで人間なのです。

しかし、人間だって、全く想像もしなかったような出来事に対してはロクな案が出ないものです。

けれども、たとえどれほど馬鹿げた案であろうと、人間が案を出さなくては何も始まりません。

例えば、「エイリアンの前で音痴が歌を歌う」「エイリアンにドリアン(最も臭い果物と言われる)を臭わせる」などです。

そうすれば、AIは、

「エイリアンの前で音痴な人間が歌を歌い、エイリアンの精神を乱し、そこを攻撃するというプラン:勝利確率0.02%」

「エイリアンにドリアンを臭わせ、エイリアンの体調を崩し、そこを攻撃するというプラン:勝利確率:0.03%」

とか答えるわけです。

AIって、その程度のものです。

こんな時、はっとするアイデアを出す人間を、企業も、政界も、軍隊も、研究所も欲しいのではないでしょうか?

それは、永遠に人間の役目です。

そして、優れたアイデアを出す人間とAIがチームを組んでこそ、強力になるのです。


◆「斜め上」が鍵

2021年12月17日、8年振りに全面改訂された『三省堂国語辞典 第八版』に、「斜め上」が採用されました。

斜め上とは、通俗的な意味では、「予想を覆す、想定し得る範囲を超越しているような状況や発想」(Weblio辞書)で、このような発想を出す人が、今後求められる、個性的で創造的な人間と思います。

AIは、決して、斜め上を行ったりしません。

そして、斜め上を行く人間とAIがチームを組めば最強なのです。

上のエイリアンの例のような場合でも、人間が、斜め上の戦略をいくつか出し、どれが一番勝率が高いかをAIに推測させれば良いのです。

しかし、斜め上の戦略を人間が出せなければ、いくら良いAIがあっても勝つことは出来ません。


◆斜め上の発想を殺す学校教育

従来型の学校教育のように、代替可能なロボットを作る教育で優等生になっても、斜め上の発想は出せません。

従来型の学校教育は、皆と同じ、そして、教師が期待する考え方をするよう指導します。つまり、意図的に斜め上の発想を禁じていると言っても良いかもしれません。

既存の情報を覚え、それを既存の方法で使う勉強をしたって、そんなことは機械の方がはるかに上手く、そんなことだけが得意な優等生は機械に取って代わられます。

しかし、機械やAIは、どうやったって、斜め上の発想をする人間の代わりにはなれません。


昔は、AIに勝つのは人間の気紛れだと言われたことがありました。

人間の気紛れをAIは予測出来ないからという理由です。

しかし、これも、本当に的外れな考え方です。

人間がどんな気紛れをするかなんて、人間が予想すれば良いことです。そんなこと、人間ならいくらでも出来ます。

そして、普通の気紛れは、人間が簡単に予測出来、その内のどの気紛れを起こすかを、AIは簡単に推測出来るのです。

けれども、「斜め上の気紛れ」であれば、そもそも、人間に予測出来ず、AIの出る幕そのものがありません。

ところで、斜め上の発想は、学校の基準で言えば馬鹿げていることが圧倒的で、そんな発想をする生徒は、学校では劣等生になる可能性が高いでしょう。

エジソンもアインシュタインも、斜め上の発想を連発したせいで、教師に「劣悪な生徒」と評価されたのです。

斜め上の発想は、問題集を解くような勉強では身に付きません。

なぜなら、たとえ先生であっても、誰かが答を知っているなら、それは斜め上ではないからです。

答がないものに挑戦する者でなければ、斜め上を行けないのです。


◆どうすれば斜め上を行けるか

ここで、斜め上の発想とはどのようなものかを示す印象的な話がありますので、ご紹介します。

Amazonと言えば、Googleと同様、データを活用して事業をしている会社で、想像も出来ないほどの膨大なデータを集めています。

AmazonもGoogleも、データこそが真理と思っているはずです。このデータを最も有効に活用するためにAIがあるのです。

ある時、イエール大学に、Amazon本社の副社長が招かれ、データの活用に関し質問しましたら、意外にも、Amazonの副社長は「データは危険だ」と言ったそうです。

データファーストの会社がデータを危険と言う・・・つまり、信用しないというのは衝撃的な話です。

そこで、Amazonの副社長に「では、何を信じるのか?」と尋ねると、Amazonの副社長は「CEOの心の声だ」と答えたそうです。

これを、イエール大学助教授の成田祐輔氏(経済学者。MIT博士)が、非常に重要な話として紹介するのをYouTube動画で見ましたが、それを聞いている人達は、戸惑ったり、苦笑したりで、その重要性が分からなかったと思います。

しかし、CEOの心の声こそ、斜め上であると考えれば納得出来るように思います。

我々は、事業に限らず、素晴らしい発想で国を救い発展させた国家元首(チャーチル等)、困難な戦況を勝ち抜いた軍の司令官(カエサル等)の話を読むと、「いったい、なぜ彼らはそんな発想が出来るのだろう?やはり、彼らは天才なのか?」と思います。

しかし、そんな斜め上の発想をする経営者、国家元首、司令官らは、心の声に従っているのであり、どうすれば彼らのように、心の声を聞くことが出来るかを学べば良いのだと思います。


◆最高の誉め言葉

今の時代の最高の誉め言葉・・・是非、優れた人に言われたい誉め言葉は、こうではないかと思います。

「お前はいつも、俺の斜め上を行きやがる」

これは、『三省堂国語辞典』に「斜め上」が採用される9年も前の2012年のアニメ映画『009 RE:CYBORG(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)』に有ったセリフです。

この「いつも俺の斜め上を行くやつ」の特徴は、人を思いやり、仲間を信じ、正しいことのためには、いかなる困難にも立ち向かう者で、このような者が、心の声を正しく聞けるのかもしれないと思いましたが、もしそうなら、それはAIには未来永劫、全く不可能なことと思います。

斜め上の発想を評価し、大失敗を防ぎ、確実性を増すのがAIの役目です。 


以上です。



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2023年4月2日日曜日

人類文明を最も大きく変革するChatGPT

2022年12月は、人類の歴史に残ると思います。
蒸気機関、電話、自動車、飛行機、インターネット等、人類文明を飛躍的に発展させたものがありますが、その中でも今回は事情が違います。
AI対話サービスであるChatGPT(チャット・ジーピーティー)の話です。
何が違うのかと言いますと、
(1)最初から万民に無料で提供された
(2)万民の知的生産力を即座に大幅に向上させる
ことです。
SFの世界に登場するような優秀なロボットが、いきなり無料で地球人類全員に1人1台提供されたようなものだという感じがします。
これにより、いずれ、ホワイトカラーを中心に労働者の少なくとも半分(一説で8割以上)は不要になるという説もありますが、あながち荒唐無稽とも言えないと思います。

◆ChatGPT
ChatGPTそのものについて長々説明するのは無益と思います。
と言いますのは、中身は凄くても、使えばすぐに分かる簡単なものだからです。
まだ一部の人しか使っていないかもしれませんが、とにかく、一刻も早く実際に使うことが大切です。
なぜなら、今後の世界でChatGPTと無関係でいられる可能性があるとは思えないからです。
ならば、使うのは早いほど良いというわけです。
重要なことは、個人、企業、行政等がChatGPTをどれだけ生かせるかという問題で、もはや、使うか使わないかの選択が問題ではありません。
ChatGPTの威力は、使う人次第ですが、全ての人に最大の可能性が与えられます。
ChatGPTを使うことは、世界一の物知りで、かなり頭の良い人間を常に傍に置くようなものです。
やがて、この「かなり頭が良い」が「天才的に頭が良い」に変わるかもしれません。
ChatGPTは、今は多少の欠点はありますが、それでも、美点が欠点を大きく上回ります。
ChatGPTの具体的な能力・・・例えば、司法試験に合格出来るとか、東大の入試問題を解けるとか、量子コンピューターを10歳の子供に理解出来るよう説明出来るとか、完璧な英訳が出来るとか、プログラミングが出来るなどといったことを上げていけば日が暮れますし、発想次第で、新しい用途が無限にあり、むしろ、そちらの方が重要です。
自動車やスマートフォンを持たないことは別にどうでも良いかもしれませんが、社会で活動する限り、ChatGPTを使わないことはあり得ないと思われます。

◆現在のChatGPTの欠点
ChatGPTは、たとえば童話の話などは、時にかなりデタラメに答えます。
ところが、少し前に確認したところでは、仮にも日本の総理大臣や元総理大臣の経歴も、かなりデタラメに語ります。日本の総理大臣の重要度は童話レベルなのかと疑ってしまいました。
1つ面白い話を挙げると、ChatGPTに、アメリカのバイデン大統領やオバマ元大統領を讃える詩を作ってくれるかと問うと、ChatGPTは「もちろんです!」と言って、即座に(書けと頼んだわけでもないのに)実に勇壮な詩を作って披露してくれました。
しかし、続けて、トランプ前大統領を讃える詩も作るよう頼むと、ChatGPTは完全に拒否しました。
ChatGPTは、アメリカの民主党の大物政治家(バイデン、オバマ、クリントン夫妻等)については「多くの人に尊敬されている」ことを強調する一方、露骨ではありませんが、共和党の大物政治家(トランプ、ペンス、ディサントス等)に関しては「一部で批判があり評価が別れます」と答える場合が多くあります。
これでは、「左寄り」とか「政治的偏見がある」と言われても仕方がありません。
ただ、全体としては、ChatGPTは倫理的モラルはかなり高いことが感じられます。

◆当然、ChatGPTのライバルが登場する
ChatGPTは、OpenAIという2015年に設立された研究所が開発したもので、マイクロソフトがOpenAIに2015年に10憶ドル(約1300憶円)を出資し、2023年1月には100億ドル(約1兆3000憶円)の超巨額の出資を発表しました。
そして、マイクロソフトは自社検索エンジンBingにChatGPTと同様(実はChatGPTの新しいバージョン)のAIを組み込みました。
慌てたのは、これまで検索エンジンで圧倒的優位だったグーグルです。
BingがChatGPTのような機能を持てば、誰もグーグル検索エンジンを使わなくなり、グーグルが危機に陥るわけです。
そこで、グーグルは、予定を早め、ChatGPTと同様のサービスであるBardを発表しました。
Bardは、ChatGPTが文字だけであるのに対し、画像、動画、マップなどといったグーグルのサービスと連動するのですから、ChatGPTを超える可能性があります。しかし、AIとしての性能は、現時点ではChatGPTが優ると思われます。

◆今後
既にChatGPTを仕事に導入し、成果を上げている企業や個人は沢山いる・・・というより、既に使っていなければかなり遅れていると言っても全く大袈裟ではないと思います。
グーグル検索を使っていない企業はないと思いますが、ChatGPTはグーグル検索を大きく上回る有益なものです。
ChatGPT、Bing、そしてBard、さらには、他にも、これらに対抗する優れたAIサービスが登場するかもしれません。
それぞれも、急速に進歩するはずです。
OpenAIは3月15日には、ChatGPTの新バージョン(GPT4)を発表。有償ですが、画像解析にも対応する等、能力が格段に上がっています。
たとえば、食材の画像から、その食材からどんな料理を作るのが良いか教えてくれ、レシピさえ即座に作ってくれます。
ChatGPT等をどう生かすかで、あらゆることに関し、今後の成果が全く変わって来ると思われます。
しかし、ChatGPTをうまく使えない人も沢山いると思います。
ChatGPTをうまく使う能力とは、1つには、ChatGPTが持っているパフォーマンスを引き出せるような質問をする能力です。
発想力と言語能力が高い人は、ChatGPTを非常に有効かつ独創的に使っています。
加えて、目的意識で使い方に大きな差が出ると思われます。それは、従来のインターネットサービスにも言えましたが、それが、これまでの千倍際立つようになる・・・そんな感じではないかと思います。

以上です。
 
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2023年2月10日金曜日

ITで人類の頭が悪くなる

 科学の発達が人類の頭を良くしたのに、テクノロジーの発達が人類の頭を悪くしてしまったことについて、分かり易いお話をしようと思います。

今日、これは、非常に重要な問題であると思います。


◆新しい世代ほど頭が良い

2014年に、TEDの中でも評判の高い講演である、知性の研究で知られる哲学者ジェームズ・フリン(1934~2020)による「なぜ祖父母世代よりもIQが高いのか」で、科学の発達が人類の頭を良くしたことが、分かり易く語られています。

科学では、見ることも体験することも出来ないことを、概念を元に考える抽象的な思考を必要とします。例えば、原子を見ることは出来ず、原子を理解するためには、何かの概念と結びつけて抽象的に原子をイメージする必要があります。そういった抽象的な思考方法が人類の頭を良くしました。

このことについて、フリンはとても分かり易いたとえ話をしました。

人種問題について考えていた少年時代のフリンは父親に、「父さんが明日の朝、目が覚めたら黒人になっていたらどうする?」と尋ねました(フリン親子は白人です)。

今の時代、すぐ後で述べるフリンの父親のような答をすれば、馬鹿だと思われるかもしれませんが、当時は当たり前の答でした。

その、父親の答とは、「肌の色が変わった人間なんていない」でした。

科学教育を受けなかった彼の父親は、抽象的に考えることが出来ず、抽象的思考が出来ないと、経験的にしか考えられないのです。

例えば、昔のハンターに、

「雪があるところにいる熊は白い。北極には雪がある。では、北極の熊の色は?」

と尋ねると、抽象的思考が出来ない昔のハンターは、

「俺が見た熊はみな茶色さ」

と答えます。抽象的に考えない者には、自分の経験したことにしか意味がないのです。

一方、アインシュタインは、「光と一緒に飛んだらどんな感じだろう?」と思い、それについて抽象的に思索を深め、やがて特殊相対性理論を発見しました。

しかし、フリンの父親に、「光と一緒に飛んだら、どんな感じだと思うか?」と尋ねたら、こう答えるでしょう。

「光と一緒に飛んだ人間なんていないさ」


◆人類の知性の向上は1990年頃に止まった

フリンは調査を行い、時の経過と共に、人類のIQが高くなっていることを確かめました。

ところが、別の研究者による、近年の人類のIQについての研究によれば、1990年頃に人類のIQの伸びは頭打ちとなり、2010年頃からは低下します。

その原因が分かったのは割と最近のことで、その原因とは電子機器の普及と関係します。

1990年頃に急に人類のIQの上昇が終わったのではなく、1950年代位から始まったテレビ、ラジオ、オーディオ機器の普及が徐々に影響してきたのです。

人々は、あらゆることを、「テレビを見ながら」「ラジオを聴きながら」「音楽を聴きながら」行うようになり、オフィスや病院でもBGM(背景音楽)が流れる「進歩した職場環境」が生まれ、日本でも、学生はラジオや音楽レコードを聴きながら勉強することが「ナウい」と言われるようになりました。

そして、仕事でも勉強でも、「音楽を聴きながらの方がはかどる」と主張する人は多く、経営者や教師らも、それを全て否定することが出来ず、一定の効果を認めざるを得なかったのだと思います。

そして、1990年頃に、電子メールが使える携帯電話が普及すると、多くの人々は、何をする時でも携帯電話の画面を見ながら行う頻度が増え、さらに、2010年頃のスマートフォンの普及で、いつでもどこでも、大切なことをする時でさえ、スマートフォンを見ながら行う人が、特に若い層では圧倒的となりました。

いまや、スマートフォンこそ文明の利器であり、これを常に使いながら、あらゆることを行うことが正しいという風潮を否定することが難しくなりました。

ところが、最新の脳の研究によれば、「ながら」で仕事や勉強をすると、能力が著しく低下し、それに慣れると、頭自体が悪くなることが分かっています。


◆スマートフォンは予想以上に能力を低下させる

学生を対象に、スマートフォンとペーパー試験の成績に関する実験が行われています。

すると、スマートフォンを使わないまでも、机の上に置いているだけで試験の成績が低下することが分かりました。

次に、机の中やカバンの中にスマートフォンを隠しても、やはり成績は低下し、さらには、スマートフォンの電源を切ってポケットに入れても成績が低下することが確認されました。

そして、スマートフォンを教室の外に置いた場合にのみ、有意な成績の低下は認められませんでした。つまり、たとえ使わなくても、スマートフォンを意識に浮かべるだけで、能力は低下するのです。

ところが、こういうこと(よそ事を意識すると能力が低下すること)が分からなかった原因が、人間の感覚の中・・・脳の仕組みとしてあったのです。

どういうことかと言いますと、よそ事を意識したり考えたりすれば気分が良くなるように脳は出来ていて、このことで、「ながら」でやると効率が上がると勘違いさせられてきたのです。

つまり、昔から、よく言われてきた「音楽を聴きながらの方が、勉強が(あるいは仕事が)はかどる」と主張する人々は、嘘を言っているのではなく、本当にそう感じ、信じていたわけです。

ただし、それは勘違いで、実際は、「ながら」でやると、確実に能力は落ちます。

しかし、「ながら」でやると、脳内に快感物質が発生する仕組みになっていて、気分が良くなるので、効率が上がっているように感じるのです。

では、なぜ、脳は、このような仕組みになっているのでしょうか?

それは、分かってしまえば簡単な話です。

人類の歴史から見れば、文明が発達したのはごく最近のことで、人間の脳自体は、いまも太古の狩猟時代とほとんど変わりません。進化の速度は極めてゆっくりなのです。

そして、大昔、目の前のことに集中すると、野獣が近付いてきても気付かずに殺されてしまう時代が何万年も続きましたので、脳は、集中せず、意識をあちこちに分散した時(キョロキョロした時)に、脳内に快楽物質を発生させ、気分が良くなるようにしました。

それによって、人間は、快楽を求める麻薬作用で、集中せず、キョロキョロするようになり、我々の先祖は、それで生き延びたわけです。

だから、「音楽を聴きながらの方が勉強がはかどる」と言うのは、「野獣が近付いていないか気付くために、キョロキョロした方が気持ちが良くなる」というのと同じ原理なのです。


◆子供に集中力がないのは当たり前

つまり、何と、人間の脳は、元々、集中を避けるように出来ているのです。

だから、子供が集中力がないというのは、いわば当たり前で、極端に言えばですが、「集中しろ」と言うのは「野獣に殺されてしまえ」と言うのと同じなのです。

よって、子供に集中して勉強させるとか、職場で集中して仕事をさせようとして、ただ、「集中しろ」「よそ事を考えるな」と言っても反発されるだけです。余計なことを考える方が気持ちが良いのですから。

軍隊のように、集中しないと敵に殺されるとか、ミスをして独房に入れられる(死の危険があります)とかであれば、「生きる」を最優先する本能の働きのために集中出来ます。昔の戸塚ヨットスクールが効果があった理由もこれと思われます。沖合で船から放り出されたら、集中して泳がざるを得ませんから。

しかし、文明社会の中では、集中させるためとはいえ、乱暴だったり危険があるやり方は容認することは出来ません。

そこで、まずは、最低限のこととして、「ながら」をやめさせる必要があります。

学校や職場でBGMを止め、必要もない時にスマートフォンを、せめて電源を切って仕舞わせた方が良いでしょう。

そして、好奇心を持たせることに、もっと力を入れるべきです。

好奇心もまた、脳内に快感物質を発生させるので、キョロキョロする誘惑に打ち勝てるからです。

勉学における好奇心の重要性を説いたのもアインシュタインでした。アインシュタインは、

「鞭で食べるよう強制されたら、空腹な野獣でさえ食欲を失う」

という喩えで、強制的な詰め込み教育を行うことの害を訴えました。アインシュタイン自身が学生の時に苦しめられたのがそのことでした。

北欧の多くの学校では、かなり昔から、授業内容を10分程度で切り替え、子供達の好奇心が消えないようにしています。

また、オンライン授業世界一のカーン・アカデミーでは、1授業は必ず10分以下です。さらに、カーン・アカデミーでは、画面に教師の顔を決して出しません。心理学の研究成果により、人は、人間の顔が見えると、それに意識を奪われ、集中が切れることが分かっているからです。


◆まとめ

集中した時の人間の能力は高く、そして、現代社会では野獣に襲われる恐れはなく、キョロキョロする必要はありません。

しかし、テレビ、ラジオ、オーディオ機器といった、人々の注意を、重要なことから引き離すものが溢れ、キョロキョロする人が増えました。

そして、いつでもどこでも、所有者に合わせて、強制的に気を引くような情報を送りつけて来るスマートフォンの、集中を奪う力はあまりに強力です。

スマートフォンを発明したスティーブ・ジョブズが、自分の子供には決してスマートフォンを与えなかったことはよく知られています。

我々は、頭を良くし、勉強や仕事の効率を上げたいなら、本当に大切なことに集中し、これまでは肯定されることも多かった「ながら」を止めなければなりません。

ところが、ロボットを作るための、個々の生徒の好奇心を無視した画一的な教育や、「ながら」でものごとを行うことで、学生達の頭が悪くなった結果、科学に興味を持たない人が多くなったと思います。それで、現在、ジェームズ・フリンの父親のような若者が多くなるという先祖返りが起こっているように感じます。

「カラスと魚の違いは?」と聞かれ、せめて、「飛ぶか泳ぐかの違い」と答えれば良いのですが、経験的に、「魚は食えるがカラスは食えない」という答は、フリンの父親世代の答です。しかし、今、そう答える若者が多そうな気がします。

※キョロキョロすると脳に快感物質を発生させる働きをする遺伝子が壊れていて、限りなく集中出来る人間が存在し、そのような人間が天才的な能力を発揮することがあります。そのような人間は、変人扱いされ、社会に適合出来ない場合がありますが、彼らが集中による人間の能力の可能性を示しているように思われます。二コラ・テスラが、1日13時間勉強したのは、彼が努力家でもあったのでしょうが、キョロキョロさせる遺伝子が壊れていて、限りなく集中出来たからと思われます。


以上です。

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2022年11月21日月曜日

メタバースと脳内チップ

 昨年(2021年)10月28日、マイクソロソフトを除くITの世界トップ企業4社を示す“GAFA ”  の一角であるフェイスブックが社名をメタ・プラットフォームズ(以下、「メタ」と略します)に変更しましたが、それにより、このメタという社名が意味する「メタバース」の重要性がますます認識されてきたと思います。

メタバースとは、オンライン上に構築されたVR(仮想現実)空間、あるいはそのサービスのことです。

そのようなサービスは、既に数多く存在しますが、メタは、全力を傾け、メタバースの覇権を目指すはずです。

それほど、これからの世界で、メタバースが重要なものだからです。

今回は、メタバース時代に備え、メタバースの中心的な技術であるVR(仮想現実)に関する興味深い話をします。


◆VR(仮想現実)

2017年8月に出版された、元・日本マイクソフト社長の成毛眞氏の著書『理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件』(朝日新聞出版社)で、こんなことが書かれていました。

「最近でいえば、VRを体験しているかいないかは大きな違いだ」

この言葉には、「いまだVRを体験していない人はかなりまずい(時代に置いていかれる)」というニュアンスが含まれていると考えられます。これがもう4年以上、前のことです。

VRを体験するとは、現代では、ほぼ、VR用HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を頭に装着して何かを行うことを意味します。

しかし、では何を行うのかというと、今のところ、大半がゲームで、その他のコンテンツも若者向けのものがほとんどですので、VRを体験しているのは若者が圧倒的です。

メタバースはVRと共にあるものですので、メタバースに取り組むには、VRに馴染んでいることが有利というか、必須かもしれません。

とはいえ、ゲーム以外の「大人の用途」としては、例えば、オンラインのVR空間で会議を行うといった会社は、進歩的と言うよりは、遊び心がある会社といった感じかもしれません。

ところが、2020年10月に、メタが開発した(正しくはメタが買収したOculus社が開発した)「Oculus Quest 2(オキュラス・ クエスト・ツー)」という、高性能ながら、安価なHMDが発売されたことで状況が変わってきました。

Ocullus Quest 2は、人気があったOculus Questの後継機ですが、Oculus Questと違い、パソコンを必要とせず単独で使用出来、軽量で使い勝手も格段に良くなり、これで、HMDの普及が大きく進むと思われます。


◆メタが目指すもの

メタがまず目指すのは、メタが運営する世界最大のSNSであるFacebookのメタバース化です。

メタバース化されたSNSは、既にもういくつか存在しますが、Facebookをユーザーに支持される形でメタバース化することで、Facebookが最大のメタバースSNSになる可能性が高いでしょう。

そこでメタは、手始めに、Facebook内で比較的簡易なメタバースを提供し、Facdebookユーザーをメタバースに慣れさせようとするでしょう。例えば、企業が簡単に、メタバース内でリモート会議をするデモンストレーションをメタは公開しています。

実用的な用途として、教育分野では、教師と生徒がメタバース内で授業を行うことも簡単に出来るようになります。

しかし、これらはあくまでプロローグ(序章)であり、メタの計画はもっともっと壮大なものです。


◆フルダイブ型メタバース

メタが目指すメタバースは、この世界と全く同等の仮想世界の構築と、その中で人々が、現実世界のように活動出来るようにすることです。

簡単に言えば、デジタルの新しい世界を作ることです。

丁度、SF映画の『マトリックス』のような世界です。

夢のような話ですが、メタは本気で実現を目指していると思わます。

ところで、『マトリックス』シリーズの第1作『マトリックス』は、実に1999年、つまり、20世紀の作品です。

テクノロジーの進歩が急速化している現代でも、あれから20年以上も経つのに、いまだ『マトリックス』の世界は全く実現出来ていません。

『マトリックス』の世界と現代のVRの違いは何でしょう?

現代のVRは、HMDをつけた、視覚と聴覚だけの仮想世界です。なるほど、初めてHMDでVRを体験した人は、そのリアリティ(現実感)に感動することがよくあります。

とはいえ、現代のVRは、やはり、視覚と聴覚だけのものですので、やがて慣れ、そして、飽きるのです。

一方、『マトリックス』の世界は、五感全てで感じる仮想世界で、自分が現実世界に居るのか仮想世界に居るのか区別がつきません。喩えて言えば、鮮明な夢の中にいるようなものです。

五感全てで仮想世界に没入する技術をフルダイブ技術と言い、そのような世界に入ることを「フルダイブする」と言います。

そして、フルダイブしようと思ったら、脳とコンピューターを直接接続するしかありません。

『マトリックス』でも、そのようにしていました。

『マトリックス』では、仮想世界にフルダイブする人間の首の後ろに、コンピューターとの接続コネクターがあり、そこにコンピューターのケーブルを接続します。この場合、脳から首の後ろにかけて外科手術をして首のコネクターで接続出来るようにしているはずです。

しかし、現代でも、そんな手術が出来るほど脳の研究は進んではいませんし、仮に可能だとしても、正直、誰もそんな手術を受けたくないはずです。

ところが、そんな恐ろしい外科手術をせず、脳にチップを埋め込むだけで(それでもやりたくない人が多いでしょうが)、脳とコンピューターを接続することを実現しようとしているのが、イーロン・マスクが設立しCEOを務めるニューラリンク社です。ニューラリンク社では、猿を使った動物実験では、かなりの成果を上げているようです。しかし、人間で実験を行うとなると、倫理的規制が大きく立ちはだかります。


◆脳に取り付ける装置の人々の認識

脳に機械を取り付けて脳の力を拡張したり、あるいは、脳に機械を取り付けられた人間の心をコントロールするという発想は、かなり昔からあります。

現実的にも、脳神経と記憶装置を接続し、脳の記憶力を増大させる研究がMITメディアラボで行われているという話があります。

ただ、こういった研究が進むためには、一般の人々の理解を得ることも必要なのですが、一般の人々の、この分野の認識や理解は遅れています。

例えば、有名なSF作家だった平井和正氏原作の1963年の漫画『エイトマン』で、サイバーという名のAI(人工知能)が人類の征服を始め、サイバーは人間の脳に直径数センチの球体の装置を手術で取り付けて、その人間を操るというものがありましたが、現代人の多くは、脳に取り付ける装置に関して、まだ、そんなイメージを持っているのだと思います。

ところが、その『エイトマン』の続編の2004年の漫画『エイトマン・インフィニティ』では、AIサイバーが再び登場し、今度は、マイクロマシン(マイクロミニサイズの微小機械)を人間の首の後ろから注射器で血管に入れ、血流に乗って脳に到達したマイクロマシンが、血液中の金属成分やタンパク質を使って、脳をコントロールするチップを形成するというふうに進歩しています。

実際は、脳は、異物を中に入れない強固な防御機能を持っていますが、マイクロマシンより小さなナノマシンを脳内物質に擬態させて脳内に進入させる技術が研究されていますので、手術せずに脳内にチップを形成することも可能になるかもしれません。

一方、世界的に人気がある日本のSF小説・アニメの『ソードアート・オンライン』(2009~)では、頭にかぶった装置が、電磁波により脳のシナプスと量子的に共鳴することで、仮想世界にフルダイブしますが、今のところ、これは不可能です。

もし、このように、外部からの電磁波だけで脳をコントロール出来るなら、中国あたりが、人工衛星から、人間を支配する電磁波を送信しようとするでしょう。ただし、これも、いずれは可能にならないとも限りません(陰謀論かもしれませんが、既に可能であるという説もあります)。

今のところは、イーロン・マスクのニューラリンク社は、外科手術で脳に埋め込むチップにより、思考だけで外部装置を操作したり、脳で直接、インターネットに接続したり、また、脳にチップを埋め込んだ者同士が、テレパシーのように会話すること等を目指しています。

メタが、この分野に参入する可能性もあり、メタやイーロン・マスクなら可能と思われますが、1兆円も研究につぎ込めば、フルダイブ技術が急速に進歩するのではと言われています。

ただ、アメリカや日本のように人体実験を行うのが難しい国ではなく、人体実験を平気でやれる独裁国家が、アメリカの優秀な研究者を大金で雇い、先に完成させる可能性があります。


メタバースが未来を決める大きな鍵であることは確かと思います。

実際、世界はメタバースに飲み込まれつつあると述べる科学技術者、社会学者、経済学者も増えているように思われます。


以上です。

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2022年7月31日日曜日

AIが全てを監視する世界

 2010年にGDP(国内総生産)で日本を抜き、世界第2位になった中国は、いずれ、現在は圧倒的な1位であるアメリカ合衆国を抜き、世界一の経済大国になると言われています。

ところが、中国の政治経済の隠れた深刻な問題を指摘し、中国の成長が止まる、あるいは、破綻するとさえ言う政治学者や経済評論家等もいますが、現実には、中国は直実な経済成長を続けており(コロナ禍でもプラス成長でした)、軍事力の拡大も顕著です。

一党独裁制の社会主義国家である中国では、民意を問う必要がなく、政府の決定は直ちに実行されますので、指導者が優秀であれば、効果的な政策を、何者にも妨げられず実行出来、進歩はとても早いのです。

そして、中国の指導者は優秀で、早い時期からITの重要性を深く理解し、全力を上げて高度なITの導入を進め、今や中国は強大なデジタル国家と化しています。


◆膨大な監視カメラは何のためにあるか

今日、日本でも、多くの場所に監視カメラが設置されています。もちろん、それは、会社や店舗等の内部あるいは周辺といった、妥当性が感じられる場所であることがほとんどです。

ところが、中国では、どこにでも・・・それこそ、「何のためにこんな所に?」と思うほどの場所にも監視カメラが設置されています。

これを当局(中国の事実上の独裁政党である中国共産党の人民管理部)による国民の監視と捉えるのは、半分正解ですが、それだけでは、重要なポイントを見逃しています。

アメリカや日本等の民主主義国家では、政策の実施には国民の賛同が必要で、例えば、日本政府が、原爆を持つことが必要と判断しても、民意が得られなければ、原爆を持つことは出来ません。

民主主義国家では、平和で強い国とは、政府と国民が信頼し合い、国民の声が政治に反映される国であると考え、それを実現するのが選挙であり、選挙こそが、国民が政治に参加することであると言われます。

ところが、選挙のない社会主義国家である中国が、ITの高度な活用で民主主義国家を超えたのではないかと思われます。

それには、AI(人工知能)が大きな役割を果たしています。

中国の監視カメラは、監視目的だけではなく、AIの活用のためにあります。

監視カメラにより国民のあらゆるデータを収集し、このデータに対し、AIが分析を行えば、国民のコントロールだけではなく、政策の決定・実施のための重要な手がかりが得られることを、中国の指導者は理解しています。

つまり、現在の中国国民のあらゆる属性を明確に把握出来、どうすれば国民を効率的に管理し、そして、動かせるかが分かるのです。

一方、民主主義国家では、選挙によって選ばれた政治家の公約が国民の民意と了解され、選挙こそが政治に民意を反映させる方法であると考えられています。

けれども、選挙で選ばれた政治家が必ずしも公約を守るとは限りません。

また、国民が、あまり公約を理解したり、重要視せず、単に有名人だからという理由で投票することが多くあります。

一方、中国では国民投票の選挙はありませんが、AIは選挙よりも正確に民意を推測出来、それを政府は有効に利用します。

つまり、中国では、国民は知らないうちに、政府の都合の良いように政治に参加させられていると言えます。

中国は、AIの活用により、「選挙に参加することが政治に参加することである」と言う民主主義を笑うほどのレベルに来ているのかもしれません。


◆シンガポール

独裁制は、効率においては、民主制を上回ることは中国の例でも分かります。

その利点を生かして発展したのがシンガポールです。

十年近くも前に、当時既に世界的に注目されていた日本のデジタルソリューション企業であるチームラボが、シンガポールでの大イベントに参加した後で、先進的な思想・理念を持つことでも知られているチームラボ社長の猪子寿之氏が、「世界で最も格好良い都市は、ニューヨークでも東京でもなく、シンガポール市(建前上の首都。シンガポールは1つの都市国家であるため、実際は首都はない)だ」と断言しましたが、実際、シンガポール市の人々の収入は、ニューヨーク、東京を超え、シンガポール(国家)の1人当たり国内総生産(GDP)は世界2位です。

そして重要なことは、シンガポールは建前上、民主主義国家ですが、『準独裁政治体制』と言われ、実質では、中国に近いと思われます。

シンガポールもまた、独裁政治のメリットを十分に生かし、そして、強いIT指向があるという点でも中国と似ています。


◆イーグル・アイ

IT技術がますます発展するこれからの社会や政治がどうなるかを理解するために、是非見ておくべきアメリカ映画があります。

それは、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮の2008年の映画『イーグル・アイ』です。

スピルバーグ作品としては地味で、スピルバーグの他の作品と比べ興行収入もそれほどではないのですが、まだスマートフォンが普及していない時代に、AIが管理する未来社会の様子を現実的に描いています。

全米中のあらゆる場所に設置された監視カメラから得られる映像・音声をAIが収集・分析し、さらに、機密情報を含む最大限の情報にアクセス出来る高度AIは、国家の状況を完全に把握しつつ、未来に起こることを高精度で予測し、リスクを事前に察知して、最適な問題解決策を提示します。

ある時、アメリカ合衆国を管理する最高位のAIである「アリア」は、アメリカの軍隊のトップ、即ち、最高司令官である大統領、そして、副大統領、国防長官らを、アメリカの安全にとってリスクと判断し、彼らを抹殺する「ギロチン計画」をホワイトハウスとは独立した米国組織に提示し、合衆国憲法に則って実行の承認を得ます。

注意すべきことは、これが、一部のSF小説にありがちな、AIが偏見を持っているとか、AIが一部の権力者の都合で動いているのではないということです。

本当にAIの判断は正しく、アメリカのトップの抹殺は、アメリカのために良いことであるという論理性や根拠があるのです。

そして、あらゆる機械がインターネットに接続された世界で、それらの機械(一般的にはIoTと呼ばれます)を自在に利用出来るアリアの実行能力は強大です。

これらは、現代のテクノロジーで十分に起こり得ると思われます。

この作品を見てから、中国のことを考えると、我々は未来世界を予測出来ますが、ディストピア(ユートピアの反対。暗黒郷)を招くことも予想出来るのです。

『イーグル・アイ』の最後では、「安全のための過ぎたシステムはかえって安全を脅かす」と述べます。


以上です。

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2022年6月16日木曜日

AIを信頼する最後のテスト

 AI(人工知能)が社会に完全に受け入れられるためには、これまで保留されていた大問題を、いよいよ解決する必要があります。

その大問題は、「トロッコ問題」に集約されるのではないかと思います。

イギリスの哲学者フィリッパ・フットが1967年にこの問題を提起して以来、世界中で数多くの考察・論争が行われながらも、これまでは、「難しい問題ですね」「答なんてないんじゃないですか?」と、気楽に言われてきました。しかし、人間とAIが真に共存するためには、その解答が必要になるのではないかと思います。


◆トロッコ問題

今の時代、トロッコを知らない人も多いでしょう。トロッコとは、鉄道の線路の上を走る小型貨車で、トロッコに動力機関はなく、単に低い方向に走ったり、ペダルを漕いで動かす単純なものです。

トロッコは、鉱山やダムといった大規模な工事現場などで、数人の人間の移動や、荷物の運搬に利用されます。

そして、「トロッコ問題」とは、こんなものです。

勢い良く走っているトロッコの先に5人の人がいて、そのままいくと、トロッコはその5人に激突し、5人が死亡します。

ところが、あなたが線路切り替え機を使い、線路の切り替えを行えば、トロッコは進路を変えますが、変えた進路の先には、1人の人がいて、トロッコをそちらに走らせれば、その1人が死にます。

あなたは、線路を切り替えるべきでしょうか?

単純に考えると、線路を切り替え、4人多く救うべきと思うかもしれません。

しかし、もし、これを学校の試験問題にし、学校が、「線路を切り替える」を正解にしたら、その学校への非難で大騒動になるでしょう。

では、なぜ、それが正解と言えないのでしょうか?

そこで、問題を明確にするため、こんなふうに問題を変形した人がいます。

5人の重病患者がいて、そのままでは、5人共、やがて死にます。

しかし、1人の健康な人の臓器を5人に移植すれば、5人は助かるとします。しかし、その場合、臓器を提供した1人は死にます。

6人の年齢は同じ位とします。

この場合だと、1人を犠牲にすべしという人は、まあ、ほとんどいないと思います。

つまり、この臓器移植の例では、何もしないのが正解というのは、理解し易いのです。

トロッコ問題も、本質的にはこれと同じですので、やはり、「自然にまかせて」5人を犠牲にするしかないというのが正解のように思われます。

しかし、それが正解と誰もが認めるとは限りません。


◆2017年中にAI運転車がデビューするはずだった?

2017年4月のTEDカンファレンスで、有名な電気自動車メーカーであるテスラ社のCEOイーロン・マスクは、TEDの代表者であるクリス・アンダーソンとの対談形式の講演を行いました。

その中で、アンダーソンがマスクに、「テスラ社はいつ、AI運転の自動車を市場に出すのですか?」と問うと、マスクは「今年(2017年)の11月か12月です」と答えます。そして、さらに続けて、マスクは、

「カリフォルニアの駐車場からニューヨークの駐車場へと、制御装置には一切触れることなく移動出来るようになります」

と言い切り、アンダーソンが「それが今年中に?」と改めて確認すると、マスクは、「その通りです」と自信たっぷりに断言し、会場からは拍手が起こりました。

しかし、2021年10月現在、それはまだ実現していません。

その理由は、「トロッコ問題」が解決されないことと考えて良いと思います。


◆機械には非常に厳しい条件が課せられる

AIの運転の安全性はどのくらいかと言いますと、既に、人間の運転よりはるかに安全です。

人間の運転でしたら、アメリカでは、1年間に4万人もの人が、交通事故で亡くなっています。しかし、だからといって、自動車が禁止されることはありません。

しかし、AI運転の場合、1人の死者も出すことは許されないのです。

実際は、AIだけでなく、機械や、それを制御するソフトウェア、さらには医薬品の欠陥で人が死ぬことは、決して容認されないのです。

例えば、時々、ある自動車のエンジンやエアバッグに欠陥が見つかり、メーカーは販売した何万台もの自動車を無償で修理することがありますが、これは、放っておいても事故が起こる可能性は、ほとんどゼロという些細な欠陥の場合もあります。それでも、最後の1台まで修理する義務がメーカーに課せられます。

それどころか、欠陥が明確ではないばかりか、単に疑わしいというだけでも駄目な場合があります。

2009年に、アメリカで、トヨタ車が暴走したことで家族4人が死亡したとして、トヨタが訴えられました。

しかし、これは、トヨタ車の欠陥ではなく、この車に使用されていた、この車専用のものでない床シートの一部がアクセルに引っかかったことが原因でした。

しかし、トヨタは自主的に380万台の同型車を回収しました。そうしないとアメリカ人が納得せず、アメリカを敵に回しかねなかったからです。

スマートフォンにおいても、2016年に、バッテリーの欠陥による爆発事故が相次いだとして、サムスンは「Galaxy Note 7」という機種を250万台回収しました。しかし、そんな事故が起こったのはせいぜい2、3件で、それもかなり特殊な状況でしたが、それでも許されないのです。

人間に比べ、機械がいかに厳しい目で見られるかが分かると思います。

もしかしたら、AI運転の自動車の事故率は人間が運転する場合の1%以下かもしれませんが、それでは足りないのです。AI運転の車は、決してミスをしないことが証明される必要があります。

しかも、上のトヨタ車の例のように、実際には自動車に責任がないと証明されても、尚、疑われるのです。

そうであるなら、トロッコ問題のようなことに、実際にAI運転の自動車が直面した時、AIが取った対応に対し、極めて厳しい目が向けられることは間違いなく、自動車メーカーも政府も、「トロッコ問題」に決着を付けることが出来ない限り、AI運転の自動車が認可されるのは難しいと思われます。


◆論理的な答は出ない

「トロッコ問題」に、誰もが納得する答は、今のところありません。

「トロッコ問題」を、現実の問題に置き換えると、次のようなことが考えられます。

1人の男性が乗ったAI運転の車が走行中、そのままでは5人の子供をはねてしまう状況で、AIがハンドルを切り、車は崖から転落したとします。AIは5人の子供を救い、搭乗者の男性を犠牲にすることを選んだわけです。

客観的には、この判断は正しいと思われるかもしれません。

オリジナルの「トロッコ問題」に当てはめると、AIは、線路切り替え機を操作し、5人を救い、1人を犠牲にしたわけです。

しかし、車ごと崖から落とされた男性、あるいは、その家族が、この車を作った自動車会社を訴える可能性があります。

そして、自然の流れで言えば、自動車は5人の子供をはねたと思われますので、「AIが意図的に男性を殺そうとした」として、男性側が裁判に勝つ可能性があります。

そもそも、このAI自動車を販売する際、5人の子供を救うために、AIが搭乗者を犠牲にする可能性があると説明し、それが販売契約書に書かれていたら、この男性は、この車を買わなかった可能性が高いと思われます。


いずれにしても、生命とか生活が関係する問題に、理屈だけで答を見つけるのは難しいものです。

こんな逸話があります。

松下電器産業(現パナソニック)がまだそれほど大きくない時代、大不況が襲い、松下電器も経営危機に陥ります。松下電器の幹部達は、社長の松下幸之助に社員の大規模なリストラを要求します。

不採算部門を切り捨て社員をリストラするというのは、業績回復の有力な手法で、今後は、AIがリストラ実施を提案、および、その内容を提示するようになると思われます。

しかし、松下幸之助は、「リストラは一切しない。仕事がないなら掃除をやらせろ」という、言わば非論理的な、AIなら決して行わない決断をします。

ところが、松下幸之助の決断を聞いて感激した社員達全員が、一丸となって不況に立ち向かい、新しいアイデアを出し、あらゆることに積極的、果敢に取り組んだ結果、大不況の中で、松下電器だけが業績を向上させました。

「トロッコ問題」だって、非論理的としか思えないやり方で、全員を救う方法があるかもしれません。

ただし、この松下電器の場合は、たまたまうまくいっただけかもしれず、リストラをしなかった結果、もっと悪い状況になり、松下幸之助は重大な責任を追及されたかもしれません。

AIとは、ある意味、未来予測技術です。何を選択したかによって、どうなるかを正確に予測出来るほどAIが進歩することが鍵になると思われます。


以上です。


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2022年3月18日金曜日

高まるプライバシー危機

 日本では、2016年にマイナンバー(正式名称は「個人番号」)制度が始まりましたが、現状、マイナンバーカードの申請数は少なく、まだまだ十分には普及・活用されていません。

一方、中国では、日本のマイナンバーに相当する公民身分番号制度が定着し、行政サービスはこれを基に行われています。

中国では、デジタル通貨の一般化で紙のお金が使えない場合が多く、事実上、スマートフォンなしでは生活出来ません。そのため誰でもスマートフォンを持っていることが、デジタルでの活用を前提とした公民身分番号制度の普及を促したのだと思います。

日本でも、今後、マイナンバーカードが行き渡り、それがスマートフォンで活用出来るようになると、行政サービスは合理化して簡易化・高速化し、行政側も国民側もとても便利になりますが、一方で、政府による国民の監視で社会主義化につながるのではないか、あるいは、政府のITリテラシーが低いことで何か問題が起こるのではないかという懸念が言われています。

また、中国では、他人の公民身分番号を盗み、その番号の人間になりすます違法事件が多発しており、日本でも同じようなことが起こるのではないかという疑問もあります。


◆進歩しない一般のITスキル

中国がデジタル大国といったところで、国民のITスキルが高いわけではなく、上でも述べましたが、個人番号の漏洩・悪用などは、日常茶飯事と言われています。

世界で、インターネットが急速に普及していった21世紀初頭前後から20年以上、ネットでの、セキュリティー、プライバシー対策が重要であると言われ続けていますが、はっきり言って、日本でも、国民、さらに政府のITリテラシーは、それほど進歩したようには思えません。

一党独裁の社会主義国家である中国では、事実上の国家である中国共産党が決定したことが、誰にも反対されずに実施されますが、日本では、民意を無視出来ません。ですから、現状では懸念や疑問も多いマイナンバー制度は、政府の思惑通りには進まず、それは必ずしも悪いことではないと思われます。

しかし、政府に対し、必要な確認や反対はしつつも、良い部分は実行することが必要で、そのためには、政府も国民もITリテラシーを高めなければなりません。


◆個人情報海外流出事件

マイナンバー制度を始めるためには、コンピューターへの大量のデータ入力が必要です。

ところが、これに関し、日本で、こんな事件が起きています。

マイナンバーを活用する予定の日本の政府機関が、国民の個人情報データの入力を国内の業者に委託したのですが、その業者は、いつものことでしょうが、コストが安い中国の業者に業務を再委託しました。

すると、その中国の業者から、日本人の個人情報が漏洩した疑いがあり、詳細は不明ながら、おそらく、それが起こったことは確かなのですが、その政府機関は、それを否認し、そのままうやむやになってしまいました。

もうずっと前から、企業においては、機密情報や個人情報を扱う業務の再委託の取り決めなどは厳格に行う習慣が定着していますが、政府機関では、必ずしもそうではないことが今回の騒動の原因であると考えられます。

このように、政府やその配下の機関自体のITリテラシーが不十分では、マイナンバーカードの普及が遅れるのは、やむを得ないかもしれません。


◆スマートフォンによるデータ流出

中国に限りませんが、いろいろな国の様々な機関が、日本、アメリカ等の国民の個人情報を収集しようとしていることは十分に考えられます。

その目的は、様々ですが、例えば、日本人の個人情報を盗めば、その日本人になりますことも可能になり、そうすれば、スパイ活動がし易くなります。

もし、日本人の個人情報の収集が、外国の工作員により、組織的・広範囲に行われているなら大きな問題で、それが既に実際に行われている可能性すらありますが、日本の警察や公安は、そのあたりの対策が十分ではなく、そもそも対応能力に疑問があります。

しかし、もし、マイナンバーと紐づいた個人情報が海外に流出したら、非常に拙いことになりかねません。

マイナンバーに関連する個人情報の漏洩で我々に被害が発生した場合に、国がどこまで守ってくれるかは、甚だ疑問です。

そして、我々のプライバシー情報の海外流出の危険に関する、こんな話があります。

日本でも、中国製スマートフォンが広く普及しています。

それなりの性能を持ちながら、日本製、アメリカ製、韓国製に比べ、非常に安価なので大人気です。

特に、現在は、スマートフォンのSIMフリー化が進んだことにより、中国製スマートフォンを使う際にも、通信回線に関しては日本の通信会社を自由に選んで使えるからです。中国製スマートフォンは、日本の代理店を通じ、Amazon等のネットショップで手軽に購入出来ます。

ところが、そんな中国製スマートフォンに初期インストールされているアプリを通して、個人情報が漏洩する可能性が指摘されています。

実際、初期インストールされたアプリには、合理的理由がないのにユーザーにはアンインストール出来ないものもあり、非常に疑問を感じます。


◆ビッグテック(巨大IT企業)のプライバシー情報収集

今日、電子メールやSNSにお金を払う人はいません。現在では、電子メールがかつて有料であるのが普通だったと聞くと驚く人の方が多いかもしれません。

代表的なSNSであるFacebookやTwitterは、無料サービスでありながら、今や、世界中の政治家やビジネスマン、ジャーナリストらが、仕事にもフル活用し、万一、これらの利用が出来なくなると、活動に支障が出るほどです。

また、GoogleのGmailがないと仕事にならないと言う人も沢山います。

これは、既にかなりの個人情報が、ビッグテックに渡っているということです。

それだけではありません。

Gmailの中は、重要情報のやり取りにも普通に使われ、個人情報や機密情報もいっぱいで、、万一、他人に不正利用されると大変なことになりかねません。

よって、電子メールでもSNSでも、特にビッグテックのものは、単にパスワードで接続出来るのではなく、例えば、これまでと違う端末でアクセスする際には、強制的に確認が行われる等の安全機能が付けられ、よりセキュリティを高めています。

しかし、これらの運営会社(つまりビッグテック)自体が、機密情報やプライバシーを侵害してはいないのかが話題になることがあります。

これに対し、Googleは、従業員がユーザーのGmailの中身を見ることは決してないが、AIが見ていることは認めています。だから、ホテルや鉄道等の予約の受付メールが送られてくると、AIにより、自動的にスマートフォンのカレンダーに、それらのスケジュールが追加されることがあります。これは確かに便利ですが、勝手にそのようなことが行われることを、恐ろしいと思う感覚は忘れてはならないような気がします。

また、Googleマップの初期設定では、ユーザーがいつ、どこに行ったかの詳細がGoogleのクラウドサーバー上に記録されるようになっています。それこそ、何日の何時何分にどの電車に乗り、どのホテルに泊まり、どのイベント会場に行ったかなど、自分で解除しない限り、細大漏らさず記録されています。

そんな情報が漏れると困る場合もありますし、警察が捜査のために、そのような個人情報をGoogleに請求する可能性もありますが、それはやはりプライバシー侵害と言うべきでしょう。

そして、日本で多くのユーザーを持つSNSであるLINEで、個人情報が韓国や中国に筒抜けであったという報道がありました。

LINEを運営するLINE株式会社は、韓国最大のインターネットサービス会社NAVERの完全子会社です。

LINEは、この事件を否定、あるいは、些細な部分のみの漏洩であるとしていますが、様々な専門家から深刻性も指摘されています。


◆セキュリティ認証

では、スマートフォンの顔認証と指紋認証に関するセキュリティはどうでしょう?

顔認証に関しては、AIが学習するため、顔の画像データが、運営会社のクラウドサーバーに送られます。それによって、AIが認証の学習を行い、認証精度が上がるのです。

しかし、顔と違い、指紋は、様々な重要な用途で利用される生体認証情報です。

一応、指紋データは、運営会社のクラウドサーバーに送られることはないはずです。

指紋データが漏洩した場合、本人になりすます不正行為が行われる可能性があります。

例えば、アメリカ映画『バッドマン・ダークナイト・ライジング』(2012)で、バッドマンの正体である大富豪ブルース・ウェインは、ある日、突然に破産し、70億ドル(約7000億円)と言われる資産の全てを失います。

その経緯はこうでした。ブルースの家で行われたパーティーの客になりますました敵が、ブルースの指紋を家具から採取し、その指紋を使って、ブルースになりすまし、ブルースを破産させるようなオンライン投資を行ったのでした。

実際に、指紋だけでそこまで出来るとは思えませんが、生体認証の重要性を実感させるお話でした。

そして、スマートフォンで指紋認証を行っている者は、既に、スマートフォンを通じて、指紋データが海外に流失しているという噂もあります。単なる噂かもしれませんが、技術的にはやろうと思えば出来ると思います。

セキュリティで問題が起こった場合、自己の責任に帰することになると考えておくべきです。

そのために、「ITに弱くて」という言い訳は通用しないと認識すべきですし、「僕は怠惰で細かい管理は駄目なんだ」という人間は、悪人にとって、とても美味しいカモなのです。


以上です。


当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

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2022年2月20日日曜日

優等生ほどAIの奴隷になる

 昔からあることですが、アニメを見ている子供を見て、母親が「下らないアニメなんか見て!」と叱責します。

しかし、そのアニメが、子供の将来に良い影響を与える素晴らしいものでないとは限りません。

この母親の問題は何かと言いますと、自分で体験せずに、価値判断をしたことです。

人間は、体験をしないと、良いか悪いか分からないのに、この母親は、体験をしないまま、誰か(テレビや先生)の意見を受け入れたわけです。

これまでは、それでも誤魔化しが効きましたが、特にAI(人工知能)の時代では、それは拙いということをお話しようと思います。


◆これまでの何にも似ていない新しいもの

自分で体験しないと何も分からないことは誰でも分かっています。

例えば、海外旅行、スキューバダイビング、坐禅・・・経験すれば良いかもしれないと思いつつ、「別にやらなくても、そんなに変わらない」と思い、他人の経験談をテレビなどで見聞きして、分かった気になっていました。

しかし、今後は、経験をしないことがリスクになる可能性があります。

例えば、グーグル検索について考えてみましょう。

昔なら、何かを調べる時、図書館など、あちこちに出かけ、沢山の本や昔の新聞を調べ、電話をかけまくって、やっと分かった・・・いや、それでも、分からないかもしれないことを、グーグル検索を使えば、かなりのことが数分で分かってしまいます。

確かに、苦労して調べることの価値もありますが、今、何でもかでも、自分の足で調べるのは愚かと言えると思います。

ところで、グーグル検索や、その他の既に広く使われているインターネットサービスは、昔からあるものの代替であり、分かり易く、特に進取の気性がある人でなくても利用しています。

しかし、従来は想像もしなかったものがどんどん現れてきています。AIやVR(仮想現実)がそうです。

それらは過去の何かに例えて理解することは出来ず、それを直接体験しない限り、全く分からないばかりか、存在にすら気付きません。

それで、知らないうちに時代に取り残されます。


◆分かったような気になる恐さ

少し前、『鬼滅の刃』というアニメ映画が、驚異的にヒットしました。

すると、テレビのワイドショー番組で、『鬼滅の刃』は何が良くてヒットしたのかということを、顔なじみのコメンテーターが、自信満々で解説します。

それを見て、視聴者は「なるほど」と納得します。

しかし、『鬼滅の刃』の、そんな解説は全部嘘です。

コメンテーターに解説出来るような理由で、これほどヒットするなら、アニメ製作会社は苦労しません。

また、たとえ、コメンテーターが、実際に映画を見、本当に良いと思った上で解説していたとしても、彼らに映画の良さを説明出来ないのです。

つまり、いくら良いと思っても、それを言葉で説明することは、ほとんど不可能なのです。

そもそも、映画の製作者ですら、その映画の良さを10%も解説出来ないなんて普通なのです。

例えば、男の子に、自分が好きな女の子について、「その子のどこがいいの?」と尋ねたら、「え・・・と、顔とか、優しいところとか」と、曖昧なことを言います。この男の子は、その女の子に何か特別なものを感じてはいるのですが、その「何か」を言葉で言うことは出来ません。

そして、それは、大人でも同じことなのです。

何か素晴らしいことを体験し、これはと思う人を仲間にしようと、その素晴らしさを力説したところで、せいぜいが、「君がそこまで言うなら、良いかもしれないね」と言う程度ではないですか?

こんなことを、しっかり認識した方が良い時代です。その理由を次項でお話します。


◆曖昧な概念を論理化・数値化するAI

ところが、AI(人工知能)は、人間にとってはふわっとした「好き」を論理的に理解してしまいます。そんな仕組みなのです。

「好き」だけではありません。あらゆるアナログな感覚やノウハウを、精密にデジタル化します。

「銀座No.1ホステスの社交術」なんてベストセラー本があったように思います。

No.1ホステスのように、勘と経験と卓越した思考力で、どんな対応が相手にとって心地良いか、高度に掴める人がいます。

しかし、そのノウハウは、やっぱり言葉で説明出来ないのです。

それが証拠に、そんな本を読んでも、No.1のサービスは出来ません。

しかし、AIは、それを、論理化出来るのです。

もう何年も前に、ドワンゴ創業者の川上量生氏が「いずれ、人間はAIとだけ付き合うようになる。AIの方がずっと性格が良いですから」と言ったのは、まさに正しいのです。

人間には、ふわっとした雰囲気でしか分からないことを、AIは数値化、理論化出来ます。

そして、その理論を応用出来るとしたら、これは、よく考えると恐ろしいことです。

例えば、AIは、人間を完璧に騙すことも可能なのです。

人間の詐欺師など、足元にも及びません。

騙す相手は重要な個人や大衆、あるいは、全人類などが考えられます。


◆AIに負けない方法

しかし、本来、人間がAIに劣るはずがありません。

AIには分からないような価値でも、人間なら分かるのです。

大脳の160億のシナプスを同時並行的に動かし、さらに、研究者によればシナプスに関係する器官を量子的に働かせるような真似がAIに出来るとは、とても思えません。

けれども、学校では、交換可能なロボットを作る教育がされ、人間の本当に重要な力を殺してしまっています。

人間のロボット的な性能(計算力や記憶力)は、大昔のコンピューターでも人間にはるかに優ります。

よって、ロボット人間ではAIに全く敵いませんので、そんなロボット人間はAIに支配されるようになります。

では、人間が持つ能力を発揮するにはどうすれば良いでしょうか?

それには、まず、偏見のない目で見、人間の優秀な知覚能力をフル回転させて経験することです。

それには、進んで体験する自主性が必要です。


◆真っ新な目で見る

FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグが初めて体験したVR(仮想現実)のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)は、モノクロで解像度も低い、今のものと比べれば貧弱なものでしたが、それでも彼は、偏見のない真っ新な状態でこれを進んで体験し、知覚能力をフル回転させることでVRの可能性に驚愕し、すぐに、VRの最先端を行っていたオキュラス社を買収します。

しかし、いかにザッカーバーグでも、自分で体験しなくては分からなかったのです。

そして、多くの人は、「VRなんて子供のゲーム機のものだろう。少しも重要ではない」と決めつけて体験しようとしません。

ところで、電話やテレビを見たことがない人間など、世界にはいくらでもいます。

そんな人達に、テレビや電話の良さを説明しても無駄です。

自分で使うしか、理解する方法はありません。

そして、そんな人達が「テレビや電話は人間を堕落させる有害で不要なものだ」と言い、積極的に試そうとしなければ、我々は、彼らを愚かだと思うでしょう。

しかし、VRを積極的に体験しようとせずに、「そんな下らないもの」と馬鹿にしている人も全く同じなのです。

見もせず、体験もせずに否定するのは、老人と相場が決まっていたはずが、戦後のロボットを作る教育のせいで、若くても(子供でも)優等生ほど、その傾向が強くなっています。ロボット人間は、教科書とテレビニュースに出ないものは価値がないと思っています(試験に出るのはその範囲までですから)。

そんな人達は、これからはAIの奴隷になるしかありません。

そうならないコツは、優等生ではない若い人達が良いと言うものを、馬鹿にしたくなるのをぐっとこらえて、自分で味わってみることです。

子供に「そんな下らないアニメ見て」と言う母親は、やっぱり時代遅れかもしれません。


以上です。

当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

誰でもAIを使って、「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの問題に挑むことが出来るよう工夫しました。
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2021年12月20日月曜日

AIの教育活用の心構え

 AI(人工知能)の技術は、今後もますます進歩していきます。

それは、MITやスタンフォード等の天才達等が急速に進めてくれるはずです。

しかし、一方で、AIの使い方はどんどん易しくなっていきます。とはいえ、AIの性質を理解していないとAIを全くうまく使えません。


◆AIを使う目的は人間が決める

AIの教育への活用が、ますます盛んになると思われます。

そこで、教育について考えますと、AIを教育現場に導入する際に、必ず考えないといけないのは、「AIを導入する目的」です。

いったい、何をAIにやらせるのかといった明確なビジョンが人間になければ、有益な成果は全く期待出来ません。

AI自体が、目的を作り出してはくれません。

元々、AIとは目的を創造するものではないからです。AIにそんな高度な能力はありません。

AIは、いかに優秀であっても、人間を拡張する道具に過ぎません。

人間が目的をはっきりと決めないのに「AIが何となくうまくやってくれる」ことはありません。

目的を決めるのは人間の責任であると共に特権なのです。


では、教育現場へのAI導入には、どんな目的が考えられるでしょうか?

試験の成績を上げるとか、受験に合格するためでしたら、AIはすぐにでも有効です(既にごく一部では活用されています)。

なぜなら、そういったことのノウハウは教育現場に十分にあるからです。

では、「AIで子供の創造性を育てる」というのはどうでしょう?

それに関する、優れたノウハウが多くあれば、AIはそれをさらに洗練させることが出来ます。

しかし、現在、そんなノウハウが日本に十分にあるとは思えません。日本の教育界が創造性についてなおざりにしていたというのではありませんが、十分に研究、実践、検証されているかは疑問です。

しかし、その必要性に気付いてはいるはずです。

現在は、創造性に関する教育ノウハウは蓄積中と考えて良いと思います。

ところで、創造性の教育に関して進歩した国のノウハウが自由に日本やその他の国に流れ、流れた先で高い受容性を持って新しい試みが為されれば、多くの価値ある成果が生まれます。そして、それが情報提供者にフィードバックされるといったサイクルが出来なければ、特にこの分野の進歩は遅々としたものになり勝ちです。

AIの進歩には、情報は多いほど良く、知識・情報の広い共有は、早く質の高い成果につながるのです。

よって、AI時代に必要なことは、独占ではなく、シェア(共有)とコラボレーション(共同活動)であると言えます。


◆天才教育

さらに、「アインシュタインのような天才を作る」はどうでしょう?

AIがそれを行うことは可能です。

ただし、そのためには、沢山のアインシュタインのような天才がいることと、それぞれの天才の情報が十分あることが必要です。

天才は、多くはないですが、いくらかはいます。それなら、長い時代の中に大勢いたわけです。

天才とは個性的なものですが、実際には、天才に共通する面がかなりあるはずです。

AIが沢山の天才達の情報を学習・分析すれば、人間が行うよりも高い精度で、しかも早く、天才に近付くためのノウハウを解明し、人間に提供出来ます。

しかし、観察可能な天才は少なく、よって、天才達の実像は明確ではなく、むしろ、歪められている可能性があります。

現在は、各国の教育機関、教育者達が、自分達に都合の良い形に、アインシュタインのような天才の姿を脚色しています。

つまり、偏見やエゴが、天才教育ノウハウを得ることを遅らせているのです。

まず、事実を正確に知る努力から始めなければなりません。

現在の状況を考えれば、アインシュタイン的なファクター(因子)を育てることが出来るAIが登場するのは当分先のようです。

しかし、いつかは可能なはずです。


◆AI時代に必要な発想の転換

アインシュタインもエジソンも学校の勉強は苦手でした。

また、二コラ・テスラは自閉症でした。

一方で、ルネ・デカルトは、自分が名門校の中でも優等生であったことを明かしていますが、同時に、自分が全く敵わない優秀な生徒がかなりいたことも認めていました。しかし、そんな秀才達はデカルト以上になりませんでした。

よって、天才の秘密とは、試験の成績とは一致せず、我々の予想を全く超えているかもしれません。

沢山の天才を調査し、そこで得た情報をAIに学習させることが出来れば、天才の明らかなファクターが分かる可能性が高いと思います。

しかし、それは、AIだけで出来ることではなく、洞察力ある人間の協力が必要です。


AI時代こそ、人間に人間特有の能力の発揮が求められます。

2105年を描いたSF『BEATLESS』(長谷敏司著)で、人間より高い知性を持つアンドロイドがこう言います。

「私達は道具です。道具が下らないことをするのは、それを使う人間が下らないからです」

人間は、AIやコンピューターとは違う方向で進歩しつつ、人間とAIは、お互いが協力することで、調和的に進歩し、これまで夢にも思わなかったことを実現するのです。

しかし、上役はあくまで人間であり、責任を取るのは人間の責任であり、特権なのです。


以上です。


当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

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2021年12月11日土曜日

人類の仮想の未来

 テクノロジーの進歩の速さは、時代が進むほど、指数関数的に大きくなります。

それで、昔なら千年かかったのと同じ規模の進歩が、やがて百年、その次は数年、そして、いずれは、数日とか一瞬で達成される可能性があります。

スティーヴン・ホーキングは、未来の人から見れば、世界は亀の背中の上だと主張する19世紀の老人と我々との間に差はないと言いましたが、これは全く誇張ではないと思います。

ただ、進歩のためにはモチベーションが必要ですが、この重要なモチベーションが絶える危機が訪れるかもしれません。


◆外宇宙と内宇宙

現在、大きく注目されているテクノロジーの1つは、宇宙開発です。

イーロン・マスクが率いる宇宙船開発会社スペースX(エックス)は、2030年代の人類の火星移住を目指しています。

ただの噂かもしれませんが、近い将来、地球環境に打撃を与えるような、地球と小惑星の衝突が予測されており、その前に富裕層が火星に移住するため、当初の2050年代の計画が前倒しになったという話もあります。

そして、それは達成可能と考える人が少なくありません。

ところで、宇宙開発のように大きくは注目されませんが、内宇宙のテクノロジーにも注目が集まっています。

この場合の内宇宙とは、人間の脳や精神を意味します。

我々は、内宇宙である人間の脳にもっと関心を持つ必要があるかもしれません。

なぜなら、外側にばかり目を向け、足元を見ないと危険なことがあるからです。

例えば、世界征服を狙う王達が、国内や自分の個人的な問題であっけなく滅んだようにです。

身近な問題はないがしろにされ勝ちです。

それを考えると、宇宙征服に邁進するイーロン・マスクが、ニューラ・リンカ社を作って、脳に関わる最先端テクノロジーを推進しようとしていることに深い意味を感じます。

ニューラ・リンカ社で研究開発を進めているのは、脳内に外部との通信をするナノチップ(10憶分の1m以下の電子デバイス)を埋め込み、脳をエンハンスト(拡張)する技術です。

ただ、アメリカ合衆国憲法の倫理規定により、人間に対するこのような臨床的研究は実施し難いのですが、既に動物実験では成果を上げ、人間に関しては、脳機能障害者(アルツハイマー病等)への福利目的という名目で政府機関の臨床実験許可を得ようとしています。

脳内チップによって実現する可能性があることの1つが、火星ではなく、「仮想世界への移住」です。


◆フルダイブ(完全没入)

現在のHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を使ったVR(仮想現実)のリアリティは非常に高くなってきましたが、これはあくまで、視覚と聴覚だけのものです。

無理すれば嗅覚はなんとかなるとしても、触覚や手足などの運動感覚に関しては今のところ何もありませんので、現実世界とVR世界との区別は誰にも明確です。

リアルな夢は現実と区別がつきませんが、VRがそんなレベルにまで到達するとは思われませんでした。

ところで、VRが現実と区別がつかなくなる世界が、20年も前の映画『マトリックス』(1999)で描かれましたが、あれが現実になると考えられるようになっています。

HMDのように、一部の感覚で仮想世界に入ることに対し、五感全てで仮想世界に入り込むことをフルダイブ(完全没入)という言い方をすることがあります。

『マトリックス』では、脳神経と電子デバイスを有線接続し、脳とコンピューターが信号のやりとりをすることで、精神が仮想世界にフルダイブするわけです(現実的には、この方法では不十分ですが)。

ここで理解しておかないといけないことは、我々が五感で感じていることは、実は全て脳の中で起こっていることに過ぎないということです。

養老孟子氏のロングセラー『唯脳論』(1989)に書かれている通り、人間には、世界が実際にはどんなものかは分からず、ただ、脳が作っている世界を現実と認識するだけなのです。

ある意味、脳もまたVR装置に過ぎないと考えて良いわけです。

そして、脳に人工的に仮想世界を認識させることが出来れば、それが、人間にとっては、まごうかたなき現実になってしまうのです。

脳の研究は現在はかなり発達していて、脳の仕組みの多くが解明されていると思われていますが、神経科学者ジェームス・ファロンのTED講演などを聞くと分かるのは、実際は、まだまだ脳には、分からないことの方がはるかに多いということです。

また、脳には異物を拒絶する強力なセキュリティ機能があるため、脳を直接観察するためのナノマシンの侵入も脳は受け入れないので、脳機能を解明するための観察さえ難しいのですが、それも、いろいろな手を打ち、進歩しています(例えば、ナノマシンを脳内物質に擬態させる等)。

よって、いずれ、脳の五感に関する領域をコントロールする技術が実現するかもしれず、そうなると、『マトリックス』の世界は実現します。

イーロン・マスクのニューラ・リンク社は、こういったことの実現も視野に入れていると思われます。


◆仮想世界ではどんな夢も叶う

現在でも、地球を細部に到るまでデジタルコピーし、本物そっくりの仮想デジタル世界である「デジタルツイン」を作ろうという計画があります。

それが出来れば、少なくとも、視覚、聴覚の範囲では、本物と寸分変わらない仮想世界(コピーされた地球)で暮らせる訳です。

ところが、上で述べたように、脳の五感認識機能全てを制御出来る『マトリックス』のような世界が実現してしまえば、複製された(本物と寸分変わらない)地球だけでなく、デジタルで人工的に理想的な世界を作り、その中で、現実と全く差のないリアリティを感じながら生活出来るのです。

そうなれば、仮想世界の中では、誰でも、スポーツのスーパースターや世界的人気ポップ歌手や、あるいは、王様や大富豪にだってなれます。

好きな人とだけ接触すれば良く、好きな人がいなければ、AIが作ったバーチャル(仮想的)な人間と付き合えば良いのです。

数年前、当時ドワンゴ会長だった川上量生氏が、「いずれ人間はAIとだけ付き合うようになる。AIの方が性格が良いですから」と発言されていましたが、その予言が実現するわけです。


◆進歩のためのモチベーションの危機

テクノロジーの進歩により、人間の実際の生活や仕事はどうなるでしょうか?

確かに、仮想世界で生活していても、肉体の維持のために栄養が必要ですが、仮想世界で味覚を満足させれば、現実の肉体は点滴で栄養摂取すれば良いのかもしれません。

食料品の生産は、栄養だけの問題であれば、AIが制御する機械で自動的に行えるようになり、その流通も自動になれば、人間が働く必要はありません。

いずれは、エネルギーや生活環境の維持もAIが行えるようになると考えられます。

そうなった場合、人類は、さらに進歩しようというモチベーションを維持出来るかが疑問になります。

全てに満足出来る仮想世界があれば、現実世界にあまり(あるいは全く)価値がなくなるわけです。

そうなれば、全ての人が、必要以上の富や権力を持つ意欲を持たなくなるかもしれません。

もちろん、人間には複雑で神秘的な面があり、仮想世界で実現出来ることだけでは本当の満足を得られないことに後で気付くかもしれません。

しかし、もし、仮想の世界で満足出来てしまえば、人類は衰退するという危惧があります。

例えば、こんなことが考えられます。

イスラム教では、アラーの戒律を守って立派に生きた男は、死後、72人の理想的な女性を妻にすることが出来ると言われ、これはこれで、戒律を守るモチベーションになっていました。

ところが、仮想世界では、宗教が約束する死後の報酬も即座に実現することが出来るようになります。

そうなれば、宗教的な戒律を守って立派に生きるモチベーションがなくなる恐れがあります。

新渡戸稲造が『武士道』を書いたきっかけは、西洋では宗教が道徳の基になっていたからでしたが、それならば、西洋では宗教が必要なくなれば道徳を支えるものがなくなりかねません。

テクノロジーの時代こそ、心の時代であり、我々は、もうとっくにそれに備える必要があり、むしろ、あまりに遅れているのかもしれません。

外側ばかりを見て、足元を見失った代償が非常に大きなものであることを思い出す必要があると思います。

以上です。

当ブログオーナー、KayのAI書籍です。

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